第四話 小悪魔たちの教育 その四
「お待ち下さい。 ミーアさま~!!」
「やだーーー!!」
「お戻り下さい。 イーヴィルさま~!!」
「やだよ~! もどらないよ~!!」
魔王に小悪魔たちの教育を任せたものの。朝のいつもの光景はちっとも変わらず……。乳母や世話係と小悪魔たちは廊下の端から端までを、何度も何度も追いかけっこを繰り広げていた。
「ミーアさま! イーヴィルさま! 乳母たちを困らせたら、魔王さまに牢屋へ入れられてしまいますよ!」
「やだーーーーー!! ミーア、ろうやなんてやだーーー!!」
「オレさまもろうやになんて、入るもんかぁーーー!!」
使い魔の魔猫が魔王に命じられて小悪魔たちの様子を見に来たようだ。魔猫の冷たい一声で、小悪魔たちはやっと乳母の所へ戻って食卓についたようだった。
「ミーアさまもイーヴィルさまも気性は魔王さまにそっくりね。双子だったから良かったものの。これが一人で生まれていたら、もしかしたら魔王さまよりも手に負えなかったかも知れないわよ!」
「あの子たちの魔力って、そんなに強いの?」
小悪魔たちがゆっくり朝食を食べている間に。魔猫は私の部屋でこれから魔王がどうやって、あの子たちを教育するかを話してくれていた。
「美乃里や魔王さまがいなかったら、すでに、このお城は双子たちの魔力で吹き飛んで無かったかも知れないわね!」
「やだ……。そんなに? 私の中の魔王の魔力が強くなったせいなの?」
魔猫は少し呆れ顔で、私を見て頷いていた。
「魔王さまはね! とりあえずは魔力の使い方や魔界の勢力図や天界について、あの子たちに早いうちに教育を進めて行くってベルゼブブさまとオースティンさまと昨夜、遅くまで部屋で綿密に相談して決めていたわよ!」
「そうだったのね。魔王も本当にあの子たちのことを考えてくれているのね。良かった」
魔王の考えを聞けて、私が胸を撫で下ろしていると。朝食を済ませてまたはしゃぎ始めた小悪魔たちを魔猫は冷たい目でジッと眺めて、大きな溜め息を吐いてから、立ち上がって部屋を出てまた冷たい言葉を小悪魔たちに容赦なく浴びせて固まらせていた。
そして、その後は朝食後の散歩はさせずに魔猫は小悪魔たちを連れて、魔王の部屋へ帰って行った。
「魔王さまのお陰で、ワタクシたちにも平穏な日々が戻りそうです」
「あの悪夢のような……お散歩の時間が無くなっただけでも幸せです」
毎日毎日、あの小悪魔たちに朝食後の散歩の時間に振り回されてヘトヘトになっていた。乳母や世話係の魔物たちは、目をウルウルさせ手に手を取って魔王が本格的にあの子たちの教育を始めたことを心から歓び合っていた。