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不器用な僕の彼女達の助け方  作者: アツシルック
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黒戸 白と沢村 礼子の始まり

誰だって物語の主人公に憧れた時が一度はあるだろう、カッコよく悪い奴を倒したり、困ってる人を颯爽さっそうと助けたり。


僕、黒戸 白もそんな事を考える一人の少年なのだ。


でも現実はそうはいかない、悪い奴を倒すにも強い力が必要だし、困ってる人を助けるのだって、勇気、コミニケーション能力、行動力、判断力など色々な要素が無くては成り立たない。


小学生からぼっちの僕にこれらの要素が有るとは到底思えないし、そんな面倒事からは今まで避けて生きてきた方なのだ。


そんな僕に、仲違なかたがいしていたはずの幼なじみの美希から、友達を助けてほしいと頼まれた。

都合のいい話だと思う人もいるかもしれない、こんな時だけ頼ってきて。

正直僕が動いたところで何が出来るでもないし、その辺の男子より頼りないだろう。

それでも仲違いしていたとはいえ、幼なじみが、美希が頼ってくれたのだ、それだけで嬉しかったし、期待に応えては上げたかった。


そう、ただなにかをしてあげたかった。


僕が行った所でそんな不良に勝てはしないだろ、だが美希からの要望は沢村さんを助けて欲しいと言う頼み事であって、その危ない不良を倒して欲しいではないのだ、そう沢村さんが助かればいいのだ……



頭の中でそんな思考が巡っていると、周りで大勢の人が叫んだり、何かしらのサイレンの音が聞こえる。

(僕は何をしていたんだっけ……沢村さんを探していて……)


身体を動かそうとしても何故か言う事を聞かない。


「くろと!」

遠くから僕の名前を呼ぶ女性の声がかすかに聞こえる。

声を出そうにも、とても息苦しく。


「おい君大丈夫か!」

今度は男性の声で話しかけられた。


「君は被害者の知り合いかい?後で詳しい話を聞きたいので一緒に同乗してもらえますか?」

「彼は……黒戸は大丈夫なんですか!?」

「今はとても危険な状態だから、急いで病院に搬送するから、とりあえず乗ってください」

なんの話をしているのか、僕の傍で男性と女性が会話をしている。

女性の方はかなり動揺した感じで話している。

僕は何か台車のような物に寝かされて運ばれている、彼女も付いてきているようだ。

その台車のような物に乗せられて、その乗ったものが動き出した。

なにがなんだか分からないがなんか疲れた、考えてもしょうがないか。


一緒に同乗した女性がしばらくしてなにか呟きだした。

「ごめんなさい……私のせいで……」

さっきの女性の声がする。

僕は重いまぶたを少し開け、女性の声がする方を見る。

綺麗なショートカットの金髪に、細い目をした女性が僕の横で、僕の手を握って悲しそうに泣いている。

「さ……さわ……さわむらさん……?」

僕はおぼつかない滑舌で彼女の名前を呼んだ。

その声が聞こえたのか、彼女はビックリした顔で僕の目を見て。

「黒戸……!? 黒戸……」

綺麗な顔をくしゃくしゃにして僕の胸に顔をうずめてくる。

しばらく時間をおき、冷静に頭の中を整理して、今の状況を考えてみた。

(あ〜そうか、沢村さんを助けに行って、変な男になにか鋭利えいりな物で刺されていたんだっけ)

冷静になりすぎたか、なにか他人事のように自分の事を考えてしまった。

「さ、沢村さん、大丈夫? 怪我してない? ご、ごめんね何もしてあげられなくて……」


そう言いかけた時、沢村さんは顔を上げ、くしゃくしゃだった顔を強張らせて、涙目で僕に辛そうに声を発した。

「バカ! な、なんで……なんでアンタが謝るの? 私の為に怪我したのに……」

「……ごめん」

僕は困った顔で愛想笑いしながら謝るほかなかった。

普通に話しているが、声を出すたび身体中に激痛が走る、でももしそれを顔に出せば沢村さんはもっと責任を感じてしまうだろう。

「僕は……僕は大丈夫だから……」

そう話しかけた時、急に目の前が真っ白になり、意識が遠くなっていった。


ーー

ーー

ーー


意識がなくなって数時間後、かすかに目を開け見える周りは、色々な機器があり、身体中になんか色々なチューブ見たいのが取り付けられて、とても消毒液臭い部屋に僕は横たわっていた。

寝ていたのか?

少し離れた場所で男性と沢村さんがなにか話している。


「黒戸は、黒戸は大丈夫なんでしょうか?」

「う〜ん……なんとも言えないな、相当ナイフで何度も刺されて、出血も酷い。今は息をしていることが奇跡だよ」

「そ、そんな……」

女性は男性が言ったことにショックを受けたのか、顔を手でおおい床にふさぎこみ。

「私の……私のせいだ……」

彼女はとても悲し声で、泣きじゃくりながら何度も誰に向かって言うでもなく「ごめんなさい」っとつぶやいている。


それを見て僕の方がなんだか申し訳なく思い。身体中に付いた機器や、チューブを取り外して、まだヨタヨタで覚束おぼつかない足取りで、彼女の方に歩み寄り、顔伏せている彼女の肩に優しく手を乗せ。

「大丈夫だよ沢村さん、僕は……僕は元気だから、そんな責任感じないで」

まだ身体中は痛いが、精一杯の不慣れな笑顔で彼女に声をかけた。

「く……黒戸?生きてるの?大丈夫なの?……ご、ごめんなさい」

沢村さんは僕の顔を見ると僕の胸の辺りに顔を埋め、何度も謝りながら、ずーと我慢していた涙を流し。

「ありがとう……黒戸」


「えっ?なんだって沢村さん。そんな強く掴まられると傷口が痛いよ」

「ううん、なんでもない……黒戸のクセにバカって言ったの」

彼女は泣きながら笑顔でそう揶揄からかうような、照れ隠しのような表情で、なにか今まで抱えていた悩みが取れたような素敵な笑顔で僕の口にキスをした。

「えっ!?……あ、えっ」

僕はその行動に思考回路が追いつかず、その場に呆然ぼうぜんと立ち尽くし。

「おまじない!早く治りますよーにって、初めてやるから効果あるか分からないけどね」

彼女はほほを赤くしながら、なんか嬉しそうに言った。

「……ごめ……じゃなくて、ありがとうって言ったらいいのかなこういう時は?」

僕は自分で何を言ってるのか分からないまま立ち尽くしてると。

「こちらこそありがとう」

彼女は嬉しそうに部屋のドアの取っ手に手をつけ。

「私先生呼んでくるね」

と言うと。

ちょうどドアが開いて、先生が現れ。

「!?、気がついたのかね?おいおいまだ立ち上がっちゃダメだ、しばらく安静にしてなきゃ危ない」

先生が僕の方に駆け寄り、僕をベットに寝かせ、外してしまった機器やチューブを付け直していた。

沢村さんはドアのところで僕に手を振り。

「また明日学校終わったらお見舞いにくるから、今日は帰るね」

僕は先生の死角から手を振り返した。


「ありがとう」か……こんな僕でもヒーローのように救えたのかな……








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