第五話 小悪魔たちの教育 その五
「待ちやがれ! ミーア!! イーヴィル!!」
「やだーーー!!」
「やだーーー!!」
昼食の後で、私がのんびりと読書を楽しんでいると……。魔王の怒鳴り声が、城内に響き渡り。小悪魔たちは叫び声を上げながら、魔王から逃げて中庭を走り回っていた。
「ミーアさま!! イーヴィルさま!! 止まらないと、牢屋へ入れられてしまいますよ!」
「だって~! つまんないんだも~~ん!!」
「オレ様も! 父さまとお勉強なんて、つまんなーーーい!!」
小悪魔たちは、魔猫の言葉にも怯む様子もなく。中庭をちょこまかと二人で一緒に耳を両手で塞いだままで、走り回って魔猫が仕方なく魔力を使って捕まえようとしたら、ミーアがとっさにその魔力を自分の魔力で跳ね返して、中庭の中央にある大木を薙ぎ倒してしまっていた。
(あらら、大変だわ……)
「くっそーーー!! お前らマジで牢屋へ放り込むぞ!!」
「キャーーー!! やだーーー!! 父さまなんてだいきらいーー!!」
「ろうやになんか入らないーーー!! ぜったいにやだーーー!!」
魔王はそれでも、魔力をあの子たちに向けることはせずに。怒鳴りながらも
素手で兵士たちを使って、小悪魔たちを追い詰めて二人の首根っこを掴んで両腕に抱え上げていた。
「おべんきょうやだーーー!!」
「父さまなんてきらいよーー!!」
「うるせぇーーー!! ジッとしてなきゃいいんだろうが?!」
叫び声を上げて逃げようともがく二人に魔王が怒鳴ると、二人は急にキョトンとした顔をして大人しく魔王の顔を見上げていた。
「今から、ドラゴンの谷まで行って魔力の実践させてやるから! 大人しくしろ!!」
「ほんとに???」
「やったーーー!! 行く行くーー!!」
城内での教育を諦めて、魔王はドラゴンの谷で小悪魔たちに実戦で色々と魔力の使い方を教えることに独断で決めたようだった。
「ちょっと!! 魔王さまー! いけませんよ! ドラゴンの谷なんてー!!」
「うるせぇー!! こいつらには生ぬるい教育は通用しねえ! 実戦だ。実戦!」
魔猫が慌てて魔王を止めていたけれど、魔王の決意は堅いようで魔王は部屋へ戻って支度を済ませると、兵士たちを何人か連れて小悪魔たちとドラゴンの谷へ行ってしまった。私は魔王のことも小悪魔たちのことも心配だったので、すぐにオースティンを呼んで事情を話して魔王たちの後を気付かれないように二人の優秀な魔女たちに追わせることにした。