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悪霊が精霊になるとき  作者: 旬麗
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7.マイナスの心

拓斗さんと話をしてから、一週間がたった。

トーヤの寂しさを聞いて、幸せな霊になってもらうための手段をいろいろ考えていたが、結論がでないままこの日まで来てしまった。


“やっぱり トーヤに会わないと。話ししないとなぁ”


そう思い、凪にお願いし【ikoi】に来ている。


「今日は、カウンターではなく、テーブル席でお願いね」


ikoiに入ると、拓斗さんと凪に伝える。


「凪は、暇だろうからカウンターで拓斗さんと話してていいよ。

私は、トーヤを呼び出して話をするし、時間がかかるから。」


「了解♪」


そういうと、凪はカウンター席に行き、私はテーブル席に着く。


「いらっしゃい。灯さん。今日は何を飲みますか?」


「今日はコーヒーかな?おすすめコーヒーでお願いします。

それと、拓斗さんに憑いているトーヤとの話し合いに今日は来ました。

トーヤの情報が少なくて。話を聞いて新たな情報が出たら、伝えますから。」


そう伝えると


「ええ。」


と軽く頷き、カウンターに戻っていく拓斗さんを目で追いかける。

しばらく、トーヤとの会話を始める前に・・・と聞きたい情報について整理し始める。


コトッ


うん?と音のしたほうに顔を向ければ、コーヒーのいい香りとともに拓斗さんがいた。



「どうぞ。」


「ありがとうございます。」


「無理しないようにお願いします。」


穏やかに微笑まれ、私もその笑顔に笑顔で返事をする。

コーヒーを一口飲み、頷けば拓斗さんは背を向けカウンターに戻ろうとしている。

その後姿を見つめつつ、トーヤに話しかける。


『トーヤ!姿を見せて!』


穏やかに話しかけると、目の前にトーヤが現れる。

足までしっかり見える、普通の人間と全く同じ姿のトーヤが現れる。

“これじゃあね~、霊とわかんないよね?人間と理解したのもわかるわ”


『トーヤ!トーヤ自身の事について知りたいの。情報を教えて。

どうしてトーヤが寂しい感情を抱くようになったのか?何をこの世に未練を残してしまったのか?

知らないことが多いから、トーヤを救えない!

救うためには、トーヤの事を知りたい。』


『俺の何を知りたい?』


『まずは、その寂しさの理由』


『俺にもなぜ、こんなに心が寂しいのかよくわからないんだ。』



『どういう事??』


『寂しい思いを抱くようになったことがあったはずなんだが、記憶が曖昧で』


『今の俺にあるのは、寂しさ、悲しみ、辛さしかない!!』


トーヤの顔つきが段々歪んだものになっていく。

短髪の黒髪に、大きい口。その口をニヤッと片方口角をあげている。

そのままでいれば、ちょっと影はあるけど、イケメン風でもてる姿なのにね。

なんて、どうでもいいことを考えてしまう。


『じゃあ、その悲しみはどうして持ってるの?』


『わからない』


『いつから抱いてるの?』


『わからない。ただ言えるのは、ずーっと前からだ』


『わからないことだらけだね。』


そういうとトーヤの目を見つめ、じーっとトーヤの言いたいことを読もうとした。しかし、何も伝わってこない。トーヤの言うとおり、負の感情しかないのだ。


『じゃあ、トーヤ辛いのはどうして?トーヤの人生に何があったの?』


『どうして辛いか・・・。小さいころから何かがあったらしい。』


『記憶がないの?しゃべりたくないだけ?どっち??』


『寂しいも、悲しいも、辛いもどうしてこの感情しかないのかわからない…』


コーヒーを飲み飲み考える。

トーヤは世の中の嫌な面を見てきているはず。


『トーヤの死因って交通事故・・・』


ポツリと呟いてみれば、トーヤは驚いた顔をする。


『話して!トーヤ。私は苦しめたくてトーヤに近づいたんじゃない。トーヤに幸せになってもらいたいんだ。私のところにいる霊のように。』


『お前のとこには、たくさんいるのか?』


『全部で5人だよ。トーヤみたいな霊だったんだよね。迷える霊だったから、昇天させようと近づいたんだよ。だけど、昇天させたはずが、なぜか昇天を拒んだらしく・・・。

今は、精霊となり同居中。』


そんな話をしていると、同居中の祐、伶、歩生、彩加、琴音が私を取り囲むように現れる。

楽しそうに笑顔を堪えながら・・・。


『そいつらが、そうなのか?』


『そうだよ。』


トーヤは突然話し始める。


『俺は、16歳で交通事故でこの世を去ったはずなんだ。一人で夜道を歩いているときに、突然俺をめがけて車が突っ込んできた。即死だった。

気が付いたら、俺は灰にされていた。親戚は居たが、みんな俺とはかかわりも持ちたくなかった奴らだったからな?

一番の年上のおじさんが全てひとりでやった。参列してくれるものは一人として居なかった。』


『トーヤの人生には、隠された何かがあるみたいだね。トーヤの生まれから、探る必要があるかも。

・・・トーヤはどういう字を書く?苗字は?

トーヤの幸せを願って、そのマイナスの心をプラスにするから!協力して!!』


頷きながら、教えてくれる。

頭の中にある文字が浮かぶ。


『長谷川 斗哉』


がさこそとバックからノートとペンを出し、書き始める。


“長谷川 斗哉  敷産院 クローバー児童院 榎元 ”


トーヤにかかわりがあった名前などが、ペンを持つとペンが勝手に動き出し、書き始める。

今日の収穫はこんなところか・・・


『ありがとうトーヤ!その冷え切った心を溶かせるように頑張るからね。』


お礼を言うと、トーヤは消える。そして光稀さんがこちらを向いてお辞儀をする。


『灯さん、ありがとう。あれから、拓斗は自分の力を認識したようですよ?凪さんと一緒にいるときは、声を掛けられた相手が人であるのか、霊であるのか見るために目で凪さんに合図を送るんですよ。凪さんが頷けば“人”首を振れば“霊”と分けていましたよ。見ていて微笑ましい光景です。拓斗も外を歩くときは、灯さんみたいに防護の伊達メガネが必要になっていくかもしれませんね?

霊だという事ならば、拓斗はどんなに話しかけられても、返事はしないんです。まだまだ拓斗はこれからです。

そういう悪霊たちとの関わり方も、灯さんにお願いしたいのです。お願いしても大丈夫ですか?』


『ええ。もちろんです。関わり合いを持ったんですから。』


『本当は、私の姿が拓斗にも見えるならば直接会話をするのですが・・・。拓斗の力が安定すれば、会話もできるようになるので、それまでの期間です。』


『この件が解決すれば拓斗さんにも光稀さんと会話できる能力が持てると思いますよ。』


光稀さんに笑顔を向ければ、また深々とお辞儀をしてくれた。

荷物を持つと、カウンターにいる凪に近づき


「話おわったよ。」


こっそり伝える。


「拓斗さん、今度は甘いカフェオレね。」


凪の隣の席に腰掛ける。

しばらくして、カフェオレが運ばれてきた。

周りを見ると、お客さんがいなくなっている。


「今回は、きちんとした情報じゃないんです。断片的な情報で。

トーヤがあんなに寂しさ、悲しさ、辛さを抱えているとは思いませんでした。

だからこそ、この世に未練を残したのでしょうが・・・。トーヤに心を向けて覗いてみたんだけど、トーヤが自分でもどうしてこの感情しか持ってないのかわからないといっていたとおりほかの事が全然わからないのです。

結局はトーヤの名前を聞きだしただけです。」


そう伝え、さっきのノートを取り出す。


「長谷川 斗哉っていうんだ?あれっ??どっかで聞いた名前かもしれないな?見覚えがある、この名前・・・。」


「生きていれば二十歳だよ。死んだのは4年前。16歳で交通事故に遭って死んでいる。」


「どこかで、僕とつながりがあるのかもしれません。だから、僕のところに現れたとか・・・」


「それが、トーヤ自身が何もかもわかっていないので、しばらくはトーヤから聞き出したこれらの情報を元に、動くしかできない。

時間があるときに、これらのキーワードをもとに動いてみます。

それから、光稀さんにも声を掛けられましたよ。

体質・・・認めてくれたんですね?ありがとうございます。」


「まだ、怖いことばかりです。どうしたらいいのかわからないことだらけです。

実際霊なのか、人なのかの区別もできません。でも、凪がいるから・・・。凪が判断してくれるから。

不安でも、怖くてもやっていかなきゃと思います。」


「凪の協力なしには、やっていけないね。」


「私は、灯がいるから。灯が私に勇気をくれるんだよ。ここで立ち止まってはいけない!と強く思ったんだよ?

灯が私たちが幸せになってと願うように、私も灯に幸せになってほしい。

灯が大変な世界を生きてきたその一部でも、私が理解してあげたい。言いずらい話を私にしてくたんだから、私も返さなきゃね?私たち親友でしょ。」


軽くウインクして話してくれる。まじめな話をするときに、照れてしまう凪のかわいらしさ。


「だからね?灯。

トーヤの調べものするときは、私もいっしょだよ?一人で行ったら、ダメだよ。必ず私がついていくから。拓斗さんもお店が休みの時にはついて行ってくれるって話してくれているから。」


「ありがとう・・・」


親友・・・初めて言われたな。この一言にこんなに愛情が込められるんだ。

トーヤにも教えてあげたい。

温かい心をあげたい。

もう、いまはトーヤのことしか頭にない灯であった。




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