第九話 ドラゴンと小悪魔たち その四
「ちょっと……。オースティン。あれ、さっきのドラゴンの子供じゃない?」
「うーん。そのようですねー。あのドラゴンはあの岩山を巣にして子供を育てていたようですね」
ミーアが抱えているドラゴンの子供を、鏡越しに見て私はオースティンに魔王たちが捕らえたドラゴンと子供のドラゴンがこれからどうなってしまうのかを聞いていた。
「それにしてもおかしいな……。なんで、アイツはここで暴れていたんだ?」
「父さまーーー! われたたまごのからが、もうひとつあったー!!」
「でもね~。父さま~! ドラゴンはコイツしかいないよー!」
ドラゴンが暴れていた理由が子供のドラゴンを何者かに奪われたせいだと、すぐに魔王は気付いたようで、念の為にもう一匹の子供のドラゴンを兵士たちに探し出すようにすぐに命令していた。
「きっと、あのドラゴンは子供を守るために暴れていたのですから、魔王もきっと今回は穏便に済まされるに違いありません」
「だったら良いんだけどね。それにしても、もう一匹の子供はどこへ行ったんだろう?」
同じ子を持つ母親として、いなくなったもう一匹のドラゴンの子供が私は気になって仕方がなかった。
「父さまーーー! ミーア。この子をおしろへつれてかえりたい!」
「オレもーーー! 父さまーーー! おねがい!」
「しょーがねえなぁー! もう一匹が見つかるまでだぞ! 二人で絶対に世話しろよ!」
ミーアが目にいっぱい涙をためて魔王にお願いすると、魔王は私にも絶対に見せたことのないあまーい顔をして、ニィっと笑うとミーアを抱えて頭を優しく撫でてやっていた。
「それじゃ~! 引き上げるぞ!!」
「はーーーーい!!」
「はーーーーい!!」
魔王は小悪魔たちを抱えて魔獣に飛び乗り、先に城へ戻ると兵士に告げて飛び立っていた。
「オースティン! あなたになら見つけられるんでしょ? 連れ去られたもう一匹の子供のドラゴンのこと」
「そうですね~。すでに二人の魔女たちが手がかりを見つけたようです。フフフ♪」
オースティンは鏡に向かって手に持っている杖をかざしていた。
そこには知らない魔物が、籠の中に閉じ込めたドラゴンの子供を誰にも見つからないように急いで何処かへ運んでいる様子が映し出されていた。
「こいつら何者なの? 私。知らないわ」
「恐らくこの者たちは、サタナキアの部下たちですね」
鏡に映った魔物たちを見て、オースティンがサタナキアの名前を口にした瞬間に私は過去のあの出来事を思い出していた。
「嘘でしょ? サタナキアって私が以前……。城を出た時にお世話になった街の側にあるお城の城主じゃない!?」
「ご存知だったのですね。最近、ベルゼブブがサタナキアがおかしな動きをしていると危惧して、常にあの街の者たちから情報を得ていると聞いています。しかし、ドラゴンを使って何をしようとしているんでしょう? 困ったお方ですね」
しかし、オースティンはクスクスと楽しそうに笑っていた。笑っていたけど、私には絶対に一人で余計なことをしないようにと、念を押してから部屋を出て行ってしまった。