プロローグ 『小悪魔たちの朝の光景』
「お待ち下さい!! ミーアさま! イーヴィルさまーーーー!!」
「やだ~~~~!!(笑)」
「やだ~~~~!!(笑)」
今朝も乳母の叫び声で目が覚めた私は起き上がって大きな溜め息をついていた。
(ほんっとに! あの双子の小悪魔たちったら……。あれだけ叱っても。毎朝、決まって乳母達を困らせてはしゃぎ回ってるんだから! 本当に私のこのお腹の中から出て来たんだか、マジで疑いたくなるよ~~!!)
睡眠を妨げられた私が、イラッとしてそんなことを考えている間にも。キャッキャとはしゃぎ回る双子の娘のミーアと息子のイーヴィルの甲高い声と、その小悪魔たちを必死に追いかけている乳母と世話係の息を切らした叫び声が、部屋の前の廊下を何度も行ったり来たりしていた。
生まれて半年で、人間の五歳児位にまで成長している小悪魔たちは日に日に乳母たちには、手に負えなくなっているようで世話係たちも苦労しているようだった。私が鏡の前で身なりを整えて、ゆっくりと部屋のドアを開けて少し冷たい目で廊下の真ん中に立って、小悪魔たちを黙ってジッと見下ろして右手の人差し指に赤いビー玉位の大きさの魔力の玉を出してニヤリと笑って立っていると。それを見た小悪魔たちは、途端に凍りついたように動かなくなり手を顔の前でバタバタさせて口をパクパクさせていた。
「オイオイ! それ位にしといてやれって! こいつらも魔力で乳母たちを傷つけなくなっただけでも進歩だろ? それにガキってやつは、はしゃぎ回って育つもんだ。へへへ」
「もう~! 魔王は少しあの子たちに甘すぎでしょ? 毎朝、同じことで乳母たちを困らせてはしゃぎ回ってるんだからね。そろそろ、魔王がガツンと叱ってくれないと……。また、私が叱ることになるんだからね!」
魔王はヘラヘラと笑いながら、私の片手にある魔力の赤い玉を自分の魔力で相殺してから、イラついている私の腰へ腕を回してちょっと乱暴に自分の方へ抱き寄せて優しくハグして私の怒りを静めようとしていた。
「やっぱとうさますごいねー! かあさまのあかい玉をけしちゃったぁー♪」
「ハハハ! 当たり前だ! オレ様は魔王さまだぞ~! お前らよく聞け! 魔王さまの言うことを聞かない悪い小悪魔はな! まとめて闇の底の牢屋へ放り込むんだぞ! だから、悪さも程々にしとけ! わかったか?」
口ではこんなことを言ってる魔王だけど、目をキラキラさせて駆け寄って来たミーアを魔王は片手で抱き上げて、軽く頬を引っ張ってからおでこにおでこをつけてそして頬擦りしてケラケラと笑っていた。
「さっきのはすこし、あさのじゅんびうんどうってやつだよ! だれもキズつけたりしてないよ!」
「そうだよね~! あさのうんどうなの。かあさまもとうさまもおこっちゃやだぁー!」
小悪魔たちは瞳をウルウルさせて、私と魔王を交互に見つめながら許しを乞うと魔王が私の肩に手を回してガハガハと笑っていた。
「もう怒ってねえよ! それよりさっさと着替えて朝飯食って来い。早く行けっ!!」
「はーーーい!」
「はーーーい!」
魔王に一喝されて小悪魔たちは仲良く手をあげて元気良く返事をしてから、またキャッキャと甲高い声を上げてはしゃぎながら乳母と世話係の所へ戻って行った。
読了ありがとうございますm(__)m♪
冒頭の双子のイラストは私の良き協力者♡
マダラ画伯さまからいただきました♫