流石に魔女も耐えれなかったらしい
「大変なんです!さっきより燃えているんです!」
荷馬車は完全に火の粉をあげて燃えている。商人や御者はここにはどうやらいないみたい。力の気配的に多少離れたところに避難できた模様。恐らく時間稼ぎが出来たんじゃないだろうか。最も、時間稼ぎをした当事者は完全にどちらも倒れている。
「おいおめえら!とっとと荷馬車から運べるだけ運んじまいな!」
「兄貴?それが、大きさのわりには荷物が少ねえですっせ?」
「ッチ、折角良い情報が入って乗ってやったって言うのについてねえな。で、幼女はいたか?」
「それもいねえぜ?こいつらに吐かせた方が良いんちゃう?」
上空にいても地上の声が聞こえているので盗み聞きしているんだけど、幼女?どう言うこと?こいつらは幼女を探しているの?現状幼女に心当たりがないわけではない。というか一緒に飛んでいるこの子以外いないだろ。最もアマミちゃん10歳ぐらいの見た目だから幼女は卒業していると思うけど。
「だな。荷馬車の情報の代わりにそいつを捕まえてきて欲しいと言うことだったからな。俺は約束は守るぜ?お前らはそのガキを探しな!絶対いるはずだ!」
おかしい。何故そこまで確信を持てる?普通、商人の荷馬車に荷物があるのは予想出来るけど、小さな女の子が乗ってるなんて1%はおろか稀レベルだろ。
「お姉ちゃん!助けるんです!死んじゃうんです!」
僕が頭を整理している中、下では尋問が始まっている。
「おい、どうせ寝たふりしてんだろ?起きろや!死にてえか!」
山賊の恐らく上の位の奴が、魔術師の女性の首をつかんで強引に立ち上げる。
「ぐ…ぐるじい…」
「おら!答えろ!この行商には少女がいるって聞いてんだ。何処やった?」
山賊が地面に女性を投げ捨てる。女性は首を押さえながらハァハァ言っている。
「は…話すわけ…ないで…ギャー!」
女性の太股に山賊の短剣が刺さった。
「ホラホラ?言わねえともっとひでえ目見るぞ?」
刺した短剣をグリグリ動かしているところまでは見えた。悲鳴が凄い。最早グロすぎて僕自身目をそらす。
「もう我慢出来ないんです!アゲちゃんはここで飛んで待っているんです!お姉ちゃん、行くんです!」
うわ!体が急に下へ引っ張られたんだけど!どうやらアマミちゃんがアゲちゃんを空中に置き去りにしたまま連中のもとへ突っ込んでしまった件。勿論アマミちゃんの箒に乗っている僕も巻き添えである。
「喧嘩は駄目なんです!武器を使うのは論外なんです!止めるんです!」
地面に着地した後、アマミちゃんが瞬時に手を山賊と女性の方に向けると短剣が消え去った。
「ああ…あああ…な、何で…来ちゃったの…」
最早女性は、涙で顔がぐちゃぐちゃである。足…いや、太股からからは血が吹き出している。間違いなく動脈が切れている。
「駄目なんです!全部治すんです!」
更にアマミちゃんが指を一振りすると女性の重傷の怪我が全て治った。
「な、なんだと…って、お前があいつが言っていた子供だな。おら、悪いことは言わねえ。死にたくなければこっちに来な!」
長の合図のもと10人ぐらいの山賊に囲まれた。全員なんかしらの武器を構えている。いくらなんでも、前後左右から襲われると僕だって都合が悪い件。こりゃとんずらしよう!僕自身も剣を抜く。
「どういう意図かは知りませんがアマミちゃんは渡しません。」
「あ?てめえには用はねえ。死にたくなければ武器下ろしな!」
背後から矢が飛んでくる気配を感じた件。僕はありとあらゆる能力を他者から奪う能力を持っている。現状関知能力だって携えているし、魔力はアマミちゃんから借りればいくらでも補充が可能。抜かりはないよ!矢は、僕が剣を振った勢いで一瞬で灰になった。叩き落とすのではなく灰にする。
「な?!なんだその剣は!」
「アマミちゃん?とんずらするよ?流石にこれじゃ勝てない。全員皆殺しにして良いなら別だけど。」
「とんずらってなんですか!殺しちゃいけないんです!お兄ちゃんは悪者になっちゃいけないんです!」
「とんずらって言うのは彼処にある荷馬車と倒れている仲間を連れて逃げることね。アマミちゃん?荷馬車の火は消せる?雨を降らせたりすれば消えるとは思うけど。」
とんずらの意味が全然違うって?似てるから良いでしょ!ちょっと荷が重いのとかあるかもしれないけどアマミちゃんに的確に動いて欲しいんだからしょうがない。
「消すんです!雨より簡単な方法があるんです!」
簡単な方法?…アマミちゃんが指をならすと一瞬で火が消え去った。
「荷馬車も一緒なんです!」
アマミちゃんがウインクすると荷馬車が消え去った。中にいた山賊は急に荷馬車が消えたため地面に尻餅をつく。
「痛った!」
「綺麗になったんです!」
いやいやいやいや…指ならして火を消したりウインクで異空間にものを移動したりするのはおかしいでしょ!最早、発動条件適当すぎる!って、突っ込んでいる余裕もなさそうか!
「な、何がどうなって…」
「貴方の相手は僕です。」
盗賊の上方が混乱しているうちに、颯爽と近づき剣の腹で思いっきり相手の腹に叩きつける。それこそ刃でやったら真っ二つになっちゃうからね!
「グハッ!」
そのまま、山賊は5m程吹っ飛んだ模様。
「失礼します。」
剣を閉まった上で、茫然としている女性冒険者と未だに倒れている男性リーダーを両脇に抱える。
「え…え?」
「アマミちゃん!こっちに…あー、もう!」
アマミちゃんに護衛がいなくなったので、連中が弓やら魔法やらないしは斬りかかったり殴りかかったりしようとしている。
「キャー!!怖いんです!」
「円柱結界!アマミちゃん!空飛んで!」
チュドーン!
「うわーん!!」
現状、アマミちゃんは箒に乗って空を飛んでいる。攻撃は結界の壁に当たって砕け散った。打撃攻撃を仕掛けた連中も結界に弾かれた模様。結界が円柱型なので底面部分にあえて結界を貼らないことにより上空からの脱出を可能にしておきました。