ようやく帰宅しました
そして少しして、マジーラさんの家に到着。アマミちゃんにしては珍しくドアの前にゆっくり着地してくれた。いや、性格が変わったのでこれが普通になるのかもしれない。と言うよりこれが普通であって欲しい!毎度毎度壁やら窓やらドアやらに突っ込まれちゃたまったもんじゃない!なお、結局のところアマミちゃんの方向音痴はカオスなままであり、何処へ飛んでいるのか聞いたところマジーラさんの家とは真逆の方向に飛んでいたため若干到着が遅れた。
「ふう。マジーラさんいますか?」
ようやく我が家である。あー、厳密には居候しちゃっているだけだから違うのかもしれないけど。でもやっぱり帰る場所があると安堵する。
「お?帰ってきたか。どうだった?」
「どうもこうも大変だったんですよ。まず…」
「まあ、とにかく一度テーブルにつきな。」
僕らは台所のすぐ横のテーブルにつく。マジーラさんは僕が買い溜めしている牛乳を注いできた。なお、太りたくはないので低脂肪である。慣れてしまえばこちらでも充分。
「で、結局どうだったんだ?」
「まあ、本当に色々ありまして…」
ドワーフに武器の商売で捕まるわ、帰りはどしゃ降りで立ち往生するわ、山賊に襲撃されて大惨事になるわ滅茶苦茶だった。
「報酬については後日ギルドから受けとることになっています。あれだけ命懸けで商人を守ったんです。二人で30万じゃ足りませんよ。あ、でも確か生き残った山賊は奴隷か何かで売ると言っていましたし、この往復で素材採取や商売もしてきましたので最終利益は60万くらい行くんじゃないでしょうか?」
マジーラさんは若干驚きつつも、なにか考え事をしている。
「どうかしましたか?」
「あー、いや…利益については分かった。個人的にはそれでもまだ足りないが初回でそれだけ稼げれば充分過ぎるだろう。後、愚痴については未だあるのであれば聞くことにする。まだ若いんだ。色々言いたいこともあるだろうさ。でだ、さっきからアマミが全く喋っていないんだが…どうかしたのか?具合でも悪いのか?」
「あー、それは…えっと…」
その時、机の上にアゲちゃんが現れた。勿論死体である。
「…成る程。何が言いたいかは分かった。」
ミネガル先生と言いマジーラさんと言い物分かり良すぎない?
「山賊に殺されたか?それにしては傷がない気がするが。」
いや、分かっていなかったわ。て言うか逆にこれで寿命って分かった方が怖いわ!
「ミネガル先生…要はアマミちゃんの先生曰く寿命だそうです。」
「…寿命が短いって知っていたらもっと一杯触れ合ったんです…。」
「そうか…アマミがここまで落ち込んでいるとなると相当ショックだったのだろう。とは言え、生き物はいつか死ぬものだ。少なくともいつかは自分ともミズハともお別れが来るかもしれん。」
「500歳の魔法使いが言うと説得力がありません。」
「何故そうなる?」
「ほぼ不死身じゃないですか?」
と言うよりは、マジーラさんはどうして500歳らしいのに見かけがまだ20代前半なの?魔法使いが住む町に行っても本来だったら70代で充分お祖父ちゃんお祖母ちゃんだったよ?
「この際自分は横に置いておいてくれ。とにかくだ。くよくよしていてもしょうがないだろう?明日には明日の風が吹くと言うものだ。そのメガアゲハだってアマミがここで止まってしまったら悲しむだけだろう?」
マジーラさんはメガアゲハを危険な魔物と危惧している。それでも今ここでメガアゲハが死んで良かった見たいな発言をしない辺りちゃんと空気は読めていると思う。
「…アゲちゃん。はい、そうです。私は魔女です。時には決別も大事です。まだ仕事があるんです!」
そう言うと、アマミちゃんは台所の方に何かを取りに行った。その様子を僕とマジーラさんが見ている。
「ミズハ?質問良いか?」
「ご自由に。」
「アマミは…何か変わったか?あーあれだ。恐らくメガアゲハを失ったと言うショックもあるんだろう。だが、今までと比べると何だか落ち着き過ぎていると言うか…違和感しかない。」
「僕もそれについては賛同です。僕的にアマミちゃんは山賊に本来なら数十回死んでも良いくらい頭を殴られたのでそれで何かが変わってしまったんじゃないかとは思います。根拠はありませんが。」
「そうか…分かった。とにかく自分もまさか人生で魔女の子供を育てることになるとは思っていなかったんだ。何か有るのかもしれん。」
マジーラさんには先程アマミちゃんが死にかけたことは話したので現在はそこまで驚いてはいない。初見の時は逆に顎を外していたようでなにもリアクションがなかったんだけど。そのうちアマミちゃんが僕らがいるテーブルに戻ってきた。片手にスプーンを持っている。