14.あたたかな心
トーヤの命日から1か月後、美華から灯に電話が入った。
「こっちのほうは、やっと落ち着きました。もしよければ、灯さんの都合がいい時にでも、またいらしていただけないかしら?
こちらに来れる日の予定を知らせていただけると助かるわ。」
そういった美華に灯は話す。
「実はあの後、トーヤが世話になっていたという親戚のお宅に行ったんです。
そこで、トーヤの親戚・親友・彼女と言う人物に会いました。訪ねた日がちょうど、トーヤの命日だったこともあって、みんなに会えたんです。
そこで、トーヤの思い出話をしました。
もちろん、お母さんが生きている話もしました。
お母さんさえよければ、その人たちとも会ってもらえないでしょうか?
もちろん、無理にとは言いません。」
「是非とも、会ってみたいわ。みんなの予定を合わせて、来ていただけるかしら?」
「ありがとうございます。」
「予定が決まったら、こちらから連絡させて頂きます。」
そういうと、電話を切る灯。
『もう少しだね?灯・・・。トーヤは昇天できるね?』
彩加が寄ってくる。
『オレは、昇天というよりも、みんなみたいに誰かを見守っていきたいよ。
死んでから、みんなの思いに気が付いたよ。いまはもう、誰かを苦しめたいとか思ってない。
お前たちには、悪かったと思ってるよ。』
トーヤが謝る。
『トーヤありがとう。あともう少しで、解決する。その後、どうしたいかはトーヤが自分で決めていいと思う。
お母さんのところにみんなで行って、それから考えて。
いまは、無理に昇天させないから。』
『わかった』
『彩加、城山さんの家に行くときはみんなの力が必要なんだ。力を貸してね。お願い。』
『もちろん、大丈夫よ。任せて』
彩加たちの協力が得られることが決まったところで、凪に連絡を取り美華の話を伝える。
そうして、決まった日取りはそれから2週間も経った7月下旬になった。
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城山家のチャイムを鳴らすと、美華が出迎えてくれリビングに案内される。
「いらっしゃい。待っていました。子供たちも楽しみにしていました。」
リビングのテーブルを見ると、和食・洋食・中華・イタリアンのものまで所狭しと大きな器に盛られ、並べられている。
「こんな大勢で、押しかけてしまってごめんなさい。お手伝いもできずに・・・。」
灯が、頭を下げると、美華は笑って言う。
「主人も、子供たちも今日が待ち遠しくて・・・。何日も前から、自分たちで作りたいと張り切ってしまって。
いつの間にか、こんなにたくさんのものができてしまったの。」
美華の隣には、『主人です』と紹介された翔哉が立っている。美華より背が少し高めのにこやかな笑顔をした男性だ。
その周りには、斗夢・清哉・はるがいて、それぞれ紹介された。
灯も、凪・拓斗・珂李・蒼人・りんを紹介する。
「まずは、食べてからお話ししましょう!」
と美華に促され、食事を始める。
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1時間ほどして、みんなのお腹もいっぱいになった頃、またもや美華から話を切り出される。
「トーヤの事聞いてもいいかしら?みんなが知ってるトーヤを教えてほしいの。」
そういうと、珂李から見たトーヤ・蒼人から見たトーヤ・りんから見たトーヤの事を次々と話し始める。
美華はみんなの話を聞きながら、涙を流し始める。
「トーヤを支えてくれてありがとう。」
「・・・あの、これですが・・・」
おもむろに、珂李が手紙を手渡す。
「それは、トーヤの父親がトーヤに宛てた手紙なんです。もう、この世にはトーヤもいないので、トーヤの母親が持つべきものかと思って、持ってきました。」
そういって、美華に手渡す。すると、美華は翔哉に渡して、告げる。
「読んでください。」
「いいのか?!」
翔哉が驚いた顔をするが、美華は瞳をまっすぐに翔哉に向けると頷く。
「はい。」
・・・・・翔哉が手紙を読み終えると、美華は声を殺して泣いていた。
その後ろには、慈しむような顔をしたトーヤが立っている。美華を包み込むようにしている。
「ここにいるみんなに、聞きたいのですが・・・」
灯が話し始めると、みんなの視線が灯の元に集まる。
「トーヤに会って見たいですか?いや・・・会いたいですか?」
みんな口ぐちに話す。
「当たり前だよ。」
「会いたいよ。」
「話してみたい。」
「じゃあ、決まりだね。」
そういうと、灯は目を閉じる。
「トーヤ、自分の力を最大限に発揮して。みんなに触れたいと願って!祐、力を貸して。」
そういうと、トーヤの体が実体化されていく。美華は、トーヤに抱きしめられていたことに驚く。
おそるおそる、美華はトーヤの頬に手を伸ばす。
「斗哉??」
顔を覗き込むと、健斗に面影を残している斗哉にほっとする。そして、自分に似ていることに苦笑する。
「健斗さんにも似てるわね?ああ!小さいころの面影はちゃんとある。・・・いつの間にかこんなに大きくなっていたのね?ずっと会いたかったわ。愛しているわ。」
暖かな涙が、美華の頬を濡らす。それを見ていた翔哉も瞳に涙を貯めている。
「斗哉君!はじめまして。」
「・・・知っています。翔哉さん・・・ですよね?そこにいるのが僕と半分血のつながりのある、弟・妹たち。」
斗哉が翔哉に顔を向けると、微笑んで話す。
「母を支えてくださってありがとうございます。そして、僕を探してくれていたのを知っています。ありがとうございました。僕と言う存在を知って、普通は嫌がるはずなのに、翔哉さんは母に会うように勧めてくれた。嬉しいです。
そして、母に僕以外の家族を授けてくださってありがとうございます。
弟や妹・・・僕にもいたんですね?」
静かに斗哉が話すと、翔哉が答える。
「美華は、僕に行ったんだよ。守ってあげたい人がいるって。最初は何のことかわからなくてね?美華は寂しそうな顔をするし・・・。よく調べてみたら、君の事が分かったわけだ。斗哉君の事を含めて僕は美華と一緒に生きていくことを決めたからね?一緒にこの家で育てることはできなかったけど、斗哉君は僕の息子でもあるよ。」
そういって、斗哉を見つめる。それを見つめていた珂李。
「・・・折り入って話があるのですが・・・いいでしょうか?」
「城山さんは斗哉を息子と思っていてくれるということに間違いはないですよね?」
「もちろん」
「実は、うちにはトーヤの父親と、トーヤのお骨がまだあるんです。こちらで引き取ってもらうのは無理ですか?
僕もいろいろ考えて・・・。もし、トーヤの母親に会えたら返すべきなのではないかと。
家族でも話し合っても、なにもいい結果は出なくて、月日だけが経ってしまったんです。
だから、トーヤたちのお墓はまだないんです。」
「・・・そういうわけだったのか!!墓が見つからなかった理由・・・」
「心配しなくてもいい。それは、日を新ためて相談するよ。知らせてくれてありがとう。」
その成り行きを見ていた美華は、斗哉の頭をなでる。
「これで、心配することは無くなったわ。私は、斗哉の母親としては何もしてあげられなくて罪悪感ばっかりだった。
斗哉を産んだのは、嬉しかったのに、どうして手放してしまったんだろう?育ててあげられないことに、落ち込むばかりだったわ。こうして、家族を持ってこの子たちを見つめれば見つめるほど、思い出すのは斗哉のことばかり。
どうしているだろう?苦労してないだろうか??
・・・こうして、友達や恋人がいることを知ってとても嬉しいわ。斗哉は一人ぼっちじゃなかったんですもの。」
美華が斗哉から離れ、蒼人とりんの前に立つ。二人の手を取ると
「斗哉を守ってくれてありがとう。斗哉を好きになってくれてありがとう。」
とお礼の言葉を口にする。トーヤも蒼人とりんの前に立つ。
「オレの事を大事に思ってくれてありがとう。いつも、寂しくて毎日色のない世界に色を付けてくれたのは、お前たちのおかげだ。死んでからは、死んだのさえ、受け入れることができず過ごしていた。
苦しかったことしか記憶になくて、あいつに憑いてみたら・・・。
段々と生きていた時の事を思い出したよ。オレ、幸せだった。
榎元のおじさんの事、嫌いだったけど本当の姿も知ったし。珂李・・・お前にも世話になった。」
りんがトーヤの腕をつかむ。
「もう、会うことはできないの?」
灯を見つめながら答える。
「多分な・・・りん!俺よりいい男捕まえろよ?幸せになれよ。見守っててやるから。」
静かにトーヤが話す。すると、トーヤの体に異変が起き始める。
ぼわんとした光がトーヤの体を包み始めたのだ。
「トーヤ!もう時間が残されていないよ。もう、お別れの時間が迫ってきてる・・・」
灯が、そう伝えると頷くトーヤ。そして、拓斗と凪のほうを見る。
「お前たちには迷惑かけたな?お前たちも幸せになってくれ。幸せな家庭を作ってくれ。」
拓斗は、トーヤに言う。
「トーヤに出会えてよかったよ。いろいろと勉強させてもらったよ。
お前の周りにはいつも愛があふれていたな?
トーヤの父親も、榎元さんも、珂李も蒼人も古田さん夫婦も、そしてお母さん家族もみんな・・・。
悪霊に憑かれるなんて、嫌だったけど無駄じゃなかったぞ。」
拓斗に言われて、照れるトーヤ。
トーヤの体が、全体に光り強さを増した時に、トーヤの隣に一人の男性が・・・
灯にしか見えないが・・・その人は!!!
『長谷川 健斗と言います。斗哉を迎えに来ました。』
なんと、トーヤの父親だった。
次回、トーヤの父親が登場!
トーヤは、昇天しなくてはいけないのか?
トーヤの希望通り、精霊になることができるのか??
トーヤと健斗の話し合いを中心に書いていくつもりです。←希望です




