第十話 ドラゴンと小悪魔たち その五
「かあさまただいまー!!」
「かあさまただいまー!!」
魔王に連れられて戻って来た小悪魔たちは、頬を真っ赤にして嬉しそうに私の部屋まで来て今日の出来事を身ぶり手ぶりで話していた。
「これがね。ちっちゃいドラゴンなのー♪」
「すごいでしょ? ちっちゃいけどドラゴンなんだよ!」
「ミーアとイーヴィルが二人で世話するの? 大丈夫?」
私が心配そうに小悪魔たちに聞くと、二人は大きく何度も頷くと籠に入れられた
ドラゴンの子を私の目の前に差し出していた。籠の中のドラゴンの子は本当に手のひらサイズで小さかった。
(こんなに小さいのに。あんなに大きくなるんだわ)
「ところで……。ドラゴンって何を食べるの?」
「奴らは何でも食うだろうな。牛でも馬でも人でも何でもな!!」
「どうしよう~! この子おなかすいてるみたいなのー!!」
「オレがなにかもらってきてやるよ! まっててミーア!!」
ちいさくてもやはり男の子はこういう時は行動力を発揮するようで、イーヴィルは走って調理場へ行くと小さい魔物たちに食べ物を籠いっぱいに貰って戻って来た。
ミーアが干し肉をドラゴンの子の口の前に差し出すと、ペロッと一口ですぐに平らげて次の干し肉を催促するようにバタバタと小さな翼を羽ばたいて、口をパクパクさせていた。
「オレ様はベルゼブブとオースティンと話があるからこいつらとしばらくこのちっこいやつをヨロシクな! へへへ」
「え~!? 私も一緒にこの子の面倒見てていいの?」
魔王にドラゴンの子をヨロシクと言われて、私が嬉しそうに確認すると魔王はニヤッと笑ってから急いで部屋を出て行ってしまった。
「かあさまー! この子ね。たべものぜ~んぶたべちゃったぁー♪」
「あれ? すこしおおきくなってない? ミーア?」
「何言ってんの? そんなに早く大きくならないでしょ? ん!?」
籠いっぱいの食べ物をあっという間に平らげたドラゴンの子を見て、イーヴィルがおかしなことを言ったので笑いながら見てみると、確かに……。心なしかさっきよりも大きくなっているように見える気がした。
「このままじゃ、あっという間に籠に入らなくなるわね」
私が少し考え事をしていると、小悪魔たちが声をあげて騒ぎ始めたのでドラゴンの子を見てみると、籠の中で口から小さな炎を出していた。
「かあさまー! どうするの? この子お口から火をすこし出してるよ!」
「うわぁーーーー! ミーア! カゴがもえてるぅー! アチチチー!」
小さい炎でもやはり赤いドラゴンの子は炎のドラゴンと言われるだけあって、炎の威力はやはり凄いようで、みるみるうちに籠の半分が焼け焦げて崩れてしまい灰になってしまっていた。