第十五話 ドラゴンと小悪魔たち その十
魔王と兵士たちが酒に酔いつぶれている間に、小悪魔たちとフレイムとバーンはいつの間にか、ドラゴンの谷の奥深くにある洞窟の入り口まで来ていたようだ。
「イーヴィル~! この中をたんけんしよう~♪」
「すっげー! 中はまっくらだぞ! ミーア、こわくないのか?」
怖いもの知らずの小悪魔たちは、フレイムとバーンを連れて洞窟の中へ入って行ってしまった。
「ダメ! ダメだってば! 戻りなさい! ミーア! イーヴィル!」
「美乃里さま……。ここからでは、子供たちには聞こえませんよ! フフフ♪」
鏡に向かって子供たちに私が叫んでいると、オースティンがクスクスと笑って私の肩をそっと叩いていた。
「だって~! オースティン。あの子たちだけであんな所へ入ってしまって、何かあったら大変じゃない!?」
「大丈夫ですよ! 魔女たちも一緒ですから、しばらく様子を見ていましょう」
落ちつた様子で、オースティンは鏡の中の小悪魔たちを眺めていたけれど。私はずっと嫌な予感しかしなくて、落ち着いて見ていることなんて出来なかった。
小悪魔たちが洞窟へ入ると、すぐにフレイムとバーンが口から小さな炎を出して目の前を明るく照らして、前へ進みやすくしてくれているようだった。
「ミーア! ほら、あれ見て! でっかいドラゴンだ!」
「ほんとだー♪ えっと。あれは、せきぞうっていうんじゃない?」
洞窟の奥深くにはすっごく大きな、奈良の大仏くらいの大きさのドラゴンの石像があった。
「なんだ!? お前たちは?! 神聖なこの場所へ何をしに来たのだ!」
「おまえこそだれだよ!!」
「そうよ! あんたこそ、だれなのよ!?」
双子たちの話し声を聞いて不振に思ったのか? 石像の影から現れた、人の姿をしたドラゴンみたいな魔物が、小悪魔たちに向かって怒鳴り声を上げていた。しかし、小悪魔たちはちっとも怯むことなど無く……。相変わらず偉そうな態度で魔物に向かって返事をしていた。
「あれは何? オースティン? 人の姿をしてるけどドラゴンなの?」
「ああ。あれはですね。竜人ですよ! ちょっと厄介なことになりそうですね」
双子たちに敵意を剥き出しにして、怒鳴っている竜人の姿を見たオースティンは少し顔を引きつらせていた。
「このクソガキ! 生意気な口を利きやがって! 少し痛い目に合わせてやる!」
「なによーーー!!」
「なんだよーーー!!」
小悪魔たちの口の利き方にさらに怒りを覚えた竜人は、素早く飛び上がると小悪魔たちに襲いかかって、二人の首根っこを掴んで押さえ込もうとしていた。
「いたい、いたい!! やめてよー!!」
「いたい、いたい!! やめろーーー!!」
「クァァァーーー!!」
「クァァァーーー!!」
「ウワァァァーーー! アチチチ、アチチチ! 何しやがる!!」
竜人が小悪魔たちを押さえ込んでいるのを見て、怒ったフレイムとバーンが同時にもの凄い勢いで竜人に向かって口から炎を吐いたので、竜人の頭と背中に火柱が上がっていた。
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