意味深な出来事が起こりました
「おい。俺にぶつかったのに謝罪もなにも無しか?」
「謝っているではありませんか?他に何が必要なのでしょう?」
「謝罪の気持ちが微塵も感じられないといってるんだ。ちゃんと土下座して謝りな?」
「なに言っているか分かりません。最近の人間はここまで心が狭いのですか?」
「おいおい俺を誰だと思ってるんだ?」
「喧嘩は止めるんです!死んじゃうんです!」
アマミちゃんの突っ込みは明後日だから置いておくけど、結構揉めているみたいだね。ただ、懸念点として少年が見た目に反して偉そうな件と女性が見た目に反して異常に強そうな件。と言うよりあの女性どう見ても頭に角生えてるぞ!
「珍しいですわ。鬼族ですわ。」
「鬼族?」
「そうですわ。鬼ですわ。確かオラクル領の側に鬼の集落があると噂に聞いたことがありますわ。最も、王都に近い側か、より国境に近い側か、森の方かは定かではありませんので厳密な場所は特定できておりませんわ。」
ここで新種来たー!早速分析分析っと。まあ、一個体だけだから誤差は結構あるかもだけど。えーっと、魔力は無しで力が人間の…10倍超えてるぞ!獣人の倍以上か。あれかな。魔法使いが魔力魔術師の10倍が平均だからその力バージョンか?うん?と言うより、これって非常に不味くないか?あの人間は要は鬼に喧嘩売ってるぞ!力が何倍とかは分からないにしろ少なくとも鬼かどうかは分かってるよね!角生えてるもんね!
「へえ、あまり私にけちつけるのはやめた方がいいと思いますけどね。」
「そうか?ちゃんと謝った方が身のためだと思うぜ?」
「駄目なんです!喧嘩は良くないんです!止めるんです!」
完全にあの少年鬼を煽ってるぞ?あれには恐怖とかそういう概念はないのか?
「どうしようかな。現状は様子見なんだけど。」
「早く止めた方が良いですわ!鬼に人間は勝てませんわ!」
シャロルさんがアマミちゃんのところに行こうとしたところでいよいよ少年が煽り始めた件。
「なんなら殴ってみろよ?おら?そうすればお前が今どういう立場にいるか分かるからよ。」
「貴方と言う人間は…私は弱い生き物に手を出すことは反対なのですが良いでしょう。受けれるものなら受けてみてください。」
「止めるんです!暴力反対です!」
なんだあの少年は?どういう思考回路があればああいう発言できるんだ?
ガキーン!
「え?これはどう言うことでしょうか?」
「ウワーン!アゲ…ちゃん苛め…なんです!酷いん…です!」
「なんだなんだこの糞ガキは?」
「こ、この魔法陣は…信じられませんわ!」
現状を整理してみる。煽り少年と鬼の女性の間にアマミちゃんが割り込んでいる。アマミちゃんは鬼の方を向いて両腕を横にして少年を守ろうとしている。
とはいっても、少年も女性もアマミちゃんより頭一個以上大きいので、女性の鬼が少年の顔を殴ろうとした場合必然とアマミちゃんよりアマミちゃんの帽子の方に拳が延びる。その為、アゲちゃんはビックリして帽子から飛び上がって上空を飛ぶ有り様。で、鬼の手が魔女帽子を吹っ飛ばすかと言えばそうではなく、アマミちゃんの前に出現している赤茶色の直径2メートルの魔法陣に完全に妨害されている。鬼の拳は魔法陣を殴った形である。で、そこで完全に塞がれており拳は魔法陣上で止まっている形である。
「この魔法陣は…まさか私の攻撃を無効に出来る魔法が存在するなんて信じられません。」
女性の鬼が右腕を引っ込め手をグーパーしている。
「おいおいガキ。余計なことするな。これからが面白いところだってのによ。」
この少年はいったい何を言っているの?!何を考えているのか全くわからん!どう見ても救われたでしょ!鬼の力で顔面ぶん殴られたら常識的に首飛ぶぞ!
「アマミさん!お怪我はありませんこと?!」
「シャロ…ルさんな…んです!酷い…んです!喧嘩な…んです!どうに…か止める…んです!ウワーン!」
アマミちゃんが大声で泣くものだからいよいよ野次馬が動き始めた件。鬼を見て近づくものはいないけど、どう見ても誰かしらを呼びにいくような雰囲気にも見える。
で、場違いで鼻血だして倒れる野次馬はいったいなんなの!アマミちゃんの泣き顔+魅了効果でやられた?!
「これは間が悪そうです。最も私は謝っているのですけど。そこの女の子でしょうか?怖い思いをさせてしまいましたね。恨むなら後ろの男性を恨んでください。私としましては強い方であれば子供でも関係なしにその魔法陣を破壊したいところですがこの場で佇むのはあまりよろしくないでしょう。」
「ふん。漸く俺の怖さが分かったか?全く、どうしていつも誰も分からないんだか。」
「ええ、貴方がそこまで威張る理由は私にも分かりません。そこのとんがり帽子を被った少女さん。出来れば貴女のお名前をお聞きしたいのですけど宜しいでしょうか。」
「ウワーン!」
「そんなに私は怖いでしょうか。少し心外です。」
「この子はアマミさんですわ。私も鬼について多少は知っていますわ。アマミさんはまだ幼いですわ。貴女を恐れただけではなくただビックリしただけですので気にしないでくださいまし。」
「そうですか。それは安心しました。その子は貴女のお連れの方ですか?」
「友達ですわ。」
「そうですか。貴女のお名前も宜しいですか?」
「私はシャロルですわ。ここ、オラクル領の領主の娘ですわ。覚えていただけると光栄ですわ。」
「そうでしたか。冥土の土産として覚えておきましょう。ところで、貴女のお友達ですが…本当に人族でしょうか?」
「ど、どう言うことですの?」
「いえ、こちらのお話です。とは言え図星のようでしょうか。では、またお会えることを楽しみにしています。と言うよりまた会いましょう。私は負けず嫌いですから。」
そう言って女性の鬼は立ち去ってしまった件。なんか不思議な感じだったな。僕も彼女の力は覚えておこうっと。鬼の拠点探しに役立ちそうだし。