衝撃の事実
辺りは夕焼けに染まり、買い物中の主婦や部活帰りの中高生で溢れる商店街を抜け、俺は照人達と約束していたゲームセンターに着いた。
リズムゲームコーナーに向かうと女子二人と仲良く話をしている照人が目についた。照人の後ろに優月が落ち着き無くソワソワしているから同情する。陰キャには辛い状況だ。
別の高校かな、制服が俺らの物と違う。
相変わらず照人はモテる。落ち着きのある整った顔に誰にでも明るく振る舞える心の強さ、相手を受け入れる心の広さと深さ、人として男として尊敬するよ。
唯一の欠点は、幼馴染で彼女の菜染に対する嫉妬がすごいことかな。まぁ、それほど彼女のことが好きだという証明なのだけど。
俺は二人に話しかける。
「ごめん、遅くなった。」
俺に注目が集まる。顔が熱くなるのを感じるが我慢だ。おもちゃを試す絶好のチャンス。
照人がにこやかに笑いかけてきた。妖使さんの笑顔とは違う暖かい。
「遅かったな、トゥーアイ。何処で油を売っていたんだよ。」
こんな状況で俺のあだ名を平気で言えるから照人の心の強さには感心させられる。
「トゥーアイは恥ずかしくからやめてくれって言っているだろう。」
顔がより赤くなる。耳が熱い。
照人には、そうだっけーと笑いながら流されてしまった。
俺は近くにいた女子に話しかけた。妖使さんに比べれば大きそうだ。いや何がとは言わないが。
「は、初めまして、俺は合目 幸助っていいます。名前何ていうんですか?」
勇気を振り絞った俺に俺は感謝する。
「うちは、佐々木 桜って言います。よろしくね。」
これこれはご丁寧にと挨拶された。
よし、これで条件は整った。俺は彼女に向かってバイパスを通そうと伸ばした。しかし、バイパスは硬い何かで弾かれる感覚があり、失敗したのだと理解する。
力を集中すると彼女の胸が硬い物で覆われている感覚がある。そいえば妖使さんが契約を結ぶとき他にも条件があると言っていた。俺の力にも他に条件があるのかもしれない。嘘だろ何だよそれ聞いてないよ。
俺は膝から崩れ落ちそうになるのを必死でこらえた。
固まっている俺に女子が不思議そうに話しかけてきた。
「どうしたの気分でも悪くなった?」
俺は慌てて、取り繕う。しかし、うまく言葉が出ない。あまりのショックに思考が回らない。
焼けになって何度かバイパスを通そうとするが弾かれる。
挙動不審な俺を見て、彼女の胸の鎧がより一層固くなるのを感じる。
なるほどバイパスを通すにはある程度相手に信頼されるか心を開かせるか、とりあえず仲良くなる必要があるようだ。
慌てる俺を見て照人が割って入ってくれた。
「どうしたんだ、トゥーアイ。いつもは平然と何でもこなすのに。彼女が可愛くて緊張でもしているのか。」
助け船を出してくれたのはありがたいが、返答に困るよその質問。
俺は、そうだねと苦笑いしながら答えた。
「ありがとう、でも全然気持ちがこもってないよ。」
彼女の心が離れていくのを感じる。時間制限があるのか、もう駄目そうだ。
「それにトゥーアイって変なあだ名だね。何て言うのチューニビョーだっけ、恥ずかしいよ。」
彼女たちは、俺の挙動不審に不安を覚えたのか、何処かへ行ってしまった。
「何だよあいつら、俺がせっかく付けたあだ名を恥ずかしいだなんて失礼しちゃうぜ。まぁ、元気出せよトゥーアイ。お前の勇気、俺は感動した。」
「そうだよ、凄かったよ。僕には出来ないよ、あんな恥ずかしいこと。」
照人は俺の肩を叩きながら慰める。優月は、俺を励ましているつもりだろう。
しかしよ照人、俺は何度もそのあだ名は恥ずかしいと本当に言っているし、優月にいたっては追い打ちだ。
こんな力、陰キャの俺には使えないよ。宝の持ち腐れだな。
体の力が一気に抜けその場にしゃがみ込んでしまった。