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第一話

「うわぁ、最近の東京ってこんなんなんだ!

 すっごいなぁ、電車の窓から見てもめずらしいものばっかり!!」

いきなり電車の中っていうのも何がなんだかわからないと思うから、ここで少し自己紹介を。

僕の名前は四条拓真しじょう たくま。今年で十六歳になる。

僕が住んでいたのは四国だけど、今年中学からの推薦で東京の学校に進学できることになった。

と、いっても成績もあまり良くない僕が東京の普通の高校なんかに入れるわけもなくって……


~数日前~


「え?僕が東京の学校に、ですか?」

僕がそう尋ねたのは、

小中一貫のこの学校で小学校時代から良くお世話になってた春日部かすかべ先生に対して。

「嫌かい?前々から東京に行きたいと言っていたからなんだがね」

「ええ、そうなんですけど・・・僕は捨て子だったから身寄りもないし。

 それより、なんでいきなり東京なんですか?

 僕はそんなに成績が良いわけじゃないし、特技があるわけじゃないですよ?」

そう返すと、先生は意外な返事を返してきた。

「何を言っているんだい?君には、他の子がうらやましがるような事があっただろう?」


「お客さん?ここ、終点ですよ?『学園前』です。ほら、降りないと。」

うぇう?終点……!

「んぁ、すみません、すぐ降ります!」

そう運転手さんに謝って慌てて電車から降りる僕と、薄緑色の輝きをまとった、

透き通った羽の生えた身長十センチくらいの女の子。

「行くよ、シル! 学校は目の前だ!」


妖精。


約百五十年前に突然現れた、意識だけの生き物。

姿も様々で、シルのように女の子の姿をとる者もいれば、動物や機械、道具なんかの姿をとることもある。

基本的には話さないけど、仲が良くなるとなんとなく考えていることはわかるんだ。

それに、成長した精霊は人間と同じくらいの大きさになって、普通に会話できるらしいし。


彼女たちにはまだまだ謎が多くって、いろいろなところが研究中なんだ。


でも、精霊たちにはいろんな力がある。

たとえば機械に入り込んでいろいろな手助けをしてくれたり、

それぞれの属性・・・木火土金水と日月の属性の力を使ってサポートしてくれたり。

そんなこんなで、僕たちの暮らしには欠かせない子達です。

長々と説明したけど、ダレてないことを祈るよ、ほんと。

さて、と。説明はこのくらいにして、そろそろ学校に行かないと。

精霊師養成学校、「霧生学園」に。


~霧生学園正門前~


「うぅ、本当に東京って複雑だ。まさかこんなに迷うとは思わなかった……」

ちなみに学校へ来るときの時間的余裕は三時間。

なんでこんなに時間取ったほうがいいって言われたのか最初はわからなかったけど……


「まさか二時間半も堂々巡りしてたなんて……」

あぁもう、横ではシルが笑ってるし。


「ちょっとシル~、笑わないでよ!これでも必死だったんだから」

「~♪」

まだ彼女はクスクスと無邪気に笑いながら、彼女は僕の後ろを飛んでいた。

どうやら笑いが収まらないみたい。


「も~ほら、ついて来ないと置いてくよ、シル!僕は学校に行ってるからね!」

「!」

「うわっ、あわてて肩に飛びついてこなくてもいいって!冗談だから!」

「~~~!!」

「うん、ほんとゴメン。だからそんな泣きそうな目で僕を見ないで。

 ゴメンナサイ僕が悪かったです許してください……」

「♪」

「って、ウソ泣きかい!もう」


とこんなやりとりの後、学園の中でまた十分迷った(広いよここ……)僕は、

転入手続きをするため学園事務局に到着した。


「あの、すみません。四条拓真と申しますが、転入手続きをしに来たんですが……」

僕がそう言うと、カウンターに居た一人の女の人が書類から顔を上げてこっちを見た。

「転入手続きの書類などはお持ちですか?」

「あ、ハイ!これで大丈夫ですか?」

と、僕は先生から渡された書類が入った封筒を手渡した。


「……はい、これで大丈夫です。あなたが連絡のあった四条さんですね。

 ようこそ、霧生学園へ。学園長からあなたをお通しするように言われています。

 こちらへどうぞ」

そう言うと、その女性は僕を学園長室へ連れて行った。


~学園長室~


「学園長、以前転入連絡のあった四条さんをお連れしました」

「ああ、通してくれ」

あれ、なんか声が若い?


「失礼します、学園長先生。」

「ようこそ四条君。私がここ霧生学園の長をしている、霧生一臣きりゅうかずおみだ」

そう言って振り返った学園長は、多分二十五歳そこそこの青年だった。


「学園長がこんな若者で驚いているかい?」

「あ、いえ、そのようなことは……」

内心すごい驚いてる。でも、この人なら確かに学園長だ、って納得もしてるけれど。


「まぁ、私も祖父からこの学園を継いでから今二十五歳だから、五年程しか経っていないからね。

 ようやくこの学校の運営にも慣れてきた、といったところだ。

 緊張しないで、リラックスして話してくれればいい」

学園長は言い、いすを勧めてくれた。


「あ、ありがとうございます。すごいんですね、学園長先生って。

 二十五歳で五年前と言うことは、二十歳の頃から学園を運営していたんでしょう?」

「ああ、まあね。といっても、

 最初の二年くらいはまだ生きていた祖父のアドバイスをもらいながらだったから、

 実質祖父が他界した三年前から、って事になるんだがね」

あ、地雷踏んじゃったかな。


「すみません。気が回らなくて……」

「いや、いいさ。……さて、ではあらためてようこそ、四条拓真くん。

 ところで、先程から気になっていたんだが君の髪が輝いているのはどういうことなんだい?」

「え?」

あ、シル。いつの間に僕の髪の中に潜り込んでるんだよ。

「……」

シルは僕の長めの髪の毛の中に潜りこんで、そろ~っと校長の様子を覗いていた。


「す、すみません、この子ちょっと人見知りが激しくて……」

「ほう、その子はドリアード、いや、シルフ(風の精霊)だね。

 名前はシルというのか。いい名前じゃないか。よろしく、シル」


「……♪」

あ、シルが微笑み返した。


「珍しいね、シル。初めて会った人ににっこりできる」

「~~♪」

ご機嫌みたいだ、よかった。


「ははは、私は仕事柄たくさんの妖精と会っているからね。

 妖精と勘違いされているんじゃないかな?」

「そうなの?シル」

「?」

「まあ、そんなことはいいさ。それにしてもキミは本当にその子に好かれているようだね。

 なついているのがよくわかる」

「あ、はい。昔からよく精霊にはなつかれるらしいんです、僕」


これが先生の言った、僕の特技(?)のひとつ、妖精と仲良くなること。

でも、あんまり役に立つとも思えないんだけどね。一応他にもあるけど。


「それでは、そろそろ教室の方へ案内しよう。もうすぐホームルームが始まる時間だ。

 そのときにキミを紹介してもらえば良いさ」

「あ、ありがとうございます!僕は、何組になるんですか?」

「ああ、キミは高等部一年・Aクラスに入ることになっているはずだ。

 それじゃ、案内するよ。こっちだ」

「わかりました、学園長」

僕は学園長の後について、クラスへと向かった。


~高等部校舎内・1Aクラス~


「それじゃ、僕は仕事があるから戻らせてもらうよ。頑張れよ、四条君」

「は、はい!がんばります!ありがとうございました!」

「よし、それじゃ、担任の児島先生に呼ばれたら入室しなさい」

「はい……」

その言葉を残して、学園長は学園長室へ戻っていった。うぅ、緊張してきた。


「それじゃ、入って来い、四条」

あっという間に呼ばれちゃった!

「は、はい!失礼します!」

と、ガチガチになりながら入室する僕。右手と右足が一緒に出ちゃってる……


「よし、それじゃあ自己紹介をしてくれ。」

「はい!僕の名前は四条拓真です。趣味は読書と妖精と遊ぶことで、出身地は四国です!

 これから、よろしくお願いします!」

「よし、これでコイツもこのH1Aのクラスメイトだ。仲良くしてやってくれ。それで、四条の席は……」

「先生、私の隣空いてますけど。」

と、活発そうな凛々しい女子の子が手を上げた。


「おお、そうか。それじゃ四条は天海の隣だ。

 天海、四条はまだ勝手がわからないだろうからいろいろ教えてやってくれ」

「わかりました。じゃ、これからよろしく、四条君。アタシは天海琴音あまみ ことね

わからないことあったら、アタシにどんどん聞いてくれていいからね。

といっても、アタシも新入生でクラスの位置とか覚えたばっかりなんだけど。」

「うん、これからよろしくね、天海さん」

と、僕が天海さんに挨拶したところで、先生がいきなりムチャクチャを言い出した。


「よし、じゃあ今日のホームルームは四条への質問タイムにする!全員異論はないな?」

いきなり!?

『異論ありません!』

しかもクラス全員即答!?


「それじゃ、各自聞きたいことを本人に直接聞いてくれ。俺はしばらく横で見てるからな」

ちょ!?さらに先生静観決め込んだし!

「あ、じゃあボクから!」

「いや、ここは私からでしょ!」

「じゃあ俺が!」

「「どうぞそうぞ。」」ってダチョウ倶楽部かこのノリ!(古いな~……)


「ちょ、ちょっと落ち着いて!一人ずつ!一人ずつ聞くから~~!!」

十分後、天海さんの尽力でどうにか収集がついた。


「じゃあボクから」

最初は小柄でおとなしそうな男子からの質問。

「四条くんってなんで東京に来たの?」

「あ、お世話になった春日部先生っていう先生がここを紹介してくれて。

 それでここに進学することを決めたんだ」


「じゃ次私っ!」

次は好奇心旺盛そうで小柄な女の子。

「ねぇねぇ、四条君ってカノジョいるの?」

「いないよ、まだ」

「じゃあ、好きな人は?」

「んー、いないね。今のところ」

「じゃあ私にもチャンスあるんだ~♪」

「あー、うん、機会があったらね……」


「おっしゃ、次俺オレ!」

今度はいかにも熱い感じの男子だな・・・。

「オマエ家どこ?寮に入るのか?」

「あ、うん。その予定。実は親戚とかぜんぜん居なくって」

「ほう、そりゃまたなんでさ?」

「実は僕、捨て子だったんだ。

 でも四国でさっき言った春日部先生に拾ってもらってどうにか学校には行かせてもらってたんだよ。

 一応保護者は春日部先生ってことになってるけどね」

「あ…悪い事聞いちまったな。」

「あ、べ、別に良いよ!僕が捨て子だって言うのは周りからいろいろ言われもしたけど、

 僕にとっては当たり前だったからべつに寂しくないし、気にしなくて良いよ!

 うん、僕が許す!だから気にしないで!」

「お、おぅ、ありがとうな、四条。」


それから十分くらい話していると、児玉先生から声がかかった。


「よし、そろそろ良いだろう。

 みんな、四条はさっき本人が言ったとおり捨て子だったそうだがそんなことは今の四条には関係無い。

 普通に接してやってくれ。それじゃ、ホームルームは終了だ。次の一時間目は……いきなり実技だな。

 といっても新入生の初授業だが。それじゃ、四条の道案内は、と。天海!

 隣の席のよしみだ、面倒見てやってくれ。」

「わかりました。アタシが案内とかしてあげますね。」


~実技講習場~


僕らが実技講習場に着くと、なにやら初老の男性が挨拶をしていた。担当の先生らしい。

「はい、はじめましてみなさん。私が実技を担当します、樋口耕介ひぐち こうすけです。

 では、まず最初に五人ほどのグループを作ってくださいね。」

その言葉で、僕らはグループに分かれることになった。


「えっと・・・誰と組めばいいかな・・・」

「四条くん、こっちこっち。アタシたちとグループ組もうよ!」

そういわれるままに作ったグループのメンバーは僕の隣の席の子……天海さんと僕、

それとさっきの自己紹介のときに最初に話した三人だった。


「グループには分かれましたね?では、とりあえず今回は全員で自己紹介でもしておいてください。

 グループ実技はお互いを知ることから始まるというのが、私の信念ですので。」


「……だってさ。じゃあアタシたちも自己紹介しとこうか。まずアタシから。

 アタシは天海琴音あまみ ことね。琴音って呼んでくれて良いよ。趣味はスポーツ全般。

 よく女らしくないとか言われるけどこれでもれっきとした女だから、

 そういうコト理解した上でヨロシクね」


「じゃあ、次ボクが言います。」あの小柄な男子だ。

「ボクは香坂乙こうさか きのとです。よく名前は読めないって言われますけどね。

 ボクの趣味は読書です。これから、よろしくお願いします」


「はいはーい!次私っ!」次は好奇心旺盛そうな女子。

「私は保坂美紀ほさか みきで~す!あと趣味は人間観察と情報収集で~す!

 これからもいろんな情報集めていくので、聞きたいときはぜひ聞いてね♪」


「んじゃ次俺か。」最後は熱血系男子の人か。

「俺は伊集院充いじゅういん みつるだ。趣味は格闘技だな。

 あとゲームとかも結構好きだから、オススメとか聞きたかったら聞いてくれ。これからよろしくな」


~そんなこんなで数分後~


「全てのグループで自己紹介は終わりましたね?では、授業に入りましょうか……ん?」

あれ、放送かな?


「現在実技棟に居る皆さん、至急非難してください!技術実習用の大型作業機械が暴走しています!

 皆さん落ち着いて、教師の指示に従って……」ブツン。

ん、いきなり放送が切れた……!?

と、そのとき、カベが吹っ飛んで重機が教室に突っ込んできた!


「「えええええ!?」」

綺麗にハモったなー、僕と天海さんの悲鳴・・・ってそれどころじゃない!


「先生、早く指示を……って!」

せ、先生が吹っ飛ばされて気を失ってる~!?

ど、どうしよう!?……て、あれ?この重機は。


「ちょっと、シル!この重機の中、居る!?」

「……!」

必死で頷いてる。やっぱりか!


とか何とか考えてるうちに重機がこっち向いてるし!

「きゃああああああ!」

「うわっ、こっちに来るなっ!」

っ!天海さんたちが取り残されてる!


「ちょっとまって!」

そう叫んで、僕はその重機の前に飛び出し、両腕を広げた。


「し、四条くん!?」

「バカ!なにやってんだ早く逃げろ!」

保坂さんと伊集院君が叫んだけど僕は重機に向き合ってこう言った。

『精霊たちの』言葉で。


「『汝、我の言葉に耳を傾けよ。汝の気を鎮め、其の姿を現せ』!」

すると、暴れていた重機の動きが停止した。


そして、その中から赤い光を放ちながらシルと同じくらいの大きさの狼が現れた。


「君があの重機の中に入っていたんだね。ダメだよ、あんなに暴れちゃ。

 遊びたかったら、ちゃんと姿を現して伝えないと。じゃないと、怖がられちゃうからね。」

「♪」

この精霊も落ち着いたみたい。もう重機も暴走しないだろうし。


「四条くん?もう、大丈夫なの……?」

「ああ、天海さん。大丈夫だよ。この子はもう落ち着いたから。

 みんなと遊びたかったみたいだね」

僕が言いその狼を見せると、みんな驚いていた。


「四条、コイツ、もしかしてサラマンダーか?」

「うん、そうみたい。もう叱っといたから大丈夫だよ。もう暴れない。

 うーん、でもこの子はどうしたらいいんだろう」


さて、これから、どうなるか。僕の波乱万丈の学園生活は、まだまだ始まったばかり。

これからも、いろんな事に巻き込まれるかな、これは……


続く。

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