34話
スライム君達を失ってから早くも1週間の月日が流れた。
そして今、自宅艦の上空を円を描くように羽根つき白馬にまたがった騎士50騎が旋回している。昔、アニメの劇場版で見たことある光景だ。その時は白い量産型に羽が生えた人造人間だったかが、赤い2号機の上空を旋回してた気がする。
「ナビ、幻影結界と防音結界発動してるよな?」
『はい。問題なく発動しています。ですが、見た目と音は誤魔化せても魔力までは誤魔化せないですよ。』
おふ。そんなトラップが待ってるとは。未だに俺は詰めが甘いようだ。だけど、あれから随分とカスタマイズを施した自宅艦の性能をテストするにはいい機会かもしれない。
***************
統合軍暗部隊毒蛇のスクルト支部長のウロからもたらされた情報を基に、邪悪の権化、ウロは起動要塞箱庭と呼んでいたモノの捜索を開始してから私達はその諸悪の行いを目撃し、怒り心頭である。
私達の生活を支える商人の出張所を廃墟と変え、神の恩恵自然の森の一部を溶かし原型も止めぬほどの死の大地に変えた行いはどんな懺悔を用いても償えるものではない。極刑に値する。
「隊長。巧妙に幻術を使い姿を隠しているようですが未知の魔力を感知しました。」
斥候に出ていた部下の報告を聞き、一刻も早く邪悪を浄化するために教会騎士団の私達、通称ペガサス騎士団はその感知された場所へと馬を飛ばす。光の神の尊い教えを軽んじた、生半可に力を持った錬金術士はタチが悪い存在でしかない。
程なくして斥候が魔力を感知した場所までくると、戦闘に特化した私でもわかるほどの魔力を感じる。だが何かがおかしい。警戒をしつつ魔力の塊の上空を旋回しているとウロからの報告から比べると明らかにその魔力の流れ方が大きいのだ。
しかし、例え相手が想定よりでかかろうとペガサス騎士団の武威の前では霞のように霧散するだろう。それは幻影魔法が打ち破られた時と同じように。
「全騎突撃体勢!ウィンドショット一斉射撃の後、敵、起動要塞に突撃総攻撃をかける!神の鉄槌を!!!」
「「「「「神の鉄槌を!!!!!」」」」」
ペガサスを更に上空へ一度上り、その後起動要塞に向けて急降下を開始する。全騎はミスリル製のランスの穂先に魔力を集中させ、ウィンドショット射撃の準備に取り掛かる。
ペガサスの羽ばたきに重力を乗せた加速、そして私達の全身を包むミスリル製の武具で固めた突撃を前に勝てる者など、勇者様や神の使徒様のような選ばれた僅かな者達だけだ。
私は自負と誇りを胸に、敵に向かって邁進していく。
***************
「敵、四方に分かれ上昇を開始。全騎に魔力の集中を確認。」
新しくオペレーター席に座っている、大きなヘッドホンで耳を覆い隠した金髪の美少女エルフのリリスが、レーダーに映し出された状況を告げる。
リリスはとても心の強い子だった。子と言ってもエルフの彼女は人間の何倍も長命で、俺より年上なんだけど見た目は女子高生くらいの若さに見えるんだ。
そんな彼女が庭の一角に建てた慰霊碑の前で3日前に行った追悼式に現れたのだ。タオルで顔を隠し、隅っこの方にそっと現れていただけだったが、勇気を出して外に出ていることが俺からしたら凄いと思う行為だった。
そしてその時気付いたが、今も、彼女が救出された時も、先端を千切られた耳を隠そうと重点的に手で押さえているようだった。それなら今みたいなタオルよりは、少しはマシだろうと思い、オペレーター用の高級ヘッドホンをカスタマイズして配線を外してからリリスに送ったら、翌日の朝、リビングで食事をしていた俺達の前にヘッドホンをつけて現れたのだ。
現れたリリスの姿に、誰よりも俺が一番動揺して椅子から落ちてコハクとコテツの後ろに隠れてしまったほどだ。美少女耐性ありませんもん。
そして一言お礼を告げた後に、彼女は言ったんだ。
「人族に復讐するために力を貸して。私の力も好きに使っていいから。」
怒りや憎しみは強い原動力になるとはよく言ったものだ。俺はその言葉に承諾し、オペレーターを任せることにした。コテツやコハクはまだ幼いので直感である程度こなせる操縦や砲撃はどうにかなるが、冷静さと説明力を必要とするオペレーターは厳しいので適材適所だろう。
正直、双子のフォローでそっちはナビに丸投げ気味だったから助かる。うんうん。
『貴方、思い出に浸るのも大概にしてください。』
俺が感慨深く頷いているとナビに怒られてしまった。そんな訳で艦長の仕事をしますかね!
「コハク、3連装副砲4機を四方の先頭騎に照準。射程圏内に到達したら発砲許可する。
リリスは射程圏内までのカウントダウン任せた。
コテツ、自宅艦は副砲発射後に発進させる。バーニアを始動し待機。
ナビ、円形結界発動し、敵魔法に備えつつ、発進ように重力操作装置を反重力モードで準備。」
「はいなのです!」
コハクが嬉しそうに返事をして、自宅艦の前後左右に新しくカスタマイズされた3連装副砲〜爆裂魔法砲〜を操作し、四方に分かれた敵の先頭騎に照準を合わせ、敵の動きに合わせながら微調整を行っていた。
「了解。射程圏内までのカウントダウンは10秒切ったら始めるから。」
リリスの言葉にコハクは再び嬉しそうに返事をしていた。
「はい!!」
コテツも力一杯返事をしてくれているが、コハクと違い少し緊張気味で固いようだ。俺もプレッシャーに弱いからその気持ちはよくわかるぞ。新しくカスタマイズして、空を飛べるように重力操作装置と多数のバーニアを追加してシミュレーションで何度も共に練習してきたが、シミュレーションと本番では大きな差があるよな。しかもぶっつけ本番だし、攻めるなら俺じゃなくて敵で頼む。
『円形結界発動、及び重力操作開始、反重力モード順次切り替えあと10秒で完了します。』
今のところ順調に進んでいる気がする。いや、ごめん。抜けてたわ。
前回の反省を活かして、自宅部分を覆い隠すように開閉式天井ドームをカスタマイズしたのに閉めるのを忘れていた。操作盤を操作し、ドームを閉めるとそれに合わせてモニターが順次ドーム越しの外の風景に切り替わっていく。ドームを閉めると完全に自宅は暗闇に覆われるのだ。だけど室内には光魔法の照明があるので真っ暗ではないんだけどね。
次に俺は受話器を取り格納庫に放送を開始する。
「スカイ隊は発進準備!整備隊、補佐頼むぞ!
ガーディアン隊、アース隊は第一級戦闘配備で待機!
これは訓練じゃない!もう一度繰り返す!これは訓練じゃない!」
今頃、新しくカスタマイズされた兵器達が格納庫で慌しく準備をしていることだろう。
マコトの読み通りに格納庫では慌しく兵器達が動き回っていた。いや、1機を除いてはと言った方がいいかもしれない。
6本の腕に3面の顔を持ったその兵器は図面を描きつつ、パーツを転がし、白桃を食べいた。この兵器は新しくカスタマイズされた整備用兵器神型の阿修羅だ。そこへ蛸のような兵器が近づいて行く。この蛸も新しくカスタマイズされた整備用兵器蛸型のオクトパスだ。
『親分も働いてくださいよ!』
『あぁ?俺は整備と改造専門だ!他のことはお前らオクトパス達に任せた!』
オクトパスの発言に投げやりの言葉で返し、再び自分のやりたい事に没頭する整備隊隊長の阿修羅であった。オクトパスはこれ以上は無駄だと溜息をついて、翼竜隊の発進準備に戻る。ちなみにオクトパスは10機いる。
ガシャガシャ
この地下二階格納庫で一番でかい翼竜隊の、強行偵察機翼竜型のワイバーンは左右に変更されたカタパルトデッキへと歩んでいく。その全長は頭部から足までで6メートルを越え、尻尾や翼まで入れると10メートを越えるだろう。
『スカイリーダーから各機へ!これは我等の初陣である!敵は空を飛ぶ騎士団!空の王者が誰かという事を思い知らせてやれ!』
グオオオオオオオオッ!!!
隊長機を除く9機の翼竜の咆哮が格納庫内に響く。気合い十分であるが、彼らの任務は敵戦闘力の偵察が主任務なので、意気込みの方向性が違う。
この10機の強行偵察機翼竜型は整備隊隊長の阿修羅の手によって改造が施されたカスタマイズ機達である。それは元々あった足の爪やブレスの強化は勿論の事、背中部分が開閉しそこから追尾式火魔法という括りの小型ホーミングレーザーが6門追加され、尻尾の先端には爆裂魔法が組み込まれており、尻尾で叩きつけると爆発を起こす仕組みになっている。さらに腰部には追加バーニアが左右に取り付けられているので加速や最高速も改造済みだ。最早偵察機には過剰武装もいいところだろう。
そして格納庫の中にはピリピリとした緊張感を纏ったガーディアン隊とアース隊が静かに、戦いの時に備えていた。
各々の準備が進み、司令室ではリリスのカウントダウンが開始される。戦闘開始まで10秒を切った。
難産でした。文章の見せ方に迷い何度も書き直して遅くなりました。ごめんなさいm(_ _)m
新カスタマイズ一覧はこの戦いが終わった載せる予定となっております。
ここまで読んでくださりましてありがとうございました!引き続き本作をよろしくお願いします!




