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12話

2日目の昼過ぎにアラクネから侵入者が目を覚ましたとの報告があったので、起き上がり眠い目を擦りながら寝室を出る。


『おはようございます。よく眠れましたか?』


「おはよう。それなりに眠れたよ。」


『それは幸いです。既にご存知だとは思いますが、アラクネから侵入者が目を覚ましたとの報告が来ています。糸の拘束解除と所持品の回収を命令しておきましたので、準備が整いましたら向かってください。』


「ありがとう。俺が気が付かない事まで手を回してくれる手腕に感謝だよ」


『ナビゲーターとして当然のサポートです』


何だか今日のナビは優しい気がする。幸先いいな。

一階に降り、シャワー、洗濯、歯磨き、洗濯機の観察を終えた俺は、林檎と焼き芋とバナナとみかんを2個ずつと、水瓶を警備兵器(今後はルンバ君)に手伝って貰い、地下室へと持って行く。


「アラクネ、ご苦労様。何か食べる?」


『デハ、ミカンヲ頂キマス』


やっぱり兵器ってご飯食べるんだ。偵察機鳥型(今後はカラス君)が林檎啄ばんでたし、ルンバ君もゴミをご飯として食べてたからもしかしてって思ってたんだけど。

みかんをアラクネに渡すと、アラクネは俺に一礼してみかんの皮を両手で丁寧に剥いて、白い筋まで綺麗にとって一粒ずつ、食べてた。

皮と筋をルンバ君にあげて仲良くみかんを食べてる光景がとても癒された。


「それで侵入者さんはどれ食べたい?水もあるけどコップないから、直飲みでお願いしますね。俺も直飲みするから。」


そう言って直飲みした水瓶を牢屋の中からでも手が届くところに置き、果物もそこに並べる。俺は冷めない内に焼き芋を食べながら、侵入者が動くのを待つことにした。

少し、何かを考えていたであろう侵入者は先ず水を飲み次に林檎に手を伸ばすと一齧りし、少ししてから咀嚼して飲み込んだ。


「毒なんてないですよ。殺すつもりならもうやってますから。」


その言葉に動きが止まった侵入者は深く溜息をついた後に、確かにな…と呟く。


「侵入者さんって呼ぶのもあれですよね?名前、聞かせてもらえますか?」


「……人に名を聞く前に自分から名乗るのが礼儀ではないのか?」


「確かに。ですが、人の庭に不法侵入した人に礼儀を言われたくないですけどね。…まぁいいや。俺は志藤誠シトウ マコトです。それで侵入者さんは?」


「ハウゲン・シュリーフドだ。」


「なるほど。それではハウゲンさん、何の目的でうちに侵入してきたのですか?」


「白々しい。既に分かっているんだろ?」


何言ってんのこの人?わかんないから聞いてんだけど。


「何やら誤解されてるみたいですが、俺にはハウゲンさんがうちに侵入する心当たりが無いのですが。」


「まだ白を切る気か!貴様が統合軍の尖兵で、ゴブリンの里を壊滅させ、我が同胞を誘拐した事はもうわかっているのだぞ!」


うん。すごく誤解してるよ、ハウゲンさん。


「何を根拠にそう思われているのですか?」


「ふん!貴様等人間が我らエルフを奴隷として求めている事を既に知れたこと!そしてゴブリンの里を壊滅させ、そのまま深淵区にあるエルフの里を目掛けて進んでいることくらい、あの通り道を見れば一目瞭然だ!

昨日我が里の同胞が誘拐された!そして人族の貴様がこの様な場所で拠点を築いていれば、貴様が犯人だと主張している様なものだ!これでも貴様は白を切ると言うのか!?」


「あっ、うん。全然違う。」


「えっ?違うの?」


「うん。違う。」


「えっ?えっ?」


よし。とりあえず…みかん食べよう。


俺がみかんを食べてる間、ハウゲンさんは気不味そうに林檎を齧っては水を飲んでいた。


「それじゃ一つずつ説明していくと、先ずは俺は統合軍じゃないし、かと言って連合軍でもない。次にゴブリンの里を襲ってからここに向かったて来たんじゃなくて、ここに現れてからゴブリンの里で狩りをして、ここにまた戻って来た訳だ。倒木の方向を見たらわかると思うよ。次にエルフに会ったのはハウゲンさんが初めてだし、エルフの里がこの先にある事はハウゲンさんに聞かされて初めて知ったよ。」


俺の説明を聞いたハウゲンさんは驚いた表情をすると、バナナに食べながら何かを考え始めた。俺もバナナ食べよう。

そしてハウゲンさんは呟いた。


「あっ、これ美味いな。」


いや、今のタイミングで言うことじゃないだろ。


バナナを食べ終えたハウゲンさんは水で喉を潤した後、疑問に思った事を俺に問いかけてきた。


「貴様がエルフを誘拐していないという事は一旦納得しておこう。だが貴様が統合軍でないのなら何故ゴブリンの里を壊滅させた?」


「それは生きる為です。」


「生きる為?」


「はい。ハウゲンさんもそうだと思いますが、動物は生きる糧として、他者を殺し、喰らいます。肉を食う為に動物や魔物を殺すことと、寒さを耐える為に毛皮を求めて動物や魔物を殺すことと同じ様に、俺が生きる為にゴブリンの里を壊滅させました。」


「生きる為に殺すには殺し過ぎだろ?」


「いえ、必要だから殺したんです。ハウゲンさんの物差しではわからないかも知れませんが、俺には必要だったんです。」


「なるほど。並々ならぬ事情がある様だな。これ以上の詮索はしないでおこう。」


「そうして頂けると助かります。それで俺への疑いは解消しましたか?」


「……うむ。全てではないが、貴様がエルフを誘拐した訳ではない事はわかった。勝手に庭に入り込んだ事は謝罪しよう。」


そう言うとハウゲンさんは頭を下げた。お互いの誤解も一応は解けた訳だし、交渉できるからやってみよう。


「ハウゲンさんは、誘拐されたエルフを探しているってことなんですよね?」


「あぁ、そうだ。」


「それなら俺も協力しましょうか?」


「む!?それは本当か?」


「はい。残念ながら善意でって訳じゃないので多少なりとも報酬は頂きますが」


「報酬次第ではあるが、無償で助けると言われるよりは信用が出来るというものだ。何が望みだ?」


俺は不適な笑みを浮かべこう告げてやった。


「生活用品分けてください。お願いします。」


土下座付きだぜ!


若干引き気味ではあったが、ハウゲンさんは了承してくれた。俺とハウゲンさんは熱い握手を交わした。一方的じゃないからね。


ただ、この地下牢以外は空き部屋がないことを説明し、鍵は開けておくから庭までは自由に行動して良いことを伝え、俺は一度司令室へと戻っていく。

当然、監視としてアラクネをハウゲンさんには付けている。


そこでふとある事に気付いたんだ。


名前、名乗ったのに一回も名前呼んでくれなかったな。

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