ヨミ様とGoogle —— 二つの世界征服のかたち
子どもの頃に見ていた悪の組織は、
軍隊を作り、怪獣を送り込み、世界征服を狙った。
ところが大人になって振り返ると、
本当の世界征服はもっと静かに、
もっと穏やかに、
そしてもっと確実に進んでいた。
その気づきから、このエッセイが生まれました。
「世界征服」と聞くと、私たち世代の多くはまず ヨミ様 を思い出す。
そう、『バビル2世』でバビル2世に挑みつづけた、あの冷徹な天才だ。
ヨミ様の征服方法は実にわかりやすい。
軍隊を組織し、怪獣兵器を操り、各国の政府をねじ伏せ、
武力と恐怖で人類を従わせようとする。
昭和の少年心が震える、“力による支配モデル” だ。
ところが現実の21世紀に登場した征服者は、
この型をまるごと無効化してしまった。
その名は Google。
Google は世界征服を宣言しない。
武力も軍隊も作らない。
国家に牙をむくこともない。
むしろ人類に“便利さ”を配りながら、
その裏側で世界の中枢に静かに入り込み、
気がつけば誰も抗えない“構造”を完成させていた。
Google が征服したのは国土ではなく、
情報 と 行動 と 生活の習慣 である。
検索。
地図。
スマホ。
YouTube。
広告。
メール。
これらはすべて、現代の社会インフラそのものだ。
「Googleが止まったら生活が止まる」
という人は、世界の人口の半分以上いるだろう。
ヨミ様が支配しようとしたのは
“国家と人間の身体” だった。
Google が支配したのは
“人間の思考と行動データ” だ。
昭和の征服者は力で世界を奪おうとした。
令和の征服者は、人々に便利さを配りながら、
誰も気づかないうちに“世界の基盤”を握っていた。
世界征服には、
暴力で殴りかかる方式もあれば、
便利を与えて生活の中に入り込む方式もある。
ショッカーやヨミ様だけが世界征服者ではなかった。
私たちは今、
非暴力の世界征服が実現してしまった時代 に生きている。
もはや「敵の秘密基地を破壊する」では意味がない。
現代の征服者は、基地ではなく、
私たちの 検索窓 と 地図アプリ と 視聴履歴 のなかにいる。
そしてその支配は、
恐怖ではなく、
不便さへの恐怖によって成り立っている。
「Googleがない生活は考えられない」という言葉こそ、
令和型の世界征服が完了した証なのだ。
子どもの頃に見ていた悪の組織は、
軍隊を作り、怪獣を送り込み、世界征服を狙った。
ところが大人になって振り返ると、
本当の世界征服はもっと静かに、
もっと穏やかに、
そしてもっと確実に進んでいた。
その気づきから、このエッセイが生まれました。




