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不器用な僕の彼女達の助け方  作者: アツシルック
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沢村 礼子の過去の過ちと苦しみ

私は沢村 礼子、東桜台高校に通う一年生だ。

髪はショートカットの金髪に染めて、目も細い一重、だから普通の男子や女子は私を怖がって、あまり話かけて来ないし、遠巻きにこちらをチラチラと見ては目が合うとそっぽを向く。


「情けね〜奴らだ」

ボソッと私は口に出した。


「何か言った礼子?」

姫野ひめの さきは紙パックの野菜ジュースを飲みながら問いかけた


「いや、なんでもないよ……高一にもなったんだし、彼氏ぐらい欲しいな〜ってな」

私は誤魔化すように、適当な返答をした。


「あっ!私も欲しい」

ポニーテールの目の大きな白間しろま 美希みきが意外にもその話題に食いついた。


「咲も礼子も美人だからいいよね〜、私なんか平凡な童顔だから、二人みたいに美人に生まれたかった」


「何言ってんのよ、美希も可愛いじゃない、私も礼子も誰も私達のことをフラットに話しかけてくれる人いないよ」


「く〜〜、美人の所を否定しない辺り、ムカつく〜」

咲の言葉を笑いながらも、頬を膨らませて美希は怒った素振りを見せている。


「美人から可愛いとか言われても同情にしか聞こえないし、女子の評価なんてあてにならないよ」

そっぽを向く仕草で美希は文句を言っていた。

私は笑いながら。


「何それ、それを言うなら美希も私らのこと美人ていってんだから、当てにならないじゃん」


「私はいいの、特別なの!」

えへんって感じで美希は、腰に手を当ててハニカミながら言った。


「なにそれ適当〜アッハッハッ」

そんな感じで美希や咲とくだらないやり取りをしてる時が私、沢村礼子にとって嫌な過去を忘れられる唯一の時間であり、初めて誰かといて楽しいと思えるそんな大切な日々なのである。


その日の放課後、いつもの様に私、咲、美希の三人で寄り道して帰ろうって事になった。

この街は東西南北にそれぞれ高校が分かれていて、丁度そんな街の中央に巨大ショッピングモールが点在している。私たちのいる東桜台高校からは西側に三十分歩いた距離にある。

このショッピングモールには桜台駅も隣接してるため、けっこう平日でも人で賑わっている、街の人気スポットなのだ。


「ねぇ、ねぇ、最近新しくスイーツ店が出来たらしいよ、行こうよ?」

美希が先頭を歩きながら振り向いて言った。


「まぁ安いなら行ってもいいけどさ」

私はぶっきらぼうに答えた。


「なら、一つ頼んでみんなで分けよう!」

美希はみんなで放課後一緒に過ごせるならなんでも良いって感じで、とても楽しそうに答えた。


「私はそれでいいよ」


「私も」

咲とわたしは、美希の提案に同意した。


ショッピングモールに着くと、咲がお手洗い行くと言うので、私と美希はしばらく待つ事にした。


「ねぇ、礼子はどんな男子が好きなの?」


「えっ!?、あぁ〜そうだね特にタイプはないかな」

美希の質問に私は素っ気なく答えた。勘違いして欲しくないが美希の質問にいい加減に答えた分けでわない、本当に私の中で男性などどうでもいいのだ。


何故なら、私は男が嫌いだ、子供の頃に父の母に対する暴力を見てきたし、そして私もそんな父から暴力を振るわれて、中学生時代はとても生活が荒れていき、その時住んでた街のヤンキーグループと次第しだいにつるむ様になり、なんとなくそのグループのリーダー格の男と話したり、相談したりして、二人きりでいる事が多かった。


その男が好きだったのかと聞かれたら、好意も無かったし、憧れがあったわけでもない・・・・・・そう、ただ単に利便性の問題だったのだろう、父の母に対する暴力から目を背けたい自分、父の暴力から逃げたい自分、そして自分を守ってくれるだろう人や場所を求めた結果が、この男の側に居る事だけだったのである。


しかしまたその男も次第しだいに暴力を振るう様になり、所詮は父もその男も同じなのである、今思えば分かりきっていた事なのだろうが、当時の私はわらにもすがる思いだったのだ、それぐらい私の精神は参っていた。そんなある日、中学三年を機に両親が離婚し、私は母親に引き取られる事で、そんな父から、ヤンキーグループからも離れる事ができた。母方の性に名字を変え、母の故郷のこの桜台町に引っ越しする事で新たな人生をスタートする事ができたのだ。


だから私は男などに期待もしないし、好意など持てるはずがないのだ……




「……どうしたの礼子?なんか辛そうな顔して」

美希か心配そうな顔して私を覗き見て尋ねる。


「……うん?、うぅん、あぁなんでもない、大丈夫、大丈夫、あっはっはっはっ……」

慌てて私は平常を作ろうとした時、ちょうど咲がお手洗いから戻ってきた。


「ごめん!、なんか学校に忘れ物したみたいで、私学校に取りに戻るね」

なんだか慌ただしく咲は私達に言った。


「えぇ!明日も学校なんだし明日でいいじゃん」

美希は駄々をこねる様に言った。


「本当ごめん!どうしても急いで取りに戻らないと駄目な物なの、ごめんね美希、礼子」

咲が手を合わせて何度も頭を下げる様に申し訳なさそうに言う。


「私は良いよ、気にしないで行きなよ咲」

私は咲に軽く手を振り「じゃーね」と言い送り出した。


「ありがとう、礼子。美希もごめんね、じゃーねまた明日」

咲はそう言って、私と美希に手を振りながら今来た道を引き返した。


「もう仕方ないな〜、なら二人で楽しもう礼子!」

美希は気持ちを入れ替えて、私に振り返って笑顔で言った。

その後二人で色々なショップを見たり、出店のスイーツを軽く半分個ずつしながらショッピングモールを歩き回った。



「もうこんな時間だねそろそろ帰ろうか」

わたしは腕時計を見ながら美希に言った。美希も自分のスマホの時計を見て。


「わぁ〜本当だ、時間経つの早いなぁ……なら帰る前にお手洗い行ってくるから待ってて」


「あいよ」

美希が私の足元に自分の鞄を置いて、手洗いに向かいながら言うので、私は壁際に寄り掛かりながらスマホをいじりながら、美希の方を見ずに応えた。


しばらくして誰かが私に近づいてくる気配がしたので。


「美希終わったの?じゃあ帰ろうか……」

私がそう言いながら近ずく気配に顔を上げると。


「!?」


「よう、久しぶりじゃねーか礼子」

私の目の前にいたのは、茶髪を真ん中で分けで肩まで伸ばし、常に眉間にシワを寄せて目つきが鋭く、体格はヒョロッとして、ダボダボの白いTシャツにダボダボのグレーのスウェットを履いた男が立っていた。この男が私が中学生の頃につるんでいたヤンキーグループ『ブラックボーン』のリーダーで……思い出したくもない、黒歴史の一つ、久須くす 竜也たつやだ。


「ひ……人違い……です」

私は体を震わせながらかすれた声で、顔を背けてボソッと言った。


「あぁなんだって、聞こえねーよ礼子?俺がお前の事を間違えるわけねーだろ」

竜也は左手を壁につけて体を支えながら、私の顎を右手で掴み、顔を無理やり自分の顔の方に向けた。

それでも私は目だけでも抵抗して他の方に向けていた。


「なんだよ冷てーな、久々に彼氏に会ったって言うのによ、ケッケッケッ」


「!?、私はアンタの彼女なんかじゃない!!」

私は竜也の“彼氏”と言う言葉につい、過剰に反応してしまった。


「やっぱり礼子じゃねーかよ、クックックッ」


「……」

私は竜也の言葉を無視して、美希の鞄を持ってその場を立ち去ろうとした時、手首を強い力で掴まれた。


「痛っ!?」


「待てやコラァ!こっちは話終わってねーんだわ」

竜也は凄く怖い形相で私の手首を掴み自分の方へと引っ張った。


「ゴメン礼子、待った……」

そう言いながら濡れた手をハンカチで拭きながら美希が私の方に近づいてきた、しかし私が竜也に手首を掴まれてるのを見てすぐに立ち止まった。


「ちょっと貴方なんですか!礼子から離れて下さい」

美希は男を睨む様に言った。

竜也は頭をボリボリと掻きながら、物凄い冷たい目で美希を見下し。


「あぁん!?んーだテメーは、こっちは礼子に用があんだよ引っ込んでな」

竜也は突然現れた美希に、不愉快そうに睨みつけて、低いトーンで言葉を投げ捨てた。

竜也は女、子供だろうと容赦なく暴力を振るう男だ、特にこの声のトーンの時は危険なのだ。


「み、美希……気にしないで、こ、この人は私の知り合いなの……急に用事出来たから、美希は先に帰っててよ……ねっ」

私はこのままだと美希まで巻き込まれると思い、美希だけでも逃がそうと、とっさに嘘をついた。


「で、でも……礼子……」


「お願い、帰って……美希、私は大丈夫だから……大丈夫だから……」

心配そうにする美希に私は、精一杯の笑顔でなんとか美希に答えた。


「で……でも……」


「帰って!!」

それでも心配そうな顔をする美希を私は大きな声で、嫌われる覚悟で怒鳴った。

怒鳴られた美希は一瞬ビックとして、震えながら立ち尽くしてしまった。


「美希……何でもないから、これ美希の鞄……ごめん……」

そんな美希に対し精一杯の作り笑いで、美希の鞄を渡しながら、小さな声で謝った。


「うん……ごめん、ごめんね礼子……」

美希は鞄を拾うと、何度か私を振り返りながら、駆け足でその場を立ち去った。


「やっと邪魔者はいなくなったな、クックックッ」

竜也はニタニタしながら私を見下す。


「私はアンタなんかに用はないの、どこか行って!」


「あ〜ん、オメーに用が無くても、こっちにはあるんだよ」


「ふんっ……!?」

私は竜也の目は見ずに、悪態を吐く(つく)が、その瞬間右手首を思いっきり掴まれ、頬を鷲掴みされ、無理矢理竜也の方に顔を向けさせられた。

「おいおい、あんまり調子こくなよ礼子、彼女だからっていつまでも優しくなんかしねーぞ俺はクックックッ」

竜也は凄い形相で、不気味な笑い方をしながら私を睨みつけた。


「やめて、離して」


「クックックッ、可愛い声も出んじゃねーかよ、いいね女子高生の嫌がる声も、キッヒッヒッヒッ」

竜也は舌舐めずりするように気持ち悪い笑い声で私を見回す。


「まぁ、こんな所で立ち話もなんだからよ、お前の奢りでお茶でもして話そうや、クックックッ」

竜也は礼子の手首を掴んで引っ張りながらショッピングモールの飲食店の方へ歩き出した。


「……」

私はもう抵抗する気力も失せ、竜也に引っ張られるままうつむきながらとぼとぼと歩き出した。

(もうダメだ……父から逃げても、今度はこいつに付きまとわれるのだ、そうあの頃の生活に逆戻りだ……やだ……やだよ)

普段は強がって、泣かないって決めていたのに、過去の事を思い出すと色々な感情が溢れ出て、自然と目から涙がこぼれ落ちてきた。

「……助けて……誰か……」


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