表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人形蔵ものがたり  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/39

14.ふたたび蔵へ(3)

 するどい声とともにすがたを見せたのは、狩衣・烏帽子をまとった高貴な公達(きんだち)人形だった。

挿絵(By みてみん)

 男雛(おびな)だ。

 昼間の箱では見かけなかったけど、封印を解かれた女雛と対をなすものにちがいない。後ろには若者と老人、ふたりの随身(ずいじん)人形がついていた。


「これは若さま。また、いかがして、かようなおそいころに外へ?」

 藤波が頭を下げて申し上げると


「決まっておるであろう?朝霧丸(あさぎりまる)の探索じゃ。それに見回りもあわせてな。なにぶん、いつガリガリどもが攻めてくるやもしれぬのでな」


 ——アサギリマルって、なにそれ?おすもうさん?それにガリガリって?アイス?


「若さまみずからのお見回りはお危ないともうしたのですが……」

 白髭(しろひげ)をなづりながら言う老人随身に


(じい)は、気苦労ものじゃ。蔵を守るのは男人形として当然のつとめじゃぞ」

「ははあ」


 どうも、男雛はきれいな顔に似あわず血気盛んな人形らしい。

 カナコに目をやると

「そのトカゲはどうした?……なんじゃ、奉公?そやつを蔵に入れる気か?ならぬ、ならぬ。そのように見てくれの()しい、むくつけなものが()っては姫も気疎(けうと)がられよう」

 と、よけいなことを言う。


 しかし

「そうではございましょうが、なにせ今はお節句に向けまして雛道具をみがく手が足らぬと、双葉(ふたば)どのも申しております」

 藤波のとりなしに


「う——む。そうか、ならばやむをえんか。——そうじゃ、折り紙の体というのはちょうどよい。その身をつかって道具を()かせればよいではないか。その身が破れるまでつかってやれ」

 と、乱暴に言い放った。


 いやなもの言いだ。この若さまは気が荒い。

 しかし、おかげでなんとかカナコの蔵づとめは認められた。


「ではよいな。余はもう参る。ついてまいれ」

「はは」

 と、三体の人形は外に出ていった。


「……おゆるしが出て良うございましたね、では中に入りなさい」


 官女につれられて、カナコはふたたび蔵に入った。

 弟を助け出すために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ