番外編~賑やかに~
今日は、城山家の次男・長女の運動会。グランドのあちこちには若い両親たちと、祖父・祖母と思われる人たちが集まっている。
シートを広げ、見物席を確保する姿が見られる。
その一角に、大きなシートを広げている家族の姿が・・・。
周りの人たちの倍はあろうであるシートを広げている。
「お呼ばれありがとうございます。」
そういって、挨拶をする顔ぶれ。
言わずと知れた、あのメンバーだ。
灯、拓斗、凪、珂李、蒼人、りん。
このメンバーは、すでに城山家の一員となったように大きな学校行事には必ずと言っていいほど呼ばれるようになっていた。
「あなたたちは、斗哉のお友達だし、恩人?だから。」
と美華は言う。『斗哉の心の闇を救った恩人』という位置づけなのだ。
「時間を見て、古田さんたちも見に来てくれると言ってました。」
りんが美華と翔哉に伝える。
翔哉は、ビデオカメラを片手に、撮影の準備に取り掛かっている。
「賑やかな運動会になりそうで、嬉しいよ。子供たちもみんな楽しみにしていたよ。」
翔哉の隣では、城山家の長男斗夢が、デジタルカメラをいじっている。
「僕は、中学だから弟たちの写真を撮る係りなんだ。」
嬉しそうににっこりと笑う斗夢。どことなくトーヤの面影が見え隠れする。
「母さんに、写真を頼むと上手く撮れてないことが多くて。
こういう時は、僕の出番なんだ。」
視線の先で、美華が照れ笑いをしている。
「さてと、斗夢いくぞ!」
翔哉が斗夢を連れ、撮影隊の間に入っていった。
「私たちは、ここでゆっくり運動会の観覧しましょ?」
みんなで、シートの上に座りプログラムの確認をする。
最初は、清哉のかけっこから。足が速いらしく1位でゴール。
みんなで、手を叩いて喜んでいるとトーヤの声が・・・。
『当たり前だ。俺の弟なんだからな?』
嬉しそうな顔をして、ぶっきらぼうに話すトーヤが。トーヤを見て、灯が笑う。
「トーヤがいるよ?清哉君が早いのは当たり前だって言いながら、喜んでる。
多分・・・・運動会の最中ここに居るはずだよ?
お兄ちゃんに見てもらって、清哉君もはるちゃんもよかったね。」
灯がみんなに向けて話す。みんなは、その言葉に頷く。そしてまた、グランドに目を向ける。
低学年のダンスに、はるは参加。
そのあと、はるのかけっこ。
スタートは、最後だったけど、見る間にごぼう抜き。
気がつけば、1位でゴールをしていた。
おひるごはんとなり、清哉とはるは、みんなのところに戻ってきた。
はるは、嬉しそうに灯を目指して走ってくる。
「灯おねぇちゃん!!見ててくれた?はる、1位とれたんだよ?」
実は、はるは運動会が行なわれる1か月前からかけっこの練習をしていた。
どうしたら、早く走れるのか?
たまたま、城山家に遊びに行った際に部活動の思い出話に花が咲き・・・。
灯が元陸上部で、長距離選手だったことを聞いたはる。
すぐに、灯に特訓をお願いし、翌日から短時間での練習をしてきた。
腕の振り方、足の持ち上げ方、スタートのタイミング・・・・。
練習しているうちに、早く走れるようになり、今日の運動会を迎えたのである。
「はる、おめでとう!ちゃんと見ていたよ。1位をとれた気分はどう?」
「嬉しい!最高!」
満面の笑みのはるを中心に賑やかな昼食タイム。
そこに、古田夫婦も加わりさらに、賑やかな昼食タイムとなった。
「トーヤが、生きていたらな、もっと楽しかっただろうに・・・」
ぽつりとつぶやいた、純平の言葉を灯が拾う。
「トーヤは、一緒にここにいますから。トーヤも楽しんでいますよ?」
「斗哉が生きていた証が、ここにあるのね?
斗哉を大事にしてくれた人が、こんなにいる・・・
亡くなっても、大切な息子だわ。
そして、大切な息子が運んでくれた友達がここにいる。
とっても嬉しいことよ?」
美華が、思いをそのままに口にする。
「もう、我が家は大家族だな?」
翔哉が笑う。みんなが、青空に向けて笑い声を立てた。
そこには、大好きな笑顔で笑っているトーヤがみんなの目に見えた。




