第十三話 ドラゴンと小悪魔たち その八
魔王は城に戻って来ると、もう一匹のドラゴンの子をすぐに小悪魔たちの所に連れてきてフレイムと対面させていた。
「とうさまー!! お母さんドラゴンはどうなるの?」
「そりゃー! 闇の谷の牢獄から、ドラゴンの谷へ帰してやるつもりだ!」
「この子たちもつれていっちゃうの? もう少しミーアはフレイムといっしょにこのおへやであそびたいよぉー!」
「わかった。わかった。お前らも一緒に連れて行ってやるから我慢しろ!!」
「え!? ちょっと? 魔王?」
何を考えているのか? 魔王は小悪魔たちに闇の谷の牢獄へ連れて行ってやると確かに言ったようで、ミーアとイーヴィルは両手を繋いでスキップをしながらクルクルと私の目の前ではしゃいで回って、キャッキャと声を上げて喜んでいた。
「ちょっと、魔王!! 本当に、この子たちも連れて行くの?」
「ああー! そうするつもりだ。あの真っ暗な闇の谷の牢獄を見たら、こいつらもきっとビビっちまって、悪さをしなくなるんじゃねえかな? 良い考えだろ?」
魔王は私を見てニヤリと笑って答えると、小悪魔たちを抱えて兵士たちも何人か引き連れて、ドラゴンを解放するために闇の谷の牢獄へ行ってしまった。私が城の外を眺めながら、溜め息を吐いていると後ろからクスクスと笑い声が聞こえて来たので、振り向くといつの間にかオースティンが立っていた。
「心配しなくても大丈夫ですよ! フフフ♪」
「ほんと、音も立てずに現れるのね。オースティン!」
「ワタクシが常に魔女たちに、魔王と子供たちを見張らせているのでごゆるりと
美乃里さまは鏡を眺めて、魔王と子供たちの様子を御覧になっていて下さい」
「ありがとう。こんな時に頼れるのはオースティンだけね」
私がまた大きく溜め息を吐くと、オースティンはクスクスと楽しそうに笑っていたので、私は嫌味のつもりでオースティンの顔をのぞき込んで、真っ直ぐ目を合わせてから耳元で言ってやった。
「魔王も結構なドSなんだけど……。あなたもかなりのドSなのね?」
「いえいえ、魔王には叶いませんよ! フフフフフ♪」
ところが、私にドSと言われてオースティンは口元をさらに上げて嬉しそうに笑っていた。
(魔王がドSだから側にいる側近たちもドSなんだわ……)
オースティンに嫌味が通じ無いことに脱力感を感じつつ、世話係に温かい紅茶を入れてもらって私はオースティンと長椅子に腰掛けて鏡に映し出された魔王と小悪魔たちの様子を部屋からまた見守ることにした。
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すでに、牢獄へ着いた魔王たちはドラゴンのいる牢屋へ向かっている所だった。ミーアもイーヴィルも真っ暗な牢獄の中が少し怖いのか? ピッタリと魔王に付いて大人しく歩いているようだった。そして、フレイムが時々口から炎を出してミーアの前を明るく照らすので、小悪魔たちは段々と怖さも和らいでいるようだった。
「あ。おかあさんドラゴンだよ!」
「ほんとだ! フレイム! おかあさんだよ!」
小悪魔たちがドラゴンの姿を見つけて叫ぶと、フレイムももう一匹のドラゴンも嬉しそうに母親ドラゴンに向かって鳴き声を上げていた。