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悪霊が精霊になるとき  作者: 旬麗
12/19

12.トーヤと拓斗と蒼人と

短い話になっています。

「しかし、拓斗さん久しぶりですね?まさかこんなところで、拓斗さんに会えるとは思いませんでしたよ。」


「ほんとだな??」


ふっと微笑む拓斗。昔の思い出を思い出しているようだ。


「拓斗さんとの関係詳しく知りたいな~。」


凪が興味津々といった口調で話す。


「そうだな?」


拓斗は、高校時代を懐かしむように話し始める。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


拓斗が高校生の時、拓斗は喫茶店でアルバイトしていた。

喫茶店の名前は【intermission】という。『休息』という意味の名前だ。店長が『みんなの休息の場所になればいい』と名付けたそうだ。

表通りに面した店は、天井が高く明るい店内。そのためか、人の出入りも多く人気店でもある。

ケーキも種類が豊富なためか、女性客が多いのも特徴だ。

店は、忙しくなるばかりのためアルバイトを募集していたところやってきたのが蒼人というわけだ。

拓斗は当時高校3年生で蒼人は高校1年生だった。


アルバイトが初めてという蒼人に、懸命に仕事を教えたのが拓斗ということになる。

最初は、先輩・後輩という間柄だっただけだったが次第に兄弟のような間柄になり、休憩時間には自分たちの友達や学校生活の事を話すようになっていった。

拓斗に『弟』という存在がいなかったからなのかもしれない。

また、蒼人にも『兄』がいなかった。


お互いの家庭環境も似ていた。両親は共働き。自分で家事がある程度できなければ生活に困る、という状況。両親が忙しいため子供たちにかまってやれないのが現状なのだ。

拓斗は妹がいるが、蒼人は姉がいる。女性の兄弟の仲の男一人という状況もよく似ていた。

拓斗は弟ができたようで楽しく、蒼人は兄ができたようで楽しく日々の忙しいアルバイトもそれほど苦にならずに済んだのだった。

そのうちに、悩みなども打ち明けられる間柄になるのに時間はそんなにかからなかった。


「そうか!長谷川 斗哉ってどこかで聞いた名前だと思っていたんだけど・・・??ずっと、どこで聞いた名前か分からなくて気になってたんだ。

だけど、蒼人に会って分かったぞ!斗哉って蒼人・・・お前が話していた友達だったんだな?」


「そうだよ?俺の友達!死んでしまっても友達。」


「初めて会った時、斗哉はぶっきらぼうで。でも、付き合っていくとわかるんだ。俺が兄弟の事とか、親の事とか話す度に、ふっと寂しい顔を覗かせるんだ。

どうしたんだ?と聞いても話してくれない。そのうちに、たまたま珂李と友達になって謎が解けたけどな?

でも、斗哉はなんでもまっすぐに進んでいく奴で。俺、男として凄いな!!といつも憧れていた。

家族の話題に触れなければ、笑ってくれるようになって、こっちまで嬉しくなって。

寂しい顔をすることも、減っていったんだ。」


「私達の知らないトーヤだね?」


灯が口を挟む。


「失礼・・・佐山さんといった?」


「はい。佐山です。」


「佐山さんが知っているトーヤってどんな感じなの?もしかして、俺の知っているトーヤと全然違う??」


「トーヤ・・・・悪霊だもの。過去に寂しさ、あきらめ、辛さ、をたくさん感じ取ってしまったようで、怖い顔してる・・・

でも、ここにきて2人に会って。穏やかな顔になってきてる。

ここまで、来るまでにトーヤの両親の事知って、少しづつ心のわだかまりが解けたのもあったのかも知れないけど・・・。

トーヤは両親に自分が捨てられたと思っていたし、誰も今まで救ってくれなかったから悪霊になって不幸せにしてやる!と思っていたから。

私は、親友の凪と拓斗さんの仲を壊されたくないし、トーヤを救ってあげたいな?って思ったから今こうして、ここにいるんだけど・・・。

父親は亡くなっているけど、母親は生きていたよ。」


灯が2人に伝えると


「!ほんとうか!!!」


と、同時に珂李と蒼人が身を乗り出す。


「ほんとうです。つい先日、そのお宅へ凪とお邪魔してきました。お母さんは、トーヤと生後半年で別れてしまって・・・。

それからも、ずっと忘れずに過ごしてきたのだけど、探すことができなかったと言っていました。

トーヤの事は忘れたことがないと、泣いていましたよ。

その証拠に、トーヤの父親違いの兄弟の名前にはトーヤの文字が使われていましたよ。」


珂李と蒼人ににっこりと伝える灯。すると、珂李が話し出す。


「親父も、多分トーヤの母親知らないはずだ。トーヤがうちに来たときは父親は亡くなっていたし、子供がいるって話も亡くなる3日前に聞いたそうだぞ。

母親の名前を聞いても話さなかったそうだ。すぐ容態も急変して何も聞けずじまいだったと、オレの母親がこぼしていた。」


「トーヤによく似ていたよ??綺麗な人だった。トーヤの事少しでも知りたいって言ってた。

トーヤが死んだのを知ったのもつい最近だって話して。

・・・辛そうだった。」


珂李と蒼人は黙って頷きながら聞いていた。

珂李がボソボソと話し始める。


「トーヤの母親が見つかって安心したな。

実は・・・トーヤも・・・その父親も、なんだけど、墓に入れていないんだ。

親父の見えない優しさ??

トーヤが大人になってこの土地を離れたら、墓参りに来れなくなるだろ?だから、入れることはできなかったって。

トーヤに託すはずだったのに、あいつは交通事故になんて遭ってしまうから・・・

トーヤのお骨もずっとうちにあるんだ。

もし、その母親って人がいいというならお骨を返してあげたい。

うちの両親はオレが説得するから。」


「トーヤってなんだかんだ言って、みんなに愛されてるよね?」


凪が突然言い出した。

みんなで顔を見合わせて「ハハハ」と笑いあう。


「知らないのは、本人だけってな!」


「・・・もしかして、トーヤが拓斗さんに憑いたのはこういう繋がりがあったからかも知れないよ?」


「そうかもしれないな・・・」


拓斗が同意する。静かな空気が、トーヤの部屋全体を包み込む。

すると、珂李は立ち上がって大きく背伸びをすると、時計を確認する。


「・・・・・さて、そろそろかな?」


とテーブルの周りに座る4人を見下ろしていう。


「???」


「斗哉が生きているときに、ただ1人愛した人がくる・・・」


その時、ピンポーン!!と玄関のチャイムが鳴り響いた。





短いので、翌日もアップします。

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