4話
そんな訳で先ずは自宅の把握とカスタマイズから始めよう。
脳内に直接操作方法がインストールされているので目の前の操作盤の扱いはわかるが、手慣れてないのでトロトロと作業をすることになる。
「とりあえず現状の見取り図が欲しいな…」
『平面図ですか?立体図ですか?』
「平面図でお願いします。えっと、ここをこうしてこのスイッチで、おしきた!」
操作盤の後方の蓋を開き、横に付いているスイッチを押すとB4サイズのクリアボードが現れる。ボードを見やすいように配置調整していると建物の平面図が映し出された。
「ナイスタイミング!ありがとう。」
『いえ、当然のサポートです。右上の3Dマークを押せば立体図に変更されます。』
ナビの気付いにお礼を述べつつ、図面を操作して確認をしていく。自宅の建物は見た目平屋だが、内部構造は二階建てで、一階部分に生活の全てが詰まっている作りになっている。
形としては縦長の長方形に近い形をしている。右下に玄関があり、玄関から左はそのまま土間のキッチンに繋がっており、玄関の正面にはリビングに通じる扉となっていた。当然、キッチンとリビングも引き戸で繋がっている。リビングの右奥に扉があり、廊下に出る設計になっており、そこには4つ扉が並んでいて、物置、トイレ、浴室、寝室(偽装)と並んでいる。そして寝室の広めのウォークインクローゼットに転移の魔法陣が隠されており、それを使うと司令室にある寝室じゃない方の扉の前に出るというわけだ。この司令室は神の配慮で空間無視で屋根裏スペースに収まっている構図だ。神のパワーハンパねぇな!
そしてこの自宅には庭が付いていて、広さ的には建物を覆うように横が2メートル、縦が5メートル程の長方形になっていた。その庭を囲うように木柵が覆っている。玄関から真っ直ぐ進んだ先の真ん中に門があるような作りになっていた。
俺はキーボードを操作して、スクリーンに一階の各部屋と庭を投影させる。
「枠組みだけで他はまだ何もないのか。まぁそれも含めて快適強化カスタマイズしろってことなんだよな?きっと…」
自宅をカスタマイズするためのカスタマイズポイント、またの名を功績ポイントを確認すると初期サービスポイントとして10,000ほどあった。
カスタマイズの内容としては移動用の足周りや推進装置、防衛用の結界に迎撃装置、攻撃用の魔導具や連弩に、見た目完全に銃器な感じの物に大砲だなこれは。それに偵察兵器の虫型、鳥型や、侵略兵器で魔物型や人型ねぇ。なるほど。なるほど。
他には生活系に生産系に娯楽系まであるんだ。自由だな。さすが悪戯の神様だ。
カスタマイズの内容をサラッと見ていると不意にお腹が鳴った。
「そーいや、腹減ったな。食事関連の知識はインストールされてないんだよな。まぁ好みがあるからってことなのかな?ナビ、ご飯はどこに?」
『食事ですか?これは盲点でしたね』
「盲点?ってどういう事?」
『私の創造神様は基本食事をしないのです。食べないという訳ではないのですが、食事は娯楽に近い趣向品なためにそこまで必要としないのです。』
「…つまりは?」
『全くもって忘れてました!てへぺろ』
「嘘だろぉぉぉおお!?え?マジか?マジカルマジか?生物が生きていく上で食事と睡眠は欠かせないものだよね!?それ忘れるってどういう事!?」
『自宅を作ったのは神ですし、私は思念人と言われる思念体です。生物という括りにないのでそんな事言われても困りますね』
「無駄に正論じゃねぇかクソ!こうなったら…あれか?カスタマイズで食えそうなもの探すしかないのか?……水は?」
『てへぺろ』
「水すらないんかい!悪戯の神の計画穴だらけじゃねぇか!」
『いえ、貴方のその苦悩を見るための計画の可能性もありますね』
「悪戯の度を超えてるよ!悪魔か!?」
『いえ、神です』
「そういう意味で言ってねぇよ!」
まさかの初カスタマイズが生命に関わる事になろうとは思わなかった。生活系、生産系を探していくと、井戸500ポイントと畑50ポイントがあったので即カスタマイズした。次に食べ物を探すと見事にすぐに食べられるようなものはない。
「種や苗はあるのに実がないな…どうすればいい?金や食べ物に交換がないのはカスタマイズって括りじゃないからか?変なとこで拘って、大切な所が抜けてんな。」
『畑に種や苗は選択した後にオプションを確認してみてください。』
「オプション?あっ、そうか!カスタマイズ完了までには時間がかかるから、時間削減するためにポイントを追加すれば完成速度を速められるんだった。それを生産系に当てはめれば成長促進があるのか!ありがとう!ナビ!」
『いえ、ナビゲーターとして当然のサポートです』
根本の原因を作った…のは神であってナビじゃないからここは我慢だ。我慢。
何を植えるか悩んでいる時にふと気付いた。どこ探しても調理器具も調味料がないんですけど。あれ?これもしかして消耗品関係とか小物関係とかも……やっぱないんですけど!何なら服とかタオルとかトイレペーパーもないんだけど!
思わず頭を掻きむしった。
はい。そんな訳で初めてのカスタマイズは下記の通りになりました。
▽▼▽▼
初回10,000ポイント
使用ポイント
庭部分
・井戸(500)
・畑(50)×2
・サツマイモ(5)+成長促進(使用ポイント2倍)
・林檎(25)+成長促進
キッチン部分
・魔道装置オーブン(500)
・魔道装置浄水器(500)
トイレ部分
・自動洗浄魔道装置ウォシュレッツ(200)
浴室部分
・魔道給湯装置(750)
・魔道温風機(150)
・魔道自動洗濯乾燥機(1200)
共通
・給水装置及び配管(50)
・魔力発生供給装置(3000)
使用合計7010ポイント
残り:10,000-7010=2990ポイント
とりあえず成長促進して実った林檎とサツマイモを収穫して、サツマイモはオーブンにぶち込んで、林檎を齧る。
「前途多難だ…」
焼き芋と林檎が美味かったのがせめてもの救いだった。