骨川財閥
骨川財閥、それは日本に数十個存在する財閥の一つである、骨川財閥は戦前から武器などの製造で財を築き、現在では幾つもの産業に進出し成功をおさめてきた。
しかしその表の顔とは違い裏社会では『黒い財閥』、『死の商人』と噂が囁かれ恐れられてもいた。
そもそもこの桜島市はかつて戦後間もない時代、全国で治安が悪化していた事を懸念した日本政府がある計画を持ち上げた事から作り上げられた地域であり、その計画名が『蠱毒構想』、政府は桜島市を日本の四つの財閥と四つの暴力団の管理下に置き、そこへ全国の犯罪者、半グレ、貧困層などを収容し、全国の治安の改善を計った、その為にこの桜島市は一切の政府の関与が及ばない無法地帯となったのだ。
そんな国の管轄下から見離された土地を骨川財閥は何故か強い関心を持ち、四つの財閥の中でも群を抜いてここでの勢力拡大を熱心に進め、暴力団体の二つの勢力をも骨川財閥下に吸収し、七十年代から九十年代にかけては桜島市での骨川財閥の地位も権力も他を圧倒する物となっていた。
当然そんな状況を黒白組(後の暗黒白虎組)も指を咥えて見ているわけもなく、連日連夜において血を血で洗う壮絶な抗争が街の至る所で繰り広げられ、国も戦後最悪の愚策とも言われたこの地域を闇に葬るいいチャンスとばかりに放置、その為に各組織は既に収拾がつかない状況にまで追い込まれていた、しかしそんな血みどろな抗争はある時に呆気ない幕引きを迎える事となった、骨川財閥三代目総裁、骨川 大便が二十世紀最後の年に各財閥、各組織に声を掛け停戦協定案を持ちかけたのだ、被害が莫大になっていた各組織はすんなりそれに同意、その後二十一世紀に入るとかつて無法地帯だったこの桜島市は日本有数の大都市へと変貌を遂げ骨川財閥はこの街での地位を確固たるものとしていた。
「ふ〜ん、なるほどね……この情報だけじゃまだ動けないわ、確かに暗黒白虎組との共闘は取り付けたし、私達……白愛会の皆んなの強さがあれば戦えると思う、でもそれ以上に骨川財閥の戦力はまだまだ未知数な所が多すぎる……どんな勝つ可能性があろうとそれが絶対と言い切れないのならば白愛会のトップとして動く事はまだ……だからと言ってこのまま何もしないでいればきっとあの娘達は……」
黒戸 紅は数枚の骨川財閥に関する資料に目を通して呟きながら、昨日の小林 薫とのやり取りわ思いだす。
〜〜前日〜〜
茜との会話を終えて電話を切った直後、直ぐに紅はスマホを取り出すと連絡先から『小林 薫』の名前を探し発信を押す、数回のコールの後に薫は直ぐに電話へ出た。
小林 薫は桜野中学校の二年生で、小林財閥の一人娘の令嬢で白愛会の諜報部隊リーダーも務めている、性格は我が儘で甘えん坊な所がある一方、好きなものに対しての忍耐力と集中力は計り知れない、容姿はオレンジ色の髪を二つに分けたおさげに、少し冷めた目をして、体型はスレンダーなAカップながら全体的に気品と品格を漂わせた少女である。
「あっ、もしもし薫? 今は大丈夫かしら?」
『はい……まぁ大丈夫ですが、なんですか紅さん、こんな遅くに……』
薫は就寝前だったのか少し眠たそうな声で電話に出た、それもそうだろうもう既に時間は深夜を迎えていたのだから。
「あぁ、もしかして寝てたかしら? ごめんなさい、対した用じゃないんだけど、前々からあなた達に骨川財閥に関する情報収集を頼んでいたじゃない、その資料を途中でいいから明日にでも用意しといて貰えない?」
紅はこんな夜中に電話を掛けた事に申し訳なさそうに要件だけを手短に話した。
『骨川……あぁ、まだ途中ですがある程度の情報なら揃ってはいますよ、ただ骨川財閥のセキュリティは我が諜報部隊でもなかなか侵入出来なくて、機密情報までは入手困難なんですよ、だから表面的な情報ぐらいしか渡せませんがそれでもよろしいですか?』
薫は少しづつ目が覚めてきたのか、寝ぼけた声から徐々に歯切れのいい物言いに変わった。
「えぇそれで構わないわよ、ちょっと今のこの街の現状を知りたいだけだったから」
『そうですか……あっ! あの〜う……つかぬ事をお聞きしますが、もしかしてそれって白様への報復の為なんでしょうか? それならば私たち諜報部隊も凛の隠密部隊もいつでも出れる準備は出来てますので』
最近の事件の事もあり、薫は紅の回答に対して勝手な憶測が脳裏を走り、黒戸 白への報復を期待した。
「えっ!? あっ……あぁそうじゃないのよ、ごめんなさい。 ただ今後の事を考えて色々と今の桜島市の勢力関係を知りたかっただけなの」
紅は少し前に茜との共闘の話は伏せ、白を慕う後輩達がやはり報復を期待し、まだ動かないでいる事に申し訳ない気持ちを感じ謝る。
『そ、そ、そうですか……私の方こそすいません、紅さんが白様の報復に動くのかとつい……紅さん……私は……私はあの白様を滅多刺しにした糞野郎を……久須 竜也を同じ様に滅多刺しにしてボコボコに……じゃないと腹の虫が治らないくらいに……ハァ、ハァ、ハァ』
薫は紅の言葉に落胆し、白の事を考えると久須に対する殺意が沸々(ふつふつ)と湧き上がってきていた。
「あなたのその気持ちは嬉しいは、私だってお兄ちゃんの報復はしたいのよ、でもねまだ動かないで骨川の全貌も分かっていない状況ではリスクが高いの、白を大切に思う気持ちと同じで私には白愛会……あなた達の事も大切なの、だから私が軽はずみに報復なんて指示を簡単には言えないのよ、だからお願い勝手な行動だけはしないで薫」
紅は興奮する薫とは対照的に冷静に優しく可愛い後輩を思い宥める。
『……わ、分かりました、取り敢えず明日にも骨川の資料をお渡しします、では失礼します……おやすみなさい』
薫はどこか納得出来ない所もありつつも感情を抑え、諜報部隊リーダーとしての対応を優先した。
「えぇ、分かってくれて嬉しいわありがとう、それと夜遅くに電話してごめんなさい、おやすみ薫」
紅も薫が納得してるとは思っていなかったが、感謝の言葉を伝え電話を切った。
今思えばこの電話が白愛会トップを務める紅の考えと、白を思う白愛会メンバーの考えの亀裂が生じた瞬間だったのかも知れない。




