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不器用な僕の彼女達の助け方  作者: アツシルック
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火野 京子と特殊能力対策課

ショッピングモールで起こった事件の次の日。


加害者である久須くす 竜也たつや容疑者は、殺人未遂及び傷害罪などの罪で現場に駆けつけた警察官に現行犯逮捕され、その時の防犯カメラや野次馬による写真撮影による画像、動画が確実な証拠品となり有罪が確実とされている。


また過去の犯罪なども掘り起こされ、当分は塀の中で暮らすことになるだろう。


被害者である黒戸 白は数十箇所刺され緊急搬送され、一時は意識不明の重体だったが、その後意識を取り戻し、一命を取り留めた。


警視庁地下10階の一室で、無精髭を生やしたボサボサ頭の三十代くらいの男は、お腹をさすりながら、ある一枚のレポート用紙に目を通していた。


「黒戸……黒戸……まさかな、まぁそれにしても昨日は被害者の面会に病院行ったら酷い目にったぜまったく、こんな所でまた奴に会うとはよ……まったく面白いね、おい火野、この報告書をお前も読んどけよ」

無精髭の男は後ろのテーブルでスマホをいじりながら、棒の付いた飴玉を舐めている、赤いセミロングシャギーヘアーの手足に白い包帯を巻いた女性に話しかけた。

「はぁ!? うちには関係のないただの傷害事件じゃないんですか? そうやっていちいち話しかけて上司ぶるのやめて下さいウザいです山田さん」

火野は面倒くさそうに答える。

「お、お前な上司ぶるって……こう見えて俺一応はお前の上司であって先輩だからな」

無精髭の山田は怒るでもなく楽しげに、火野のタメ口を軽く注意した。

「わぁ〜でたでた、こんな部署に飛ばされて、私しか部下のいない公安特殊能力対策課に左遷され、年上ってだけで室長になったくらいで偉そうにしてる中年が、パワハラで訴えますよ」

火野は怪訝けげんそうに汚物を見る目で山田に言った。

「まぁそんな話は置いといてよ、俺らと関係ないってのはどうかと思うぞ、ほれ見てみろ」

山田は報告書と一緒に渡されていた事件当時の動画映像の詰まったデータ端末を火野に渡した。


「いやいや、話終わってないですから、パワハラで訴えますから、なに都合悪くなるとスルーするんですか?まずは私の件を済ませてからこの件でしょ」

火野は報告書とデータ端末を渡されながらブツブツ呟き、データ端末を自分のパソコンに挿して読み込む間に報告書に目を通した。

「細かいことばっか言ってっと、結婚相手が見つからなくなるぞ」

山田は余計なことをいちいち口走った。

「はいセクハラ確定、いま仕事してるんでお静かにしててもらえませんかね」

火野は山田を一瞬睨みつけてすぐに報告書を読み返した。

「お前本当に自分勝手な奴だな。でっ、どうよ興味深くないか?」

山田は楽しそうに聞いてみた。

「見て分かりませんかね?まだ読んでる最中で、データ読み込んでる所なんですよ、暇ならお茶の一つでも出すくらいの気の使い方できませんかね? 上司として」

火野は山田の顔すら見ずに答える。

「おいおいお前言ってることとやってる事おかしくね?上司を当たり前のように顎で使ってんじゃねーか、これは問題ないのかよ」

ブツブツ言いつつも山田は給湯室に行き二人分のお茶を入れに向かった。


しばらくして、報告書を読み終わり、データ端末に入れられていた映像を何度も見ていた頃、山田が給湯室から戻ってきた。

「どうだ感想は?」

「なんですかこの少年は……こんな事を言っては不謹慎ですが、この少年は死んでいてもおかしくないですよ」

山田の質問に火野は素直な感想を述べる。


「だよな! 報告書だけなら『奇跡かな』くらいだったが、この映像みて、俺の勘だが特殊能力持ちだと思うんだがどうよ?」

「間違いないんじゃないかと思いますが、特殊能力持ちと言うよりは特殊体質の方が濃厚かと……あの映像では彼がなんかしらの能力を使ったとは思えませんでしたし、ただただ一方的にやられていたとしか」

山田の言葉に同意しながらも火野は疑問を投げかけた。


「そう!そこなんだよ、能力持ちならあんな状況なら能力を使っちまうだろ?だが使ってる気配はないが、結果は死んでもおかしくない状況なのに生きていた」

「回復系? 防御系? 回避系? のなんらかの能力か体質って事になりますかね」


「どうだろうな、回復系にしては病院送られてるしな、防御系にしてはボロボロにやられてるし、回避系に至っては回避してねーし、よく分からん」

山田は新しいタバコに火をつけながら楽しそうに答えた。


「だったらどうするんですか?うちの管轄の仕事かもしれないんでしょ?」

火野が山田に詰め寄る。


「そうなんだよ、そこでまずはこの件を調査してから判断したいと思うんだがどうだろうか?火野ひの 京子きょうこ刑事」

山田は詰め寄ってきた火野に対し、悪巧みをするかなような笑顔で火野に問いかけた。


「そうですね、まずは調査して、本当に能力持ちなのかの判断をつけなければなりませんね」

火野は山田にキッパリ言い切った。


「おぉそうか、そうだよな、そうこなくっちゃ。じゃ東桜台高校の潜入調査頼むわ」

「はい!……んっ? えっ私!?……はぁ潜入調査!? わかり……って、えっ!? え〜〜〜〜〜〜!! 何言ってんの?バカなの?死ぬの?」

ニタニタ笑っている山田に、火野は『何を言ってんだコイツ』とばかりに少しパニックった様子で詰め寄った。


「潜入調査ってなんですか、高校生になって通えと? 私今年24歳になるんですよ! 無理があるでしょ」

火野は混乱しながらも、山田にまくし立てるように言い放った。

「えっ!? いや普通に教師として潜入してもらおうかと思っていたんだが、まぁ女子高生の火野ってのも面白いな」

山田は思いもよらない火野の提案に、楽しそうにうなずきながら答えた。

「えっ!? あっ! 教師……ですよね」

火野は顔を真っ赤にして、しまったって顔で答えた。


「では、火野の女子高生潜入調査作戦で話を進めていく事で決定だ、クックックッ」

山田は楽しげに席を立ちながら答え、これで『決定」と言わんばかり手を叩いて出口に向かって歩みを進めた。


「ちょ、ちょっと待て〜〜〜〜〜〜! 教師でいいから、24歳で高校生は無理があるだろう……」

火野は席を立ち出口に向かおうとしてる山田に対して手を伸ばしながら反対しようとしたが。


「じゃ俺は各関係者、関係機関に今回の作戦の詳細な打ち合わせと、手回ししてくるから、お前は自分の出来る準備だけでもしとけよ」

山田は火野を無視するように一方的に話を進め、後ろ姿のまま火野に対して手を振り、出口のエレベーターに乗り込んだ。

「や、や、山田やまだ 太郎たろう待ってーーーーーー!!」

すでにいなくなった山田のフルネームを叫びはしたものの、その声は特殊能力課に一人取り残された部屋ではただただむなしくひびき渡るだけだった。



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