26.物置部屋(4)
(もおダメだ)
と、カナコが思ったそのとき
「ちぇぇぇっ!」
ネズミたちを食い止めたのは
「あっ!土人形!」
焼き鳥用の竹串を手にして、ネズミとカナコのあいだに立ったのは、あの粗末な土人形だ。
「ええいっ!あなたはいったいこんなところでなにをしておられる!?あなたには、ほかになすべきことがあるであろう。早う蔵におもどりなされよ!」
「で、でも、どうやって?」
「それがしが道を開こう!さあさ、はやく!——ええい!チュウチュウとやかましいガリガリめらめ!近よると、この鋭に研ぎすまいた槍をくらわせるぞ!」
土人形は自分の粘土の皮がぽろぽろと砕け落ちるのもかまわず竹串をふるってネズミたちを遠ざけ、カナコを穴に誘導する。
「さあさ。それがしが後駆をひきうけた。はようお行きなされ!」
カナコは、自分を守ってくれるその背中に思わず問いかけた。
「なんで、こんなことまでしてくれるの?」
「——あなたはそれがしにとって長年待った希望でござる。このようなところで、もたつかさせるわけにはまいりませぬ!」
物置部屋からせまいすきまに押し込まれるように出されると、ネズミたちが追いかけてこれないように壁となってくれた。
理由はやっぱりよくわからないけど、土人形の好意をむげにすることはできない。
「ありがとう!やられないでね!」
と言いながら、カナコは蔵への道をいっさんに駆けもどった。
(はやく、蔵にネズミたちがおそってくることを伝えないと!つづらの中にいるユウジもあぶない!)




