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悪霊が精霊になるとき  作者: 旬麗
3/19

3.秘密

灯の手を引いて、自分のアパートに戻ってきた。築15年というちょっと古い建物のアパートだが、外壁は手入れがされていて、それほど古くは見えない。凪の手を離し、私は2階の自分の住むアパートの玄関に歩を進める。2階の202号室。ここが私の部屋だ。

初めて、他人を入れる住処だ。


「どうぞ。」


凪に入るように促すと


「お邪魔します。」


といい、ミュールを脱ぐ。


「適当なところにどうぞ?」


部屋は1LDKの間取り。リビングには、小さなテーブルとその下には、ラグが引いてある。壁づたいに、パソコンデスク・本棚とおいてあるが、かなり荷物は少ない方。台所には小さな冷蔵庫とカラーボックスにがあり、そのカラーボックスが食器棚の役割を果たしてくれている。

私は、部屋に入るとキッチンに直行!やかんにお湯を沸かし緑茶を淹れる。Cafeでは、甘いものを飲む割に、自宅に帰ったら、一番に飲むのがこの緑茶だ。緑茶は気持ちを穏やかにしてくれる飲み物。確か、凪も好きだと言っていたっけ?なんて考えながら、準備をする。


「緑茶だよ。」


コトっとテーブルに湯呑を置くと、ぐるりと部屋を見回していた。


「灯って一人暮らしだったの?」


驚いた顔で質問される。


「そうだよ。凪にも私の事話したことなかったもんね。いま、順を追って説明するから。話が長くなるけど、家のほうは大丈夫?電話かけたほうがいいかもね!遅くなって心配されても困るし。」


今の時間は夕方の4:00を指している。しかし、話が終わるころには夜になっているはず。凪には電話をしておくように話し、私はキッチンに戻り冷蔵庫の中身を確認。簡単な夕飯を作れるか確認しておく。大丈夫そうだ。これなら、途中でおなかが空いても、夕飯を食べながら話をすることができる。ほっと胸をなでおろす。後ろを振り返ると、凪も電話が終わったようで、携帯電話を片手にこちらを向いていた。


「さてと、話しを始めますか?」


「うん。」


灯の向かい側に腰を下ろし、話を始める。


『まず、最初に・・。一人暮らしは長くて高校生の時から親とは別居してるんだ。だから、7年かな?でも住まいは変えることもあって、ここには大学に入るときに越してきたの。だから、まだ一年しかここには住んでいないんだ。

さて、本題に入るよ。ちょっと驚くこともあるけど、聞いてね。

私は、小さな頃から、俗にいう霊とかが見える体質で、よくその霊と話をしている変な子供だったの。だから、私には友達がいなかった。はたから見たら、ずっと独り言を話してるんだよ?おかしな子供だと認識されれば、近づいてくる子供はいなかったよ。

そんな私を見て、両親は私との接触を拒んだの。私には幸い弟がいてね、両親はその弟をかわいがった。弟はそんな両親をみて、私とは扱いが違うことにずいぶん戸惑ったらしいけど、そのうち納得してくれた。弟も、両親も私のこの変な能力?は持ち合わせていなかったんだよ。

子供のころは、霊と話ができるだけだったけど、大きくなるにつれてまた、新たな力も出てくるようになった。小学2年のころには、夢で今日起こる出来事を、見させられるようになり、嫌な夢だと一日中部屋に篭っていたかったけど、さすがにそういうわけにも行かず・・・ね。

そのうち、夢だけだったのが、その人を眺めているうちに・・・例えば明日、大きなけがするとか・・・が見えてくるようになって』


「え??」


凪は動揺し始めた。


「凪は聞きたくなかった?こんな私を軽蔑する?」


「そんなことない。友達だもん。・・・ひょっとすると灯・・・拓斗さん・・・」


「待って!最後まで聞いて。きちんと説明するから」


『それで、その力はますます強くなるばかりで。どうしたらいいのか毎日考えていた。

そうしたある日、祖母が我が家にやってきて一冊の本を手渡したの。読んでみると、どうやら佐山家には何十年かに一度そういう特殊能力を持つ子供が生まれるらしい。

祖母も両親から私のことを聞いてなかったから、私に特殊能力があることが分からなかったことを言うと、“つらい思いさせた”と泣かれてね。その本を見れば、その力のコントロールの仕方がわかるといわれて、帰って言ったの。

祖母が帰ってから、読んでみると確かに私の能力について詳しく書かれてあった。そして、今後人の未来を予言できるようになることも。災いを避ける力を持てることも。

そして、災いを避けることができるようになったら、家族と離れて暮らさなければならないこともかいてあったの。一緒に住んでいると、家族に災いがいってしまうらしいの。

私の力は小学6年の時にその本の通りの力が出せるようになったから、祖母・両親と相談して、別居する形をとった。両親も私のことも気になるらしいけど、たまに祖母にあって近況報告してるから、そんなに心配はしてないらしいよ。

最近では、名前を聞いたりするだけで、その人の容姿や状況までわかるようになってしまって。

拓斗さんに近い将来に災いが降りかかることが見えてしまって。凪の協力が必要なんだよ。』


ここまで話して、時計を見ると時刻は6:00を示していた。もう2時間だ。


「凪、おなか空かない?あとは、ご飯食べながら話そう!」


そういうと、私は冷蔵庫に手をかけ、おととい作りすぎたハンバーグを温める。その間にサラダの準備もする。凪は、ぼーっとしている。


「私の事、受け入れられない?」


「そんなことないよ?いろいろ大変だったんだなと思って。」


凪がにっこりと笑ってくれた。


「灯。いい臭いがする。今日の夕飯・・・」


「この前作ったハンバーグなんだけど、食べて!いま、サラダ用意するから。」


「灯って自炊もするんだね。なんか、驚かされることばっかりだよ。でも、話してくれてありがとう。うれしかった。灯の事が、もっと好きになったよ。」


二人で顔を見合わせると笑いあう。私も肩の力が抜け、久しぶりに笑ったと思うと考えていると、凪のおなかが鳴った。


「早く食べようか?」


テーブルにおかずやご飯を並べ、顔を見合わせながらいただきます!というと食べ始めた。



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