郵便事故
郵便事故は他人事だと思っていた。
封書を送っても、荷物を送っても、毎回当たり前のように届く。
追跡番号のついたクリックポストなら、まず安全だろう——
そう思っていた矢先に、まさかの出来事に遭遇した。
ある日、保証会社の管理画面を見ると「書類未到達」の文字があった。
そんなはずはない。
クリックポストで送り、追跡番号も控えてある。
念のため番号を入力してみると——
追跡情報が「最寄りの集配局」から動いていない。
嫌な予感がして、関係各所に連絡を入れた。
書類の期限が迫っている以上、郵便局の調査を待っていたら間に合わない。
お客様には申し訳なかったが、もう一度書類を書いてもらい、すべての手続きを先に進めた。
「こちらが紛失したのでは?」と誤解されかねない状況だったが、他に選択肢はなかった。
後日、郵便局から正式な回答が届いた。
要約するとこうだ。
——調査したが、どこにもありませんでした。
クリックポストは追跡番号があり、各局で読み取りが行われるため、封書より紛失しにくい。
にもかかわらず行方不明になったということは、局内で何かしらの予期せぬ事故が起きたのだろう。
その“内部の様子”は書類にはもちろん書かれていない。
が、想像することはできる。
例えば──
郵便局の担当者が棚をひっくり返す勢いで探し、
班長が「もう一回、コンテナ全部確認して!」と指示を飛ばし、
ベテランが無言で仕分け機の下を覗き込み、
夕方になっても「……無いな……?」と誰もが固まっている姿。
最後には班長が頭を抱えながら
「クリックポストで紛失って……マジか……?」
とつぶやくような光景。
そんな情景が浮かんでしまうほど、
クリックポストの紛失は珍しい。
とはいえ、保証はないし、送料も戻ってこない。
確かに損は損だが、実害は再発行でカバーできた。
不思議と腹も立たず、むしろ「人生で一度は遭遇するのかもしれない」と静かに受け止める気持ちになった。
珍しい経験を、ひとつもらっただけのことだ。
郵便事故は統計上わずかに存在するものだが、
まさか自分が遭遇するとは思わなかった。
追跡番号つきでも、絶対安全ではない。
そう知った上で、それでも淡々と処理し、期限内に終わらせた自分の判断は正しかったと思う。
もし誰かの参考になるなら幸いだし、
単なる読み物として楽しんでもらえたなら、それもまた良し。




