15.そして精霊になった
斗哉の父親、健斗がしゃべります。
灯、凪、拓斗、珂李、蒼人、りん、美華、翔哉、斗夢、清哉、はる
トーヤ、健斗、光稀
今回は、登場人物のほとんどが出てきます。
『長谷川 健斗と言います。斗哉を迎えに来ました。』
なんと、その人はトーヤの父親だった。
『斗哉が、迷惑をおかけしました。やっと見つけたと思ったら・・・あなた方に迷惑をかけていたようです。』
『・・・・あれは、美華だね?』
健斗は、美華の顔を見て穏やかに微笑む。
トーヤは隣に立つ父親の姿に驚く。
「オレの・・・父親・・・?」
美華が驚く。
「斗哉!健斗さんが来ているの??」
「うん。ここにいる・・・」
「はぁ!ちょっと待って。ここまで来たら、みんなに付き合ってもらうしかないわ。
伶・歩生・彩加・琴音!出番だよ。みんなの力が必要!健斗さんもみんなに見えるようにして。」
そういうと伶・歩生・彩加・琴音の精霊たちは力を最大限に使う。
ゆっくりと健斗の姿が実体化する。
「ありがとう!これで話し合いができるわ。」
そういうと、拓斗の後ろに控えていた守護霊さん・・すなわち光稀さんだが・・・が顔を出す。
「私も、仲間に入れてください。私の意見も聞いてもらったほうが・・・」
「じいちゃん!!!」
拓斗が怒鳴る。
「じいちゃんが、出てくるところではないんじゃないか?」
拓斗が光稀に話す。
灯が答える。
「光稀さんの意見は、重要になりますよ?一緒にお願いしますね?」
灯が光稀に微笑むと、嬉しそうな顔をした光稀。
「お嬢さんのお願いだ。しっかり手伝うよ?」
健斗が拓斗に向かい合う。
「斗哉が迷惑かけたようだね?いろいろお世話になりました。斗哉は、連れて帰りますので。」
健斗がすまなそうに、みんなの顔を見回しながら伝えると、光稀が口を出す。
「健斗さん・・・トーヤ君の意見も聞いたらどうでしょう?
最初は、確かに拓斗を不幸にしたくて、苦しめたくて悪さをしました。その理由も聞いてみれば、自分には辛くても手助けしてくれる人がいなかったから、同じ目に会わせたいと言うのが理由だったようです。
しかし、灯さん、凪さんとともにトーヤ君の過去をいろいろ探るうちに気が付いたようですよ?」
「・・・・斗哉!!手助けって・・・。榎元さんは、優しい人だったろう?」
そこで、珂李が口を挟む。
「斗哉のお父さん・・・すいません。うちの親父、不器用なんです。
斗哉を大切に思っていたのに、斗哉には冷たいことしか言わなくって。斗哉の両親は、斗哉を捨てたとか・・・
それで、斗哉は心を開かなくなってしまって。」
「君は、榎本さんの息子さんか?・・・しかし、あの、榎本さんが・・・そんなこと・・・」
「はい、僕は榎元 珂李といいます。話しにウソはありません。本当の事なんです。」
「じゃぁ、斗哉は・・・・」
「中学になるまで、ほとんど一人ぼっちでした。中学になり、ここにいる蒼人と友達になるまでは・・・」
蒼人が話を続ける。
「トーヤに初めて会った時、トーヤはいつも寂しそうでした。家族の話をすると特に・・・。
最初どうしてかわからなくて・・・。珂李さんと出会うまでは謎の人物でした。笑うこともなくて・・・
付き合いが長くなっていくにしたがって、ようやく笑顔を見せてくれるようになったんです。
そんな苦しみの中にいたトーヤなので、悪霊になったというのもわかります。
トーヤが死んだあとには、記憶があまりなくて暗いなかに憎しみしかなかったと聞きました。
ここにいる灯さんが、トーヤを救う約束をしてくれて、こうして動いてくれて、憎しみが薄れていったんだと思います。」
光稀がコホンと咳をする。
「健斗さん、トーヤ君の考えも聞いてみましょう!トーヤ君はどう思っている?」
「オレは・・・」
トーヤが美華と健斗の顔を見つめる。
「父さん、母さん・・・初めて見ました。いつも、どういう人かなと言う想像しかできなくて・・・。
どうして、オレを捨てたんだろう?どうして、こうなってしまったんだろう?ってそればっかり毎日思って過ごしてきました。だれも、信じられない世界でした。
でも、蒼人にあって、りんと付き合って・・・
人を信じるという事、好きになるということが分かりました。住み込みでバイトしていた古田さんにはよく『かわいい弟』と言ってもらって、幸せでした。生きている中で、一番の幸せの時だったと思う。
でも、人生ってな・・・。
まさかの交通事故で・・・オレは・・・
最初、死んだことさえわからなかった。しばらくさまよっていたよ。さまよっているときには、オレが小さいころに感じていた孤独しかなくて・・・
気が付いたら、拓斗さんと凪さんの幸せが目について・・・
苦しめてやろう!!いたずらしてやろう!!と思って憑いてみたんだ。
そしたら、驚きだよ・・・・。
そこには、すごい力を持った灯という人物がいて。
幸せにしてあげるから、と言うんだ。拒否したかったけど、灯の力は強すぎて反発できなかった。
幸せにできるなら、やってみろ!という感じだった。
・・・・・・なのに、こいつらは凄い。灯といつも一緒に居る精霊たちの力もあって、オレの過去を辿っていったんだ。
母親の事、父親の事・・・。オレを大切に思ってくれていたことが分かって、少しつづ心が動かされていったよ。
珂李までも、オレの事思っていてくれたなんてな?生きているときは気が付かなかった。
そして、今日は母さんの家族にも会えた。オレは、一人ぼっちじゃなかったんだ。
オレの弟たち、母さん・・・・
オレは、昇天したくない。父さん、連れて帰らないでくれ。
オレは・・・・。母さんの家族を守っていきたい。光稀じいちゃんみたいになってもいいし、灯のまわりにいる精霊達のようにでも・・・」
「拓斗・・・」
美華と健斗が同時に呟く。光稀が言葉を繋ぐ。
「健斗さん、まぁ、私の話も聞いてくれないかな?私のように守護霊になるには、もともと霊感がつよくないといけないのだ。
でも、トーヤ君には無理だと思う。
残るは、精霊だけ。精霊の条件もあるのだが、トーヤ君はその精霊の条件を満たしている。」
灯が、話す。
「ここにいる私の精霊たちも、最初は悪霊でしたよ。それが、トーヤみたいに心が救われた後精霊になってこうして私を守ってくれる心強い味方になりました。
・・・見えなくってもいいんですよ。ただ、お母さん家族のところにいつもトーヤは居て助けてくれる。そういうことです。どうしますか?私の精霊たちはみんな賛成です。」
成り行きをじっときいていてりんが言う。
「私の意見もいいでしょうか?
トーヤは、いままで家族の元に居れなかったんです。わたしとしては、これからは家族と共に過ごして欲しいです。
住み込み先の古田さんたちは、トーヤの幸せをいつも願っていました。今だって、一日が始まる前と終わるときには必ず手を合わせているんです。
その古田さんも、ここにいれば必ず言うはずです。
家族の元に帰るべきだ!って。
城山さん家族はどう考えていますか?トーヤがここに留まるのは反対ですか?」
翔哉が子供たち3人の顔をみて、聞く。
「お前たちはどう思う?斗夢?」
「僕は、お兄さんができてうれしいよ。なのに、死んでしまっていると聞いて寂しかった。もし、見えなくても一緒に居てくれるなら嬉しい。話すことができなくても、いつも一緒に居てくれれば心強いよ。」
「清哉は?」
「僕も兄さんとは同じ意見。一緒に居てほしい。いままで、母さんとも一緒に居れなかったんだから、これから一緒に居てもいいと思う。」
「はるは?」
「お兄ちゃんたちといっしょだなぁ。私たちのお兄ちゃん!会ったばかりだけど、はるは、大好き!一緒に居てほしい。」
「じゃぁ、僕の意見だけど・・・」
翔哉が最後に伝える。
「斗哉君は、うちの息子なんだよ。斗哉君がここに居たいと言うならば、ここにいてほしい。
見守っていてくれるというなら、見守ってほしい。
いままで、親子でも離れて暮らしていたんだ。精霊になってもいいから、本当にうちの子になってほしい。
・・・ずっと、気にしていたんだよ?親戚の家に預けられたと知っていたから安心していたんだが・・・。
これからは、ずっとここにいればいい。」
「翔哉さん・・・ありがとう・・・」
「親子が一緒に居るのは、当たり前じゃないか!
・・・・・ということで、健斗さん」
「分かりました。お願いします。
それから、美華・・・。あんなに小さいころに斗哉を手放すつもりはなかったんだ。病気というのは恐ろしいよ。
大きくなった斗哉を見せに来たかったんだ。
斗哉・・・最後まで育ててあげられなくてゴメンな?本当にお前は可愛かったよ。大好きだったよ。こうして大きくなった斗哉を見れて嬉しかった。
翔哉さん・・・これからも美華の事よろしくお願いします。美華は僕が生涯愛したたった一人の女性です。幸せにしてください。生きている中で先にも後にも、愛する女性は居なかったんです。美華だけ。」
「約束はお守りします。美華はあなたの事を、生涯大切にしたい人っていってた。お互い大切な人ってことですね?
あなたに嫉妬したくなるけど。」
笑いながら、話す翔哉に健斗も苦笑い。
健斗の体がだんだん消えかかっている。
「もう、時間みたいです。これで、最後のお別れになるでしょう?ありがとう。
・・美華と斗哉をお願いします。」
みんなに向けてゆっくり頭を下げると、健斗が消える。
残されたみんなで、お互いの顔を見つめあう。そして、そのあとゆっくりとトーヤに顔を向ける。
「オレも、精霊たちとちょっと出かけなくてはならない。もう姿が見えなくなるけど、いつでもここにいるから。
灯・・・ありがとう」
「うん。幸せになれてよかった。トーヤは私の目には、いつでも見えるから。
たまには、顔を見せてね。」
「おう!わかった。」
照れくさそうな顔をすると光っていたトーヤの姿も消える。
「美華・・・」
翔哉が美華に声をかける。
「みんな、ありがとう!健斗さんにも斗哉にも会えてよかった。健斗さんには最後にさよならできてよかった!
・・・心が軽くなりました。」
ふわっとした笑顔を見せて美華が笑う。灯たちに目を移し、口を開く。
「あなたたちにも大変お世話になりました。これからも、ここに遊びに来てくれるかしら?
せっかくご縁ができたんだもの。無駄にしたくない。今日は、すごく楽しかった。」
「ありがとうございます。また、寄らせていただきます。」
しばらくして、城山家を後にした灯たち。帰途の道すがら、話すのはトーヤのことばかり。
トーヤの事を思い、みんなの胸には、暖かいものが流れていた。




