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悪霊が精霊になるとき  作者: 旬麗
18/19

番外編~美華の大切なヒ・ト~

看護師、河田と美華が20年ぶりに会う話です。

美華の住んでたあのアパートは現存しているんでしょうか?


思い出の土地に足を踏み入れた美華。

河田とはどんな話をするんでしょう??

季節は、クリスマス。

明後日には、トーヤを交えて知り合った面々とのクリスマス・パーティの予定。

今年は、家族だけのクリスマスはなく、大所帯でのクリスマス・パーティのみとなる予定だ。


そんな時期に美華は1人駅前で、花束を抱えて大切な人を待っていた。


「・・・かわってないかなぁ?私って、分かってくれるかなぁ?・・・」


小さい声で思わずつぶやいてしまう美華。

空を見上げると、雪が舞い降りてくる。


「今日は、寒いと思ったら・・・」


美華は、白いコートの胸元を片手でぎゅっと握りしめる。

すると、突然女性が目の前に。


「美華ちゃん?」


「・・・はい・・・」


返事が終わるか終らないかのうちに体を強く抱きしめられた。花束が、足元に落ちる。


「美華ちゃんよね?美華ちゃん・・・。」


涙声が聞こえてくる。しばらく抱きしめられたままだったが、啜り声と共に抱きしめられた手が解かれる。


「会いたかった。」


顔を上げてよく見れば、それは思った通りの人・・・河田だった。

足元の花束を拾い上げ、美華は手渡す。


「お母さん・・・これ、プレゼントです。

・・・あの、何がいいか分からなくて。イメージでアレンジしてもらいました。」


「私は、美華ちゃん!あなたに会えるのが最高のプレゼントなのに。」


瞳を潤ませながら、美華に笑顔で話す河田。


「ここだと、目立ってしまうみたいね?

場所を移動しましょう。

早速だけど、私の家へ案内するわ。」



河田はそういうと、歩き出す。


「あれから、この街には来たことあるの?」


「ないんです。久しぶりです。この街並みも変わりましたね?

でも、たまに見慣れた景色もあって。懐かしい気持ちもあります。」


「もっと、懐かしい気持ちにさせてあげるわ。」


河田はそういうと、口元を歪める。






河田の言うとおりに歩いていくと、よく知っている道にたどり着く。


「ここ・・・」


「そう。分かる?よく歩いたわよね?一緒に。あの時は4人だったけど。

あの時のアパート覚えてる?

1人で歩ける?記憶をたどって歩いてみて?」


そういって、美華に前を歩くように促す。美華も頷き歩き出す。

歩きなれた道は、体が覚えているようですんなりとあの思い出の場所・・・・

健斗と斗哉で住んでいたアパートにたどり着く。


「よく覚えていたわね?

まだ、ここあったんですね?」


「一度、取り壊しの話もあったんだけどね?

結局補強工事や内装などをして、取り壊しはしなかったの。

まだ、住めるのよ?思い出の部屋・・・見たくない??」


からかうように河田が美華を見る。


「見たい。今は、誰か住んでるの?」


河田が、何も言わずにアパートの階段を上りはじめ一番奥の部屋の前に立つ。

がちゃりと鍵を開け、扉を開けて美華を招き入れる。


「入って?」


「お邪魔します・・・」


そういって、足を踏み入れると・・・


「ふふ。驚いた?ここは、私の家なんだ。

いつでも、美華ちゃんたちが帰ってきていいようにもともと借りたんだけどね。

一度も帰ってきてくれないなんて。

寂しかったじゃない?

私は待っていたのよ?あなたを待っているには、ここに居るしかなかったし、他に方法がなくてね。」


「河田さん・・・・お母さん・・・ありがとう。」


美華が声を上げて泣き始める。


「まぁまぁ。泣き虫な娘ね?」


優しく河田が美華の背中をさする。優しく優しく・・・。


「あの手紙が、きちんとあなたに届いてよかったわ。あなたから電話を貰った時、息が止まるかと思ったくらい驚いたわ。

あなたが元気でいてくれてよかった。」


「ずっと、気にかけてくれてありがとうございます。

・・・斗哉もあのあと、一度も会えないまま亡くなった事実だけを知りました。

斗哉・・・。

信じられないかもしれないけど、亡くなった斗哉にも健斗さんにも一度だけ会えました。

斗哉は素敵な男性に育っていました。」


「少しはね・・・あの時来た3人に聞いて知ってるのよ?

斗哉君も健斗さんも亡くなっていること。

斗哉君が、悪さをしていたことも。」


「その、斗哉を中心にしていろんな知り合いができました。

たくさんの人に斗哉は愛されていたの。

今、私には家族がいるんです。

主人、息子が2人と娘が1人。家族は今日の事も、斗哉のことも知って・・・。

なのに、素直に受け入れてくれています。」


「わかったわ。美華ちゃん。

あなたの好きなミルクティー入れるから、待ってて。」


そういうと台所に消えていく河田。

しばらくすると、カップを持って、部屋に戻ってくる。


「懐かしいでしょ?

あなたたちの思い出の品もあるのよ?」


そういうと、小さな包みを取り出す。


「置き土産・・・」


優しく笑って、丁寧にその包みを開けると中から出てきたのは・・・。


「大事なものなのに。母として失格ね。」


そっと、手に乗せ見つめる美華。その手にあるものは、斗哉のへその緒と少しの髪の毛だった。


「あなたの息子のものよ。あなたと親子である証。

忘れていったことも知らなかったんでしょうね?

戻ってきたら、渡そうと思っていたのよ。もう、斗哉君はいないかもしれないけど、親子である証。

まぎれもなく、斗哉君はあなたの長男。」


「息子たちもお兄ちゃんに毎朝手を合わせてくれています。

いま、仏壇は我が家にあるんです。

斗哉が忘れられなくて、2人の息子には斗哉の文字を入れてしまいました。

それを知っていても、主人は文句も言わず・・・。」


「とても素敵なご主人なのね?」


「はい。」


「幸せなのね?」


「はい。」


「じゃぁ、母はあなたを素直にご主人に返せるわ。

あなたが、幸せでないのなら返すつもりもなかったけれど。

あなたの笑顔を見る限り、とても幸せそうで。

あの時の泣き顔が頭から離れずにいたんだけどね、いまはあなたの笑顔で上塗りされたわ。」


「ここでの生活は大変だったけれど、あの生活ができて私は嬉しかった。

ここにいると、昔に戻ったようです。

なのに・・・・

健斗さんも斗哉もいない・・・

時は流れているんだと実感させられます。」


「たまに、ここに来てもいいのよ?

・・・でも、ご主人に怒られるかしら?」


ぶんぶんと首を横に振る美華。


「いっておいでといってくれますよ?

そういう主人なんです。なんでも包み込んでしまう、優しい人・・・」


「子供たちはどんな子?」


「元気で明るいいい子たちですよ?

私よりみんなしっかりしていて・・・」


苦笑いをすると、河田が声を立てて笑う。


「なるほどねぇ。

なんか、美華ちゃんの家族にも会いたくなちゃうわね?」


「ええ。いつか必ず。」


そういうと、美華は口を閉じる。ミルクティーに口をつけると、20年前の過ごした日々に思いを馳せる。

そうしていると、河田に肩を叩かれる。

はっとして、現実に意識を戻す。


「美華ちゃん??

大丈夫?もう、あれから2時間も経っているわ。」


「いつの間に・・・。」


「また、思い出に浸りたいときには連絡くれれば、いつでも来ていいから。」


「ここには、小さい斗哉しかいないのですけど。

でも、一緒に過ごした斗哉と健斗さんに会えるような気がしてしまって。」


「また、娘と母になってもいいのかしら?」


美華が河田に尋ねる。


「もちろんよ。」


笑顔で別れた美華と河田。

もう、以前の悲しい思いはない。闇の中を走る車の中で、いつまでも河田の笑顔が脳裏に焼き付いていた。
















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