ラッキーナンバー
※87は素数ではなかったため、訂正しました。
日曜日。
本来なら休日で、私はごろごろしているのが予定であった。
テレビをつけてみると、今日は日本代表の試合がここから一駅か二駅先の巨大なスポーツ施設で行われるらしい。
(よりにもよって今日やらなくてもいいだろ・・・電車内が混むじゃないか)
ごろごろできない理由は単純で、これから出勤をしなければならないためである。
休日出勤というやつだ。重大な会議をするらしい。
これからの会社の立ち位置を決める節目となる今日。私は自転車で通勤を始めた。
十分後、駅に到着。
(さあ、ここからが本番だ。)
自転車置き場には自転車を収納するスペースに1から100までのナンバーが振られている。
わたしはこの中から最も縁起のいいナンバーを選択しなければならない。
まず4と9。言うまでもなくアウトだ。番号に4と9が付いているナンバーを除外する。
これだけでは安心できないため、4と9の倍数も除外。
次に素数だ。素数は1と自分以外割り切れない頑固な数。
個性があるといえば聞こえはいいが、私はマイナーにはなりたくない。故に除外。
1という番号も、ナンバー1の重圧はすごいだろうので除外。(だが、あくまで除外するのは1というナンバーのみである)
さて、この時点で、100個あったナンバーは27個にまで減った。
ここから第二次選考に入ろう。こじつけも入るだろうがこれはいたしかたないのだ。
まず奇妙な数である奇数。偶然の数である偶数よりイメージ的によろしくない。故に除外。
これで14個。
語呂合わせも考えてみる。
6・・無。重大な会議が無に。だめだ。
10・・自由。いいな、採用候補にしよう。
22・・2×2=死。却下。
待てよ、それだと今残っている10、30、50、70も掛け合わせれば0になってしまう。
・・・熟考の末、私は泣く泣く自由を手放すことにした。これで残り8個となった。
第二次選考は続く。
26・・ジロッ。上司に睨まれる私を連想させる。却下。
38・・サンバ。よくわからないので保留。
58・・ゴーヤ。私の苦い顔が想像される。駄目だ。
62・・無に。私はナンバー62を無にした。
66・・ムムッ。我が社の粉飾決算への大衆の疑念を想像させる。没。
78・・菜っ葉。だからどうした。
82・・罰。除外。
86・・野郎。先日私から財布をかっさらった親父狩りを思わせ忌々しい。没。
こうして38と78という2つの候補が決定した。
しかし、私の頭の中には自由への想いがあった。
10を敗者復活させてやってもよいのではないか・・
30と50と70が不満をぐちぐち述べている気がしたが、お前らと10とでは格が違うのだ。
こうして頂点に立つ三つの候補が決定した。
決勝戦。
十の位と一の位を入れ替えても縁起のいいナンバーかという耐久実験を行う。
まずは38。逆にすれば83。確か素数ということで除外されていたナンバーだ。
83は発散。会議の内容がまとまらずに発散していくビジョンが浮かぶ・・・
これは、優勝は厳しそうだ。
次に78。逆にすれば87。これは確かに素数ではない。
しかし、87は嫌な。会議に漂う重苦しい雰囲気だろうか。
もう、優勝はあれで決まりだろう。
そしてやってきました。地獄のナンバーウォーズから蘇った奇跡のナンバー10。
逆にすれば・・・01。
ナンバトル(NUMBATTLE)公式裁定(代表者は私だ)では十の位が0の場合、取り除かれるルールだ。
つまり1。大衆に認められる栄光と、自分と渡り合える者がいない孤独を同時に背負う頂点の数。
私は怖かった。はたしてナンバー1による孤独に耐えられるのか。
・・・そうだナンバー1でなくオンリー1になればいいじゃないか。
ふと私の頭によぎりはじめた言葉。オンリー1。
自由にオンリー1を目指す。何という理想的な人生の軌跡だろう。
私はようやく前進をすることができそうだ。
私はナンバー10の自転車置き場に向かった。
そこで衝撃的な光景を見た。
・・・自転車が、置かれている。
普段はガラガラの自転車置き場に、大量の自転車が置かれている。
(日本代表の試合・・・!!まさか試合観戦に行くために・・・)
私は自身を呪った。こんなことをしている暇があるのなら、早いところスペースを探せばよかったのだ。
災難はまだまだ続く。
死神の宣告が聞こえたのだ。
死神「電車が参ります。ご注意ください」
(まずいまずいまずい、あの電車に乗り遅れたら、遅刻する!!)
私はパニくった。自転車を入れようにもスペースがない。
結局私は第一次予選で切ったナンバー63に自転車を入れて、駅に向かう。
63は十の位と一の位を足せば9、
なおかつ7×9と、七つの苦しみ・・七つの大罪を思わせるような番号で、
私も常日頃、あのナンバーだけは敬遠していた。
しかし、致し方あるまい。いつまでも数如きに縛られるわけにもいかない。
自由もオンリー1もあってたまるか。サンバも菜っ葉もありゃしないのだから。
私は走った。走りに走った。
結果は言うまでもなく、63であった。
占いののめり込み過ぎには注意しましょう。