『観光立国の幻想 ― 日本は“安売りの国”になるつもりなのか』
ここ数年、観光、観光、インバウンド――と、
どこもかしこも同じ言葉が飛び交っている。
もちろん、観光が悪いわけじゃない。
来てもらえるのはありがたい話だ。
ただ、「観光立国」という言葉が妙に持ち上げられている空気に、
私は以前からずっと違和感があった。
日本は本来、観光で食べていく国だっただろうか?
“安くて安全な国だから観光客が増えている”という現状は
本当に喜ぶべきことなのだろうか?
そんな疑問を、雑談するみたいに正直に書いた。
経済の専門家でもなければ政治の人間でもない。
ただの一般人が、普通に生活していれば見えてくる“素朴な違和感”を
そのまま文章にしただけである。
気楽に読んでもらえればそれで十分だ。
観光、観光、観光――。
気がつけばどこもかしこも「インバウンド万歳」の大合唱である。
その言葉の明るさとは裏腹に、私はいつも違和感を覚える。
なぜ、そこまで観光に頼る必要があるのか?
観光客が増えて賑わっているのは本当に“良いこと”なのか?
そもそも「観光立国」という言い方自体、どうにも薄っぺらい。
だって、観光を国家戦略の柱に据えるというのは――
“他に稼げる産業がない国”が最後に選ぶ道だからだ。
それは世界を見れば一目瞭然だ。
タイ、フィリピン、モルディブ、ギリシャ、スペイン……。
決して悪く言うわけではないが、これらの国々は資源も工業力も弱く、
外貨を稼ぐ術として“観光”が最も効率的だからそうしている。
いわば「残された選択肢」が観光なのだ。
日本はどうだろう。
本来、日本は観光立国とは真逆に位置する国である。
世界を代表する製造業、素材産業、精密機器、自動車、ロボット、半導体材料。
過去から現在まで、日本の強さは工業にこそあった。
観光で稼ぐ国などではなかった。
では、なぜ今の日本は“観光押し”になってしまったのか。
理由は簡単だ。
日本が弱くなったからである。
ざっくり言えば、こういう構造だ。
賃金が上がらない
投資が減る
国力が低下する
円の価値が下がる
物価が安い国になる
外国人から見て「安い国ニッポン」になる
観光客が増える
→ それを見て「観光で盛り上がってるぞ!」と勘違いする
……これのどこが成功だと言えるのだろう?
観光客が来る理由が
「魅力的だから」ではなく「日本が安いから」
になっている時点で、もう構造的に危険信号なのだ。
本質的に、円安で観光が増えるのは“副産物”であって、
絶対に“国家戦略の本丸”ではない。
むしろ、日本国民の生活を犠牲にして成り立っている。
円安になれば輸入品は何もかも高くなる。
ガソリンも、小麦も、スマホも、日用品も――。
円安を「輸出企業が儲かるからいいじゃん」と言う人がいるが、
その裏で国民は確実に貧しくなっている。
本来、円高こそ国の信用力の証だ。
通貨の価値が高く、購買力が強く、
国民が安定して豊かに暮らせるということだからだ。
円高のほうがいいに決まっている。
「円高で困るのは一部の輸出企業だけ」で、
国家全体で見ればメリットのほうが圧倒的に多い。
むしろ為替はその国の“総合力”で決まるのだから、
政策で無理やり円安を作る必要なんて一切ない。
円高には“限界値”があるし、
その範囲を超えて極端に高くなる心配など現実的ではない。
だからわざわざ円安へ誘導するのは意味がわからない。
それでも政治は円安を推したがる。
理由は単純で、“数字が出しやすい”からだ。
輸出企業の業績が良くなる。
株価が上がる。
「景気が良くなったように見える」。
しかし、それは表面的な数字がちょっと動くだけの話であって、
国民の生活の実感とは全く結びつかない。
部分最適のために全体最悪を選んでいる構図だ。
観光で稼ぐのは悪いことではない。
観光そのものを否定したいわけじゃない。
観光によって地域が潤うこともあるし、
文化の発信として重要な側面だってある。
ただし、唯一の問題はここだ。
観光に頼らなければいけないほど、
国の産業が弱ってしまったという事実。
これを直視しないといけない。
観光で国が豊かになることはない。
歴史が証明している。
豊かな国は、観光に依存しない。
もし日本が本気で立て直すなら、
取り戻すべきは観光ではなく工業だ。
日本の強みは、観光資源ではなく“技術”にある。
研究、製造、素材、電機、ロボット、半導体。
そこに再び国家のリソースを注ぎ込むべきだ。
観光は“国の飾り”でいい。
国の基盤にはなりえない。
だから私は思う。
インバウンドで騒ぐ前に、
円の価値を取り戻し、産業を復活させるほうがはるかに重要だ。
観光は、余裕のある国がやればいい。
日本は、まずその“余裕”を取り戻すところから始めるべきだ。
読んでくださり、ありがとうございました。
書いてみて改めて思ったのは、
「日本がどうなるのか」という話は、
政治や経済の専門知識よりも、
結局は“生活者としての実感”がいちばん正直だということだ。
円安になれば生活が苦しくなる。
物価が安いと言われても、
それは外から見た話で、
中に住んでいる私たちにとっては
別に良いことばかりでもない。
外国人観光客にとって、日本の物価は安すぎるでも
日本国民にとっては、日本の物価は高すぎるのだ。
観光客が増えるのは悪いことじゃないけれど、
それが“国の柱”だと言われると、どうにも違和感が残る。
日本の強さは観光じゃなくて技術だろう――
そんな気持ちが、このエッセイを書かせた。
もし少しでも「わかる」「おもしろい」と思っていただけたなら嬉しい。
これからも雑談みたいな視点で、気になることを気楽に書いていきたいと思う。
また別のエッセイでお会いしましょう。




