願いと服達
そこは寒くて、悲しくて、辛かった。
光の届かない場所、自分がナニモノなのかも分からない。
光の元、ソトと言う物を見てみたい。
暖の元、温かいココアと言う物を飲んでみたい。
家族の元、オカアサンと言う人に会ってみたい。
ーーー楽に、なりたい。
あ、まただ。
また白い人達が自分を何処かへ連れて行く。
嫌だよ、あそこは痛いんだ。
やめて、もう痛いのは嫌だよ。
冷たくて痛い視線もヤダ。
ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ………
ぁあ"あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!
痛くて、気が付いたらまた元の部屋。
ここも寒いけど、あの痛みに比べたらマシなのかも。
それに、あの白い人達もいないから冷たい視線を浴びる事もない。
いつか、オネエチャンが話してくれた勇者と魔王のお話。
沢山の人を勇者は救ったって言ってたけど、自分の所には来ないのかな。
来てほしいな、そして自分を助け出してくれないかな。
何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もそんな想像をした。
けどいつまで経っても、あの白い人達しか来ないんだ。
何だか寂しくて、余計に寒くなってきた。
膝を抱えて出来るだけ丸くなるけど、まだ寒いや。
そう言えば、オネエチャンやオニイサンが前寒いって言った時に何かを被せてくれたっけ?
あれは確か布だったよね。
何処かに布ないかな?
えーっと、えーっと……あ、あった。
あ、これオネエチャンの服だ。
自分と同じボロボロの茶色の服。
これがあるって事は帰って来てないのかな?
自分と同じ時に連れて行かれた筈だけど……
他にも帰って来てない人いるけど大丈夫かな?
ずっと前に遊びを教えてくれたオジサンやオニイサンもこんな風に服を置いて行った。
どうして帰って来ないんだろう?
前はこの部屋にも人がいたのに、どんどん減ってく。
今じゃ自分一人。
ダメ、寒いや。
考えても、難しい事は自分には分からない。
取り敢えず、この服を巻き付けて寝よう。
起きた後、これが夢だったらって思うんだ。
本当はあの怖い事は全部夢で、朝起きたらご飯のいい匂いがするんだ。
それで、オカアサンにお早うって言って、笑って。
けど起きてもこれは現実だった。
白い人達に出されたパサパサのパンと冷たいスープ。
食べたら余計にお腹が冷えて寒くなるけど、お腹が空いて仕方がないから食べるしかない。
早く食べないと回収されるからなぁ。
そう考えてると、コツコツと足音が聞こえて来た。
あ、もう来ちゃったよ。
「おい、09。それ食ったら実験だ」
お皿を回収しに来たヒゲの生えた男の人の後ろには、沢山の白い人。
ギョロッとした目が冷たくこっちを見つけて、ううん、睨んでくる。
そして、そのまた後ろの人がジャラジャラした首輪をギョロ目の人に渡した。
それ、嫌いなんだ。着けないで。
ジャラジャラジャラジャラ。
首にまるで犬のように首輪が着けられる。
「よし、実験室A-2へ連れて行け」
首がガクンって引っ張られた。
痛い、痛いよぉ!
分かったよ、立つから引っ張らないで!
急に立つと痛いからゆっくりと立ち上がると、ギョロ目の人は満足気に頷いて部屋の扉を開ける。
あぁ、またあそこに連れて行かれるんだ………。
誰か、お願いだよ。
「ハヤク、ラクニシテ………」
評価、感想等お待ちしております(*^^*)
H26.5.1/書き直しました。