第二十話 ドラゴンの短剣と小悪魔たち その三
双子の魔女たちの説明を聞いて、小悪魔たちは目をキラキラさせて私に抱きついて頬を赤らめて興奮して叫んでいた。
「かあさまってやっぱりすごいね~♪」
「うんうん♪ ほんとにかあさまは、すごいね~♪」
「そうよ~♪ 母さまはあなたたちをいつでもどこでも見てるんだからね~♪」
私は小悪魔たちをぎゅうっと抱きしめて二人の頬にキスをした。さすがに遊び疲れたのか? ミーアがあくびをすると、それにつられてイーヴィルもコクリコクリと長椅子に腰掛けて舟を漕ぎ始めた。私はすぐに乳母と世話係たちを呼んで小悪魔たちを部屋へ連れて行って、寝かせるように指示してから少しドラゴンの短剣のことが気になったので、書庫へ行って何かないか調べていた。二時間ぐらい書庫で書物を探したのだけれど、短剣について書かれた書物は見つからなかったので、仕方なくそろそろ寝ようと思って部屋へ戻ると魔王が戻って来ていた。
魔王は私を見つけると、すぐに側まで来て私の肩を抱いてわざとらしく私の顔を覗き込んで大きな漆黒の瞳で私の瞳をとらえていた。
「お前さ! オースティンに頼んで魔女を使ってオレ様とチビ共を見張っていやがっただろう?」
「そうよ! だって心配だったし……。でも、魔王を見張ってたわけじゃないわよ! これはあくまでも、あの子たちが心配だったからだからね。嘘だと思うのなら、明日にでもオースティンに聞けばいいじゃない!」
魔王は少し、納得行かないという顔をしていたけど……私は気にしていないふりをして、小悪魔たちが持ち帰ったドラゴンの短剣のことを魔王に聞いてみた。
「それより……。あの二人が竜人にもらって持って帰ってきちゃったあの短剣なんだけど。あのままあの子たちに持たせたままで大丈夫なの?」
「ああ。あれか? そうだな~……。あんまり大丈夫じゃねえな! へへへ♪」
私の疑問に魔王は少し渋い顔をしながら話を続けた。
「竜の短剣は、この魔界でも本当に珍しい超がつくお宝だからな。あの短剣を狙ってガキ共を狙う輩が現れるかもしれねえんだわ。さっきもオースティンとベルゼブブに王宮の宝庫に保管するように言われたんだがな……」
「じゃあ! すぐにでもあの子たちの部屋へ行って短剣を取ってこないと、あの子たちが危ないわ!」
「仕方ねえ……ガキ共が寝てる間に宝庫に仕舞っちまうしかねえだろうな!」
魔王は小悪魔たちから短剣を取り上げてしまうことに、あまり気は進まなそうだったけど、小悪魔たちの身の危険を考えるとそうも言ってられないこともわかっているようで、魔王は私と部屋を出て小悪魔たちの部屋へ一緒に向かった。
【ガチャーーーン!】
小悪魔たちの部屋のすぐ側まで行くと、部屋の方から何かが割れるようなすごい音がした。
「うわぁ~!? なんだよおまえら~! はなせバカァー! やめろ~! かあさま~! とうさま~!」
「やだーー! はなしてよーー! かあさま~とうさま~! たすけて~!」
物音の後にすぐ部屋の中から、小悪魔たちの助けを求める叫び声が聞こえて来たので、私と魔王が急いで部屋のドアを開けると。そこには大きな真っ黒い羽を持つカラスが大きくなったような魔物たちがいて、二人と二匹をそれぞれの両脇に抱えて窓から飛び立つ所だった。
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