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33話

魔力供給装置の限界稼働域まで飛行し続けた自宅艦は一度地面へと着地をした。ゴブリンの里からおよそ5キロは離れられただろう。


「ナビ、アラクネ達の様子を見てくる。何か異変があったら教えてくれ。」


『かしこまりました。』


俺は一階のリビングに向かうとアラクネを囲うように双子や兵器達が集まっていた。俺の存在に気付いた兵器達は、左右に分かれスペースを空けてくれたので、その場に腰を下ろす。アラクネを見ると寝ているらしく呼吸に合わせて胸が上下していた。何とか一命は取り留めたらしい。よかった。本当によかった。

あとで調べてわかったことだが、ハウゲンがくれた傷薬はエルフの妙薬と言われる最高級の傷薬で、死んでさえいなければ傷を一瞬で治す代物だったようだ。ただ欠損した体を治したりは出来ず、あくまで傷をふさぐのに優れている。それでもかなりの代物だ。ハウゲンに感謝しなければ。


俺はアラクネの手を握り謝罪の言葉を口にしてしまう。


「すまなかった。アラクネ…。それに皆、すまない。俺のせいで仲間の多くを失ってしまった。」


双子は俺に抱き着き、首を左右に振りながら泣き始めた。兵器達も皆、言葉を話すことが出来ないために否定をするように首を振るばかりだ。だけど俺のせいなのは何も変わらない。

モニター越しにアーケードゲーム感覚で自宅艦を動かし、シミュレーションゲーム感覚で兵器達を采配していた。ここはゲームじゃない。この世界はもう現実なのに。俺が始めた戦いに、俺が一番覚悟をしてなかった。だから今回多くの仲間を失った。俺の過失でしかない。

俺が始めた戦争だ。俺が誰よりも覚悟を決めなくてはいけないんだ。


俺がこいつらの艦長だから。


俺は皆にアラクネのことを任せると、司令室へと戻る。するとナビよりリリスから通信があった報告を受けたので、リリスに折り返しの連絡をした。


「席を外してたんだ。どうした?」


「…あの…スライム君……死んじゃったの?」


「あぁ。俺の覚悟が足りなかったせいでスライム君を含め多くの仲間を死なせてしまったよ。」


「…私にも……聞こえた。スライム君の声が。」


そうか。スライム君はどうやら通信チャンネルを自宅艦内全てで通信を行ってたらしい。


「始めて…助けられた時も…私は……お礼を…言えてなかった…。」


「その気持ちだけでもスライム君は嬉しいと思ってくれるよ。だから安心してくれ。スライム君に成り代わって俺が、俺達がリリスを守るから。」


「……もう…守られるだけなんて嫌。待ってて。私も戦えるようになるから。」


そう告げるとリリスからの通信は切れた。彼女は俺より強い子だ。


「ナビ、俺は強くなるよ。」


『はい。ですが物理的には無理ですよ。』


「知ってる。」


この余計な一言もナビなりの優しさなのだろう。俺はすぐに獲得ポイントを確認するとその多さに驚き、一件のメッセージに気付いた。


【歴史介入おめでとう。世界は君を異端と認め動き始めた。これからも楽しみにしてるからポイントサービスしてあげるよ。

これからも頑張って歴史を掻き乱してくれたまえ。


by 悪戯の神】


悪戯の神からの異世界転移後、初のメッセージだった。その言葉の中に気になる一言がある。「世界は君を異端と認め動き始めた。」である。つまりは本当の戦争はこれから始まるということなんだろう。次は負けない。勝ってやるさ。

俺はカスタマイズ一覧を開き、勝つために思考する。







****************


連合軍。



連合軍国境砦デルマルチには衝撃が走っていた。最高司令官ゴルダン率いるゴブリン100人、ボブゴブリン30人の総勢130人の大隊がゴブリン2人、ボブゴブリン5人の僅か7人に数を減らして帰還したからだ。それだけではなく、生き残りの全ての兵士は満身創痍で装備はボロボロになり、至る所に傷を作っていたからだ。当然、最強のゴブリンと言われたゴルダンもその1人であった。

早急に砦の医務室まで運ばれたゴブリン達は治療師による回復魔法を受ける。すると犬人族、またの名をコボルト族と呼ばれる犬が二足歩行しているような種族の1人が医務室に入ってきた。


「ゴルダン司令官、無事か?」


「ん?あぁ、警邏隊長のポルガか。仕事は良いのかよ?」


「今日は非番だ。司令官と違って私は真面目なのでな。部下が司令官が死に掛けで帰って来たと、報告をしてきて慌てたぞ。その姿なら問題なさそうだな。」


ゴルダンは手を数度握っては開きを繰り返し、大きな溜息を吐いた。


「あぁ。俺はどうってことねぇ。だが部下達を殺しちまった。しかも俺が呑気に気絶してる時によ。」


「ゴルダン司令官が気絶だと!?」


「ガハハハッ!あんな強烈な一撃はオーガ族でも出せんだろうよ!」


「笑い事ではない!そんな軍勢がいるとなると…統合軍なのか?」


「ちげぇ!ちげぇ!先ず言えるのは奴等は人族とも喧嘩してたみてぇだから統合軍じゃねぇと思うぞ?あと俺を…いや、人族と俺達をやったのはたった2つの異形の化け物だ。」


ゴルダンは事の顛末を話し始める。起動要塞芋虫を罠に嵌めたこと、その後乗り込んだら人族が3人と女に蜘蛛が生えた化け物と黒い液体の何かがいたこと、そしてその強さが常識外れで人族と共闘までしたのに、蜘蛛女との戦い敗れたこと。最後に意識を取り戻した後に部下から聞かされた全てを溶かす黒い霧の話。

それを聞いたポルガは心底驚いた。起動要塞は珍しく強力だ。それに加え、啀み合う敵とも共闘しなければ倒せない化け物を保有していたことに。そしてそれが統合軍でもない、第三勢力の登場に。


「中立国家ドワーフ達だろうか?」


「いや、わからねぇ。芋虫や化け物を作った親玉は見ることはできなかったからよ。」


そしてゴルダンはふと思い出した。部下の1人が報告した内容を。それは黒い霧の中、発光した物体がゴゴゴゴと異音を上げて南に飛んで行ったという。


「だが芋虫はまだ生きてやがる。南に向かったみてぇだ。」


黒い霧で大半の仲間を失った。今の芋虫ですらこの脅威だ。更に強化されたらこの世界は大変なことになる。それだけはわかった。ならば動いてもらうしかないないだろう。


連合軍に。







***************



統合軍〜闇ギルドスクルト支部〜



薄暗い裏路地の一角にある毒蛇支部の一室でウロは水晶球を眺めがらワインを飲んでいた。その水晶球には自宅艦での戦いが映し出され、黒い霧に森が覆われたところだった。


「派遣した部下は全滅しもうしたのぉ。情けないのぉ。弱い者の戦いは何とも退屈じゃ。じゃが、あの起動要塞は面白い。そこに住まう異形の者達もじゃ。しかし妾が飛ぶには些か遠過ぎるしのぉ。それにまだ弱い。もう少し実を熟させたほうが美味しそうじゃなぁ。」


グラスに注がれたワインを飲み干し、グラスを放り投げると暗闇から執事服を着込んだ1人の子供が姿を現し、そのグラスを受け取った。


「統合軍のペガサス騎兵団に情報を流してやるかのぉ。奴等ならば盲目した忠誠心で、すぐに飛んで向かうじゃろうからのぉ。」


一礼をして執事服の子供は再び暗闇の中へ消えていった。


闇ギルド毒蛇は統合軍が秘密裏に作った必要悪の部隊であった。時に情報を渡し、時に依頼を受け、全ては世界統合のため裏で動く部隊。それが毒蛇の本当の存在理由。

だがウロにはそんな事は関係ない。自分が楽しく生きるために全てを利用する。


ウロは綺麗な顔をいびつに歪め笑う。美味しそうな獲物を見つけたことが嬉しくて仕方ないのだ。


「たっぷりと贄をやる故に、太るんじゃぞ。そして御馳走へと成るのじゃ。」


水晶球には黒い霧により溶ける森の木々の様子に、その場から飛び去る自宅艦の姿が映し出されていた。

そして溶ける木の枝から一滴の黒い水滴が滴り落ちた。

エピローグ的な感じです。

手持ちがこれで尽きるので次回投稿は少し遅くなるかもしれません。でも来週には出せるように執筆頑張ります!

それともう少し話数が増えたら章管理しようかと検討しています。した方がわかりやすいですよね?


今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

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