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教員の指導方法がエグすぎる件について

「いい加減にしなさい。」

「ふぉえ?」

「え?」


 振り向くとミネガル先生がいた。ミネガル先生は暫く僕らを見ている。あからさまに何かしらのネタバレをしそうな目である。


「二人とも?蝶の寿命は知っているかい?」

「蝶の寿命ですか?いえ…そういう文献はあまり読まないので分かりません。」

「蝶は…この際アゲハチョウで説明するが、生まれてから幼虫の期間が大体2週間ほど。サナギになった後、成虫として飛び回るのが大体2週間だ。ミズハなら大体何が言いたいか分かるだろう?」


 寿命の話?蝶の成虫は2週間程度の寿命らしい。えっと、アゲちゃんを拾ったのは大体1週間前。


「もしかして寿命とか言わないですよね?メガアゲハって魔物じゃないんですか?」

「それは勿論魔物の場合寿命が異なる場合もある。逆に言えばそのままの場合もあるとは考えられないかい?」


 仮にそれが正しいのであれば説明はつかないわけではない。成虫になって1週間程度でアマミちゃんに拾われたなら充分可能性はあり得る。アマミちゃんは現状完全にうずくまって大泣きしてしまっている。アマミちゃんにしてみれば複雑中の複雑のはずである。死者は生き返らない。多量の生き物を治療し、回復魔法が効かない生き物もこの数日だけでも体験してきたはずである。恐らくその意味を一番理解しているのは他でもなくアマミちゃんのはずである。そのアマミちゃん自身がありとあらゆる手段を尽くしてアゲちゃんを治療して動かない。結果なんて子供でも分かる。ただ、アマミちゃんは短い期間ではあったがアゲちゃんを一番世話してきた。それこそ体を売ってまで。そこまでしてきた云わば友達とも言える存在が急に一切動かなくなってしまったのである。受け入れれるはずもない。完全にパニックになっているアマミちゃんを見て僕は逆に怒りが込み上げてきた。


「ミネガル先生。お伺いしたいことがあるのですが宜しいですか?」


 立ち上がりながらミネガル先生を見る。


「そんなに畏まってどうしたんだい?」

「先生はメガアゲハの寿命についてある程度予測していたのではありませんか?出なければ、急に死んでしまったアゲちゃんの死因をここまで早急に言い切れるとは思いません。」

「ミズハさん…言わないでください…。死んじゃったなんて言わないでください!!!」


 う…つい口が滑った。


「その反応が示せると言うことは、アマミはアゲちゃんが死んだと判断したんだね?」

「う…ち、違うんです!まだ、何か方法がはずなんです!もっと強い魔法を使えば…」

「さっきから自分をもっと大事にしろと言わなかったか!!」

「その前に僕の質問に答えてください!知っていたんですか!!」


 空気が完全に凍りつく。ミネガル先生は僕を見て若干怯えた表情をした。恐らく、僕が戦闘形態に入ったため若干目が水色に光っている可能性がある。


「ミネガルさん?ミズハさん?アマミさん?皆さん落ち着きませんか。感情をぶつけるだけでは何も解決しませんから。」


 見かねたミカオさんが僕らの側によってきた。僕は再びしゃがみこみアマミちゃんの方を見ながら頭を撫でる。僕自身アマミちゃんを慰める言葉が全く思い付かない。そのイライラをミネガル先生にぶつけようとしている。


「はぁ。結論から言えば知っていたよ。と言うよりは、予測していたが正しいか?私も伊達に教員をやっているわけではないのでね。」


 沈黙を破ったのはミネガル先生である。僕自身、アマミちゃんがずっと泣いてしまっているので若干もらい泣きをしてしまっている。アマミちゃんのペットでアマミちゃん並みに厄介なアゲちゃんではあったが、いざ振り返ってみると良い思い出である。


「だからある意味で飼うことを許可したんだ。魔物は人間を襲う存在。上手く飼い慣らした所で安全と言う保証はない。だが、寿命が短いのであればそこまで長期に渡り飼う必要性もないからね。」


 僕はミネガル先生の意図を聞こうと必死である。感情の大半がアマミちゃんに持っていかれているなかでミネガル先生の意図も組んでおかないとアマミちゃんを蘇生させる方法が分からなくなる可能性がある。


「とは言え、魔物と人間が触れ合ってはいけない等と言うものもないからね。であれば、アマミなら魔物と触れ合った際どういう風にするのか知りたいと言うものがあった。取り分け、魔物と知っただけで拒絶するものも居ただろう?駆除しようとするものも居ただろう?命を大事にすることを一番にしているアマミならどういう風にするのか興味があったし、逆に回りは魔物をどのように見ているのかアマミも理解するのには良い勉強になると思ったわけだね。後はアマミはもう少し命と言うものを、物と言うものを…その尊さを知って貰いたいと言う意図もあった。いや、アマミであれば結局のところ命も物も大切にすることは知っている。出なければ、教室を壊したり誰かを傷付けた際馬鹿みたいな魔法を使ってまでも全て直す…いや、必要以上に治療したりはしないだろう?ただ、それだけの魔力がある反面大切なものを見失ってしまっているんじゃないかと思ってね。世の中大半は壊れたらそのままだし…いや、直せたとしてもの物凄く時間が掛かるし…助けたくても助けれない命も沢山あると言うことをだよ。それを教えるにはこのメガアゲハは良い教材だと思ったわけだね。」


 途中からはミネガル先生は僕らやミカオさんを一切見ることなく腕組みをしながら独り言みたいに呟いていた。僕はそれを聞いて唖然しか出来なかった。何せミネガル先生が言った内容は確かに殆どと言って良いほどアマミちゃんは経験した。しかも最後の突然死である。アマミちゃんの心にはぶっ刺さったに違いない。

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