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悪霊が精霊になるとき  作者: 旬麗
17/19

番外編~トーヤの兄~

古田さん夫婦が出てきます。

古田さんから見てのトーヤは?

どんなトーヤだったのでしょう?

美華の家での1件があってから、トーヤの月命日にはそれぞれが好きな時間に城山家を訪れることが日課になった頃美華は重い腰を上げた。

やっと、行動を起こすことになったのである。

隣には、りんと灯。


「トーヤは、こちらに居ます。」


古田 純平が棚の上でこちらに向かって笑っているスナップ写真を美華たちに見せる。

その写真の前には、水と食べ物が小皿に載って供えてある。


「・・・トーヤは俺の弟だったんだ・・・」


美華は、その写真に向かって手を合わせる。しばらく無言でいたが、純平に柔らかな笑顔を見せると深々とお辞儀をする。


「お世話になりました。・・・古田さんには、斗哉がすごくお世話になっていたとりんさんから聞きました。本当は、もっと早くにお邪魔させて頂きたかったのですが、私の心の整理がつかずにいて。・・・・こんなに遅くなってしまいました。すいません・・・

いろいろ事情があって、私には斗哉を育てることができなかったのに。

斗哉が亡くなって、こうしてトーヤを中心にして知ることができました。

古田さんにはなんてお礼をしたらいいのか・・・。

恥ずかしながら、斗哉と一緒に過ごせたのはわずか半年しかなかったので、斗哉が何が好きなのか、何が嫌いなのか何にもわからないのです。」


寂しそうに話す美華の姿に、純平も明子も胸を痛める。

そこへ明子が持ってきたお茶をテーブルに置く。


「りんちゃんから、今まで見つからなかったトーヤの母親が見つかったと話は聞いていました。

育てられない事情があったとか・・・」


明子に座るように促され、座ると純平が口を開く。


「思い出話でも、聞いて行ってくれ。」


そういうと、淡々と口を開く。


「ここでの何年間かしか伝えられないけど、俺の大切な弟だから・・・

トーヤは挨拶ができなかったなぁ。“おはよう”“おやすみ”くらい言えるはずだろうと思っていたが、

前の家ではほとんど会話をしなかったというから、挨拶もしなかったみたいだ。

ここにきて、挨拶は一日の始まりにおはようございますというのが当たり前。夜にはお休みなさいと一日の終わりに挨拶するのが当たり前の事なんだと教えました。

最初は、小さい声でぼそぼそと言っていたけど、そのうちにきちんと挨拶ができるようになりました。

挨拶すると気持ちいいだろう?というと苦笑いしてた。

それから、食事に関して。挨拶ができないからいただきます、ごちそう様もできなかった。

食べれることに感謝していただきます、作ってくれた人たちに感謝してご馳走様なんだと話したら驚いていたなぁ。」


明子が口を挟む。


「今まで、教えられたこともないみたいでしたよ?

野菜1つ作るのにいろんな人の手が加わっていることを細かく説明しました。

例えば、じゃがいも。

育てるのに、ジャガイモの種芋が必要。それを作っている人がいて、さらに育てるのに肥料も必要。雑草も生える。その手間がかかる。でも、作っている人はめんどくさいという気持ちじゃなくて、おいしく育ってっていう気持ちで育てる。

そして、育ったら、収穫して出荷するまでにもいろんな人の手が加わる。

お店に並んだら、それを私たちが買って自分の口に入るまでに料理する人がいる。

そんな話をしました。そしたら、トーヤは言っていましたよ?

『考えたこともなかった。食べれるのが当たり前じゃないんだな・・・』って。

きちんと説明すれば分かってくれる大切な弟でしたよ。だから、毎日の食事の支度も、お弁当を持たせるのも私たちは苦になりませんでした。

かわいい弟のために、いくらでも手を掛けたくなったんですよ?好きな料理を聞いても、ただ食べれれば良いというトーヤには呆れましたけど。

結局、トーヤはあまり好き嫌いはなかったけど、やっぱり男の子で肉料理は美味しいと言ってたくさん食べていましたよ。」


話しを聞きながら、美華が瞳に涙を溜める。


「すいません・・・最近涙もろくて・・・」


ハンカチを目元に当てる美華。

それを見て、純平がいたずらっ子の表情を見せながら話す。


「親が参加する学校行事もトーヤが言わないもんだから、こっちから学校に予定を聞き出して勝手に参加してやったんだ。

突然学校に行ったらトーヤが口をあんぐりと・・・

あれには、笑ったなぁ。学校から帰ってきて、トーヤにお前の兄貴だからいろいろ知りたいんだよ!と話したら、また驚いて・・・。

あれからだよな?トーヤが少しずつ自分のほうからしゃべるようになったのは・・・」


「そうだね?あのときのトーヤ・・・

思い出すとおかしくて・・・」


夫婦そろって、笑いだす。


「さて、トーヤの住んでいた部屋に案内しますよ?」


そういうと純平が案内してくれる。美華の後ろにトーヤが現れる。


「どうぞ!気のすむまでゆっくりしてってください。」


そういうと、ドアを閉めていく。




『懐かしいなぁ』


トーヤが喜んでいる姿が灯の目に映る。


「美華さん。トーヤが喜んでいますよ?

ここでの生活は、楽しかったみたいです。

りんさんとの思い出もたくさん詰まっているみたいです。」


「トーヤは優しかったから。」


「いい恋してたんだね?」


灯が呟き、りんの手を両手で包み込むと、りんは顔を真っ赤にして話し始める。


「ここにはたまに来ていました。

二人っきりでいると深い仲になっていたんじゃないかと誤解しないでくださいね?

二人でいても話すのは、お互いの友達や学校での楽しかったことばかり。いつも笑っていましたよ?

深い仲にはなっていません。

トーヤに言われたんです。安売りするなって。

そういうことは、将来結婚したいと思った人にあげるべきだって。

トーヤって意外と固いんです。

それが、トーヤだったら?と聞いたことがありました。

そしたら、言われたんです。

その時まで、待っててくれって。オレがきちんとりんと向き合えるようになるまで待ってくれ。

家族と言うものが理解できるまで待ってくれって。

美華さん、トーヤは素敵な男性でした。」


「りんさん・・・。ありがとう。」


『だって、りんが大切だったんだよ?

今でも大切だけどな?』


その一言を灯は、二人に伝える。すると、トーヤが灯に近づいて灯にお願いをする。


『灯、そこの箱を取ってくれ。その中にネックレスが入っているはずなんだ。』


灯が、言われた通り箱をとり、箱のふたを開けると言われたようにネックレスが入っていた。


『りんにプレゼントするはずだったものだ。』


珍しく、トーヤが照れ笑いをする。


「りんさん、トーヤからのプレゼントらしいの。」


灯は、ネックレスを手に取りりんの首につける。


「りんさん、受け取ってください。」


美華も優しいほほえみを浮かべる。


「トーヤありがとう・・・」


美華の背後に向かって伝えるりん。

その後、トーヤの部屋でりんから見たトーヤ。トーヤが話していた古田夫婦の話をしていると時間はすでに3時間も経っていた。外では太陽が沈みかけている。

さて、帰りましょうか?と三人で話していると扉をノックする音が聞こえる。


「トーヤのお母さん。トーヤの荷物なんですが、どうしたらいいでしょうか?

遺品ですので、お母さんに返すべきなんでしょうけど・・・」


そういって、美華を見つめる。


「せっかくですので、ここで遺品分けをしましょう?」


と美華がいうと女性4人でワイワイと遺品分けを始めた。

もちろん、トーヤも意見を灯に伝えてくるのでそれを灯の言葉のように伝えながらだが・・・。

仲良くなった女性4人。帰宅するころには何年来の友人だったようになっていた。


「今度は、我が家にもおいでください。

古田さんに、うちの家族に会っていただきたいんです。

これから、トーヤのお墓の事とかいろいろ考えなくてはいけないことがあって。是非意見を頂きたいので。

斗哉の7回忌に合わせて、お墓も作りたいんです。

必ず、近いうちにいらしてください。」


「はい。必ず。」


明子が強く頷く。


「それから、トーヤの大好物だったものなんだと思いますか?」


明子がからかうように美華に話す。


「??なんでしょう?」


「お母さん、小さいころトーヤにプリンをよく食べさせませんでしたか?

トーヤがよくお父さんに、お母さんの話と共にプリンを食べさせてもらった思い出だけはあるんだ、と話していたの。

プリンが大好物だったの。

以外でしょ?仏前にプリン上げてください。喜ぶはずだから・・・。」


「ありがとう。明子さん。また、私もここに来させていただきます。

今度は、食事をしにね!」


そういって、古田家を後に歩き出す。





「トーヤの7回忌は賑やかになりそうですね?美華さん。」


「もちろんよ。トーヤがいなくなって寂しいけど、でも今が楽しいわ。

全ては、灯さんのおかげね?」


美華が灯にお礼を言う。


「こちらこそ、お礼を言うべきかもしれません。私も、実家に顔を出す決意ができました。

こちらこそ、お礼を言いたいです。

トーヤ、ありがとう・・・・。」




3人の周りに優しい空気がまとわりつく。

まるで、3人を優しく包み込むように。









次回は、美華があの看護師・・・河田に会った話を書こうかと思案中。

灯が実家に帰る話もどこかで書きたいなぁと思っていますが、いつになることか・・・。


しばらくお待ちくださいね。

                      旬麗

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