ベリアルVS小悪魔×4 その二
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魔王とベリアルはまったくまわりを気にする様子も無く、お互いの魔力をぶつけあって戦い続けているようだった。目の前にはすでに、ベリアルの部下の魔物たちや魔王軍の兵士たちがそこらじゅうに倒れている酷い状況でさっきまで笑ってふざけていたオースティンも表情を強張らせていた。
「思っていたよりも酷い状況になっていますね。急がないと、ほんとうに大変なことになりそうです」
「ねぇ。あれって、みんな死んじゃったの?」
「そうですね。生きているものはほとんどいないでしょうね」
この魔界に来て、ここまで酷い惨状を見たことが無かった私はやはりここが魔界で人間界とは違うのだということを思い知らされていた。
「オースティン。双子たちと竜の子をお願いね」
「かしこまりました。美乃里さまもお気をつけて……」
オースティンに双子たちのことを頼んでから、私は私の中にある魔力を開放して両手に赤い大きな玉を作り出して、魔王とベリアルに向けておもいきり投げつけた。
「あんたたち!! いいかげんにしなさよね!!」
「ウワァァァァァーーー!! 痛ってーーー!」
「ウワァァァァァーーー!! なんだーーー!?」
戦いに夢中になっていた二人はまともに私の魔力を喰らって、声を上げて倒れこんでしまったので激しい戦闘がやっと止まって、その場は静まり返っていた。
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倒れた魔王の様子を私が確かめに向かおうとした時だった。ベリアルの叫び声が聞こえて来たので良く見ると、双子たちがベリアルに纏わりついて髪を引っ張ったり、腕に噛み付いたりしていた。
「なんだ? なんだ? お前らはーーー!!」
「うるせぇー! おれさまのりゅうのけんをかえせ!!」
「わたしのりゅうのけんをかえせ~!!」
私が呆れてオースティンの方を見ると、双子たちを止められなかったオースティンは、少し離れた場所でバツの悪そうな顔をして私を見て苦笑していた。
「大人しく双子さまに竜の短剣をお返しください。ベリアルさま!」
「これ以上の争いは無意味でございます。お返しにならなければワタクシたち、竜族をもあなたは敵に回すことになるのですよ!」
「クククク。そんな脅しにオレが屈するとでも思っているのか?」
フレイムとバーンに諭されてもベリアルは気にも留めずに不気味な笑みを浮かべると、双子たちを一人ずつ放り投げていた。
「いってぇぇぇぇーーー!!」
「いったぁーい!!」
放り投げられたミーアとイーヴィルが心配で私が動こうとすると、魔王が私の肩を掴んで私の動きを止めていた。
「あいつらの能力が見られるぜ! クククク」
「ちょっと! 魔王!?」
ニヤリと魔王は笑うと双子たちを指差してから、オースティンと一緒に私を抱えて物陰に隠れていた。




