無理ゲー過ぎるんだけど
「あ、有り得ないぜ…?このガキに不可能は無いのか?」
「あー、攻撃魔法は苦手ですし剣なんて使えませんよ?…うん?」
ちょっと待って…もし万一、襲ってきた山賊がアマミちゃんの能力を知っていたらどうなる。…まさか、前からずっとマジーラさんが恐れていたことが起きつつあったりしないよな?
「えっと、とにかくアマミちゃんの異空間魔法は何でも入ります。それこそなんでも。生きているものを入れると死ぬようですが。」
「本当に何でもなのか?」
「家も可能なんです!えーっと…よくわからないんです!」
「とにかくですが…どうやら山賊が狙っているのはアマミちゃんの可能性が高いです。この異空間魔法です。商人であればある程度何を言いたいか分かるかと。」
「…確かに。こんな子が私の助手や部下として雇えたのならば考えただけで飛んでもない利益になる。」
「おい、だったらお前のところにやらないぞ。俺の方がその分給料を多く出す。」
「おいおい、お前は年頃の娘を扱えるのか?俺にはそれぐらいの娘がいるから友達感覚で来て貰って…」
「ウルサイ!!!そんな時間はないって何回言ったらワカルンデスカ!!!」
「ギャー!お兄ちゃん目が水色に光っているんです!脅しちゃいけないんです!」
一瞬で全てが白けた件。空気が完全に硬直した感じである。最早商人、御者とロックさん、リネーラさんも完全硬直である。アゲちゃんも飛び上がった。
「イイデスカ!!アマミちゃんの命が狙われているんです!!アマミちゃんが死ねば異空間の物もおじゃんなんですよ!!ここで奪い合ってどうするんですか!!喧嘩や下らない議論は他所でやってください!!僕は今ここでの生還方法を考えているんです!!アマミちゃんの生還方法を考えているんです!!商人や御者、ロックさん、リネーラさん全員の生還方法を考えているんです!!妨害するなら誰構わず出ていってください!!」
ハァハァ…もう疲れた。こんなことになるならやっぱりやるべきではなかった。下らない。
「2つだけ言わせて貰うぜ?」
「何ですか?」
「1つだ。誰も今の状況を何とかしたいと思っていない奴はいない。現実逃避しているやつがいるかもしれないが…だからそんな切れるな。あと2つ目だが、ミズハ?お前の発言にお前が助かると言う選択肢は入っているのか?」
「う…」
今自分自身完全に目が泳いだことが嫌でもわかった。
「ミカオさんもミネガルさんもお前のことについてはそれだけ特に心配していてな。この配属にするに辺りリーダー格の俺が配置された理由でもあるわけだな。」
「じゃああれですか?ロックさんはアマミちゃんを見殺しにすると言っているんですか?」
「俺の任務は誰の犠牲者も出さずにミカオさん、ミネガルさんに合流することだ。俺もまだ詳しいことは経験積んでねえから分からねえ。ただこれだけは言えるぞ。少なくとも俺は誰も犠牲には出さねえな。俺自身もだ。」
一瞬の静寂が走る。
「出来るんですかそんなことが?第一ロックさんもリネーラさんも商人達を助けるに当たって充分に自分達を犠牲にしていたではありませんか?」
「それはやってみなきゃ分からねえからな。」
「でも実際に…」
「えっと、ミズハ君で大丈夫かな?ロックさんが言いたいのは計画を立てる時くらいは全員が無事に助かる方法を考えるべきだと言っているのよ?」
「で、ですがそんな理不尽な計画を考えている余裕は…」
「お兄ちゃん!私は大丈夫なんです!お兄ちゃんはお兄ちゃんなんです!無理して全てを抱える必要なんて無いんです!お兄ちゃんが潰れてしまったら私も…私も…嫌なんです…嫌なん…です!!」
アマミちゃんの涙が何となく沸騰していた僕自身の頭を冷やしてくれているような気がした。
「分かりました。ロックさん。全てを任せて大丈夫ですか?」
「全ては困るぜ?お前だって剣士なんだろ?流石にミカオさんやミネガルさんと合流する前に山賊に出会っちまったら戦ってもらわねえとな。」
「そうですか…そうですね。なら…」
一瞬で商人や御者が全員倒れた。
「え?」
「何が起きたの?」
「ギャー!何してくれるんですか!」
僕は帽子をロックさんに投げつけた。
「痛てえな!何して…嘘だろ…?」
アマミちゃん流で言うならばロックさんの前に美少女が立っていましたと言うところかな?
「僕の性別のことも考えて頂けませんか?」
ロックさんが完全に硬直してしまった件。僕は元々背中からお尻付近まで髪の毛が長い。全て帽子に突っ込んでいるだけ。帽子を脱げば必然的に僕の性別はばれる。
「嘘だろ…こんな子が、冒険者パーティーに紛れて…」
「考えてくれますか?」
「あ…ああ…考えるぜ。待ってな。リーダーの意地を見せてやるよ。」
「フフ…よろしくお願いします。」
と言って、僕は帽子を被って商人や御者に力を元に戻した。直ぐに商人達は回復して何が起きたみたいなことを話している。
「お兄ちゃんもう少し手加減するんです!死んじゃうんです!」
で、しばらくの間僕はアマミちゃんに怒られました。立場逆転である。メデタシメデタシ。え、こんな区切りの悪いところで終わらすなって?