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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
2章:フルムス

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116:フルムス攻略作戦第三-6

「茨と封印の神スィルローゼ様。この度の儀式を貴方様が代行者であるエオナが謹んで務めさせていただきます」

「「「!?」」」

 私が詠唱を始めた瞬間。

 世界が震えた。

 二度、三度と、気のせいや勘違いでない事を理解させるように世界が震えた。

 この場に満ち始めている膨大な量の神気に圧されて。

 しかし、それだけの神気が生じるのも当然だろう。


「来たれ来たれ。八百万の神々をまとめます七大の神。天をお頼みしますは陽と生命の神サンライ様。地をお頼みしますは陰と黄泉の神ルナリド様」

「何だこれ……」

「マジかよ……」

 球状に展開された茨の領域の上部に陽の力を示すような紫色の薔薇が咲くと共に、女性のシルエットが生じる。

 同時に地面と接する境界付近に陰の力を示す蘇芳色の薔薇が咲くと共に、私の前に少年のシルエットが出現する。

 シルエットの正体は言うまでもない、サンライ様とルナリド様のお二人御自身だ。

 だが、このお二人だけではない。


「東をお頼みしますは木と豊穣の神ファウド様」

 東側に生命力に溢れた青い薔薇が咲き乱れ、優し気な女性のシルエットが現れる。


「西をお頼みしますは金と文明の神シビメタ様」

 西側に金属質な白い薔薇が咲き乱れ、全体的に鋭角的なフォルムをした男性のシルエットが現れる。


「南をお頼みしますは火と破壊の神バンデス様」

 南側に燃え盛る炎のような赤い薔薇が咲き乱れ、筋骨隆々とした男性のシルエットが現れる。


「北をお頼みしますは水と調和の神ウォーハ様」

 北側に瑞々しい花弁を持つ黒い薔薇が咲き乱れ、どちらかと言えば細身の女性のシルエットが現れる。


「中央をお頼みしますは土と守護の神ソイクト様」

「七大神が……」

「嘘だろ……」

 中央に黄金のような輝きを伴う黄色の薔薇が咲き乱れ、ルナリド様と並ぶように、私の前に鎧を着こんだ長身の人物のシルエットが現れる。

 これで七大神と呼ばれる『フィーデイ』で特に信者が多い神様が七柱揃った。

 そんな有り得ない光景に元ヤルダバオト神官たちだけでなく、ルナたちも唖然としているが……これで終わりではない。


「それぞれの権能を以て、場を整え下さいませ。八百万の神々の御皆様方」

「「「!?」」」

 何十と言うシルエットが茨の領域の外側に生じる。

 その中には蟹の形をしたものや、猫の姿をしたもの、ケンタウロスにしか見えないものも、存在しているが、その何れもが代行者である私よりもはるかに強い力を放っている。


「……!?」

「それだけ、貴方がしでかしたことが重大事と言う事よ。ファシナティオ」

 私は本能的な恐怖から全身を震わせているファシナティオに応えつつ、呼吸を整える。

 そう、まだ神様たちを呼ぶことは終わっていない。

 と言うより、最も重要な御三方を呼んでいない。


「整えられた場をどうかご維持下さいませ。円と維持の神サクルメンテ様」

 私の右後ろに幾つもの円が複雑に絡み合った姿を持つサクルメンテ様のシルエットが生じる。


「満たされし力をどうかお高め下さいませ。鏡と迷宮の神ミラビリス様」

 私の左後ろに巨大な姿見とその中に映り込む女性のシルエットが生じる。


「お待たせいたしました。貴方様が御身の影をこの地に御降ろし下さいませ。茨と封印の神スィルローゼ様」

 そして私の真後ろに茨に包まれた少女……スィルローゼ様のシルエットが様々な色の花弁が舞い散るエフェクトの中、静かに生じる。

 ああ、やはりスィルローゼ様は別格だ。

 シルエットだけでも、その愛らしさ、美しさ、気高さ、聡明さ、あらゆる素晴らしい点が伝わってくる。


『さて、この場に集った神々の代表として、僕……陰と黄泉の神ルナリドが語らせてもらおう』

 ルナリド様のシルエットが口を開き、その声がフルムス中に響き渡る。


『悪と叛乱の神ヤルダバオトにすら見捨てられし少女ファシナティオよ。僕たちはゲームの頃から君に対して幾度も警告をしていた。これ以上、身勝手な振る舞いをするのであれば、アカウントの消去も有り得るとね』

「か、勝手なことを……ムグッ!?」

 と、何時の間にやら拘束が緩んでしまっていたらしい。

 騒がれても面倒なので、ファシナティオの口を改めて抑えておくとしよう。


『しかし、その前に今回の件が起こり……『フィーデイ』で君は此処が現実であると理解していたにも関わらず、人としてどころか、悪党ですら許されないような振る舞いをした。これは、それこそ死と言う方法で贖罪を行ってもなお贖い切れないような重さの罪だ。故に僕らは君に対して封印による世界からの永久退場と言う罰を課すことにした』

 ルナリド様の顔が僅かにこちらを向き、私が此処からどうするのかを伝えてくる。

 なので私はそれに従って、槍を剣に持ち替えた上で怯えるファシナティオに近づいていく。


「ふんっ!」

「ーーーーー!?」

『そして、万が一を許す気はない。君のような人間には僅かな可能性も与える気はない。僕たちは自分を信じる者たちをあそこまで害されて、生ぬるい報復をするような優しさは無い。だから……僕らがそれぞれに強固な封印を施す』

 そして、ファシナティオの体に付いていた残りの四肢を切り飛ばし、首を刎ね、両目と舌を抉り出す。

 勿論、どれも切り離されてもなお生きたままであり、動かす事は出来ないが、感覚は残ったままになっている。

 そんな状態で両目をサンライ様が、舌をルナリド様が、右腕をファウド様が、左腕をシビメタ様が、両足をバンデス様が、胴をソイクト様が、それぞれに苦痛を与え続ける形で封印を施す。


「ウォーハ様、暫しお待ちを。ファシナティオ、折角だから私からも一つ個人的な仕返しをさせてもらうわ」

「!?」

 で、私はウォーハ様がファシナティオの頭を封印する前に、ファシナティオの顔を掴む。


「碌に知りもしないくせに、よくもスィルローゼ様を馬鹿にしてくれたわね。そして、シュピーたちを傷つけてもくれたわね。これはそのお礼よ。『スィルローゼ・ファイア・フロト・イグニ・ツヴァイ』!」

「ーーーーー!?」

 そこから、込められるだけの憎悪の念を込めた上で魔法を発動。

 ファシナティオ御自慢らしい顔を死なない程度に焼き、重度の火傷を負わせる。


「では、ウォーハ様。お願いいたします」

 それからウォーハ様の封印が行われ、ファシナティオの顔が醜く焼けただれた状態のままで固定化される。

 これで万が一封印が解けたとしても、もう人前には出られないだろう。


『さてそれではエオナ。最後の詰めをよろしく頼む』

「分かりました。ルナリド様。では、スィルローゼ様」

『……』

 さて、仕上げである。

 私はスィルローゼ様が頷いたことを確かめてから、詠唱を始める。


「悪と叛乱の神ヤルダバオトにすら見捨てられし大罪者、ファシナティオ。彼のものを金剛の茨を以って深き深き深淵に広がる混沌の薔薇園へと導く力を。無間に極彩色の薔薇が包み込み、咎人を苛み、罪を贖わせる牢獄へと繋ぎ止める力を。彼のものに終わりなき苦痛と絶望を与えると共に、終わりなき夜を始める刃が慈悲と共に振り下ろされる時まで続く封印を齎す力を我に与え下さいませ」

 周囲に大量の青い光が生じ、青い光は茨へと変化して、ファシナティオの体のパーツを包み込むと、封印を行った神様の属性に応じた薔薇の花を咲かせる。


「『スィルローゼ・ロズ・コセプト・スィル=スィル=スィル・アウサ=スタンダド』」

 そして私の詠唱完了と同時に周囲一帯に虹色の光が溢れかえり、全ての人間の視界が光で塗りつぶされる中、ファシナティオを封印している茨の球体が私の胸へと吸い込まれていく。

 吸い込まれて、私ですら容易にはアクセスできない領域へと落ちていく。


「封印完了よ」

 そうして光が止む頃には、この世界からファシナティオは消え去り、封印を行った私自身ですら、私の中の何処に居るのかは分からなくなった。

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― 新着の感想 ―
さすがにそんな甘いことはしないか 良かった
[一言] やったね!ここまでバラバラにされて封印されるなんて神話でも数えるほどだよファシちゃん!(唾棄) 惜しむらくは名前は封印しなかったことだけど、まぁ真似ちゃいけない前例は明確化しないとね!
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