ストンと腑に落ちた話〜お金の使い方〜
まだ私たちが付き合い始めた頃、
当時、彼女だった奥さんが同じ柄のタオルを二十枚買った。
私は目を丸くした。
タオルなんて一枚ずつ使って、古くなったら次を買えばいい。
そういう暮らしが“当然”だと思って生きてきた。
ノートも同じだ。奥さんはキャラノートを10冊まとめて買う。
私は一冊を使い切って、せいぜい予備のもう一冊を持つだけ。
それ以上は場所を取るし、無駄だと教わってきた。
だから、つい言ってしまったのだ。
「もったいないじゃん。無駄遣いじゃん」と。
責めるつもりはなかった。ただ、自分の感覚を言葉にしただけだった。
ところが返ってきた一言は、私の胸にまっすぐ刺さった。
「私の稼いだお金なんだから、どう使おうと勝手!」
その瞬間、胸の奥で何かが落ちた。
“怒られた”感じとも違うし、言い負かされたわけでもない。
ただ、あまりに筋が通っていて、私は思わず黙った。
反論も浮かばなかった。
むしろ、妙に納得してしまった。
自分で稼いだ金をどう使うか。
それは、その人の生き方そのものだ。
私がタオルを一枚ずつ買うのは、私の習慣であり、価値観。
ならば、当時、彼女だった奥さんが二十枚買うのも、
その人の習慣であり、生き方だ。
稼いだお金で自動車を買おうと、外食をしようと、贅沢で生活を満たそうと、貯金をしようと、投資をしようとそれは本人の自由だ!
私は「無駄遣いだ」と言うことで、
相手の金の使い道に、知らないうちに線を引こうとしていた。
そんなつもりはなくても、結果としてそうなっていた。
あの日を境に、私は一歩引いた。
相手の金の使い方に口を出さないと決めた。
そのきっかけは、あの日の言葉だった。
当時、彼女だった奥さんの生き方を、そのまま認めた。
その納得は、なぜか心を軽くした。
今でも覚えている。
あの「ストン」という感覚は、
喧嘩でも折り合いでもなく、
ただ価値観が正しく落ちる音だった。




