チートの魔女でも出来ないこと
パサッ…うん?今何か軽いものが落ちたような気がするけど…?
「あ、すいません。お二人さん?ちょっとお話ししたいのですが宜しいでしょうか?」
「え?何ですか?」
依頼主の商人一人に声をかけられた。
「あー、どう行ったご用件ですか?他にもまだ依頼が残っていましたか?」
「い、いえ…そういう訳じゃないのですが、そちらのお嬢さんの荷物を仕舞える魔法について少々お話が…」
「そう言うことはアマミちゃん本人に聞いてください。…アマミちゃん?どうかしたの下を見つめて。」
アマミちゃんは無言のまま動かない。僕は取り敢えずアマミちゃんの目線を追う。目線の先には…アゲちゃんが落ちていた。
「アゲちゃん?どうかしたんですか?」
アマミちゃんがしゃがみこんでアゲちゃんを拾う。メガアゲハは体長50cmあるので羽でない部分も大きい。アマミちゃんはアゲちゃんのお腹辺りや足辺りを突っついている。…一切動かない。
僕は完全に何が起きたか理解した。この体質だもん。分からない方がおかしい。
「申し訳ありません。そのお話は改めてでも宜しいですか?ちょっと急用が出来まして。」
「いえいえ、冒険者は色んなところに出張しますし拠点も公開して貰えないことも多いので今のうちに…」
「アゲちゃん?どうしたんですか?しっかりするんです!」
アマミちゃんが急に緑色の魔法陣を展開した。アマミちゃんを中心に半径3m程である。僕も話しかけてきた商人も範囲内である。
「なな、何がどうしたんだ?!」
「すいません!今すぐ魔法陣から離れてください!危険かもしれないです!」
「だ、だが…」
「早く!!」
声掛して来た商人は一目散に魔法陣から離れた。僕も魔法陣から遠ざかる。ただ、出来るだけアマミちゃんの側にいたいので魔法陣ギリギリのところを陣取った。まだ帰っていない冒険者はや商人、御者一向全員アマミちゃんとその魔法陣を見ている。
「お、おかしいです。この魔法陣では効果がないんですか!だったら次はこれです!」
今度は黄色い魔法陣が半径1m程度で展開された。ただ、魔法陣はアゲちゃんの上下で2つ展開されている。
「ヌー…これでも駄目なんですか!だったらこれです!」
アマミちゃんが色んな魔法を試し始める。僕が付いていけていないんだもん。他も人も付いていけるはずがない。
「ど…どうしてですか…。何でですか…?私が悪かったんですか?無理して色々作って貰っちゃったからですか…?餌やりはちゃんとしたは…ずなんです。好きなだ…け与えたんです。危険なと…きには離れ…るように説明し…たはず…なんです。有り…得ないんです。目を…覚ますん…です!!」
どんどん涙声になっていくのが嫌でもわかる。そのうち、魔法陣は完全に消えてしまった。アマミちゃんは地面で土下座する形で完全に丸まってしまっている。
「どうして…ですか!どうして…目を覚まさないんで…すか!魔女の魔法は…何でも出来るんじ…ゃないんで…すか!私がまだ…未熟だからな…んですか!アゲ…ちゃん目…を覚ますんで…す!起きる…んです!何…でもするんで…す!一日中で…も一週間…でもくっついてあげ…るんで…す!育て…方が間違えていたら全…部直すんで…す!だから…起きるんです!お願…いなん…です!ウワーーーーーーン!!!!」
何が起きたかは恐らくアマミちゃんも分かっているんだと思う。現にアゲちゃんの力はここにはない。恐らく既にこの世にはない。魂はそこら辺にまだ有るかもしれないけれど、僕は魂を関知できるわけがない。黙っていてもしょうがないので僕はアマミちゃんの横に行ってしゃがみこむ。魔女帽子が邪魔なので僕の頭の上に乗せておく。魔女帽子は大きいので帽子を被っている僕の頭でも充分被れるからね。そしてアマミちゃんの頭を撫でる。
「アマミちゃん?そんなに自暴自棄にならないで。アマミちゃんは悪いことはしていないはずだよ?それにアゲちゃんだってアマミちゃんにお世話されて嬉しかったはずだよ。じゃなかったら今まで一緒について来るはずないもの。」
「で、でも…結局起きないんです。私がもっと面倒を見ていれば…もっと沢山魔力があれば…もっと沢山魔法…を知っていれば助けれるかもしれない…んです。私が弱いからいけないんです。私がもっとしっ…かりしていな…いのがいけな…いんです…私が…」
アマミちゃんが弱いに定義されたらこの世の中の魔法が使える人全員顔真っ青だよ!