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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
1章:ロズヴァレ村

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15:枯れ茨の谷の源泉

 五行思想。

 万物は火・金・木・土・水の五つの力から出来ているという考えであり、これに陰陽を組み合わせたのが『Full Faith ONLine』での基本的な属性の考え方となる。

 つまり、非常に雑な話にしてしまえば、火は金に強く、金は木に強く、木は土に強く、土は水に強く、水は火に強く、陰陽はお互いに痛打を与える事が出来ると言う事だ。

 で、本当なら此処にこれら全てに強いと同時に、お互いに打ち消し合う“混沌”と“虚無”。

 それから噂では、陰陽五行に弱いと共に、混沌と虚無に強い“変幻”と言う属性があるらしいが……まあ、今は関係ないか。

 今重要なのは、『Full Faith ONLine』では土属性一辺倒だった魔蟲王マラシアカが、現実化した『フィーデイ』ではこの距離でも分かるレベルで金属性を有している、この点だろう。


「土気は金気を生み出す。だったっけ」

 魔蟲王マラシアカが金属性を有している事自体はそこまで問題ではない。

 ゲームの時でも木属性で染め上げたプレイヤーへのカウンターとして多少の金属性攻撃は持っていたし、五行思想に基づけば土は金を生み出すものである。


「でも、そう言うレベルじゃあないわよねぇ……これ」

 私は滝の脇にある枯れた茨の螺旋階段から、カミキリ城を見る。

 うん、一度しっかりと認識してしまうと、城を覆う瘴気に大量の金属性が混じっているのが分かる。

 それこそ本来の属性である土属性よりも多いほどに。

 と言うより、魔蟲王マラシアカの有する金属性の力が高まった結果として、瘴気が発生したのかもしれない。

 だいたいの瘴気は金属性に分類されたはずだし。


「悪と叛乱の神ヤルダバオトの加護……か」

 何故こんな事になっているのか。

 原因については間違いなくヤルダバオトだろう。

 けれど、わざわざ金属性を高めた理由は……分からない。

 ロズヴァレ村が近くにあるから、木属性であるスィルローゼ様対策とかだろうか。

 うん、他に思いつく理由がない。


「戦う時はしっかりと考えて戦わないといけないわね」

 幸いにしてマラシアカが金属性を得たという情報を事前に得る事は出来た。

 そうと分かっていれば、打てる手もある。

 そして、マラシアカと戦うにあたっては、私はもっと根本的な部分にある問題を解決することを優先しなければいけない。

 だから私は螺旋階段を上り切り、崖の上に上がる。


「うーん、相変わらずね」

 そこにあったのは大量の水が湧き続ける泉。

 そして、泉の周囲どころか上部と内部の一部まで覆う大量の茨。

 此処が枯れ茨の谷の源泉である。


「『スィルローゼ・プラト・ミ・レジスト=エリダメ・アハト』」

 当然ながらこのままでは水の採取など出来はしない。

 だから私は自分にエリアによるダメージを軽減するための魔法をかける。

 ちなみに、先の五行思想に基づいて話をするなら、この魔法は木属性に属していて、茨や植物の毒、それから土に由来するダメージに対して強い効果を発揮する。

 だが、カミキリ城を覆う瘴気のような金属性に対しては大して効果を上げない。

 そして、火山の熱のようなものによるダメージだと……魔法の等級と熱源の温度次第ではむしろダメージが増えることもある。

 流石にアハトにもなってしまえば、そんなことは滅多に無いが、アインスを習得したての頃は、この仕様のおかげでひどい目にあったものである。


「と、思い出に浸ってる場合じゃないわね。『サクルメンテ・ミアズマ・ミ・ラングズム・フュンフ』」

 私は目的を思い出すと茨を掻き分けて泉の中に入っていく。

 そしてある程度進んだところで、水中に居られる時間を延長する魔法をかけた上で潜水。

 泉の底にある水が湧き出している場所へと潜っていく。


「ぷはっ」

 私は泉の底で空き瓶を開いて水を採取し、しっかりと栓を閉じた上で浮上。

 湖面から顔を出す。


「よし、無事に回収ね」

 私は水の入った瓶をアイテム欄に入れる。

 表示された名前は枯れ茨の谷の源泉水。

 無事に目標達成である。


「さて、これで残りは千年封印薔薇と悪神の種の互換品ね」

 そのまま私は岸から上がり、来た道を引き換えしていく。

 そして、途中で道を変えて、谷底ではなくカミキリ城へ向かう道を進み始める。


「……」

 カミキリ城からは相変わらず瘴気が立ち上っている。

 周囲を巡回するカミキリ兵たちにも変化は見られない。

 ただ、水の回収前に谷の入り口側から見た時に比べると、若干手薄な感じがした。

 どうやらカミキリ城のモンスターたちはロズヴァレ村の方がより警戒するべきだと思っているらしい。


「さて……幾つまで重ねられるかしらね?『スィルローゼ・ウド・ミ・ブスタ・ツェーン』『スィルローゼ・サン・ミ・リジェ・ツェーン』『スィルローゼ・ウド・エクイプ・エンチャ・ツェーン』……」

 私は自分の手持ちの魔法の中から自己強化に属する魔法を次々にかけていく。

 そして、一通りかけ終わったところで、サクルメンテ様の魔法によって、それらの魔法の効果時間を延長。

 これからやることが終わるまでかけ直さなくてもいいようにする。


「ふふふ、ソロなのにバフ10種類以上かけた上で攻撃用の魔法も普通に持てるとか、ゲーム時代だったら絶対に出来なかったわね。では、最後にMPポーションを飲みまして……」

 最後にMPポーションを飲んで、消費したMPを回復。

 全ての魔法を問題なく使えるようにする。


「突撃開始よ。『スィルローゼ・ウド・フロトエリア・ソンウェイブ・ズィーベン』プラス『スィルローゼ・ウド・フロトエリア・ベノム=ソンウェイブ・ゼクス』」

 そして私は2種類の茨が入り混じった津波を引き起こしつつ、カミキリ城に向かって駆け出した。

04/12誤字訂正

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