退魔士と犬耳の助手
『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。
指定キーワードは『助手』と『交差点』
「魔物が出るっていうのはあの交差点か、何か感じるか?ポチ」
「ご主人様、あそこ何だか嫌な臭いと気配がします」
学生服を着た少年が巫女服姿の小柄な犬耳少女へと問いかけ、少女はくんくんと鼻を鳴らし嫌そうな顔を少年の方へと向ける。
少年は行田流馬、現代に生きる数少ない退魔士の一人であり、少女は助手、犬神のポチである。
今回は四辻の交差点に出ると言う魔物を退治する為にやってきたのだ。
「ポチが言うなら間違いないな。流石は俺の助手、頼もしいぞ」
「わ、わふっ、ご主人様のお役に立つのが私の役目ですから!でも、撫で撫でしてくれてもいいんですよ?」
「後でたっぷり撫でてやるよ。さぁ、お出ましだぜ?気合入れろよ?」
たっぷり撫でて貰えると聞いて顔を蕩かせていたポチは慌てて表情を切り替える。
そして二人の視線の先、交差点、四辻の真ん中に徐々に異変が生じ始める。
まるで陽炎のようにゆらゆらと空気が揺れ始め、反対側が見えなくなるほどに歪み、とうとうその中心から燃えるような赤い目をした、全身真っ黒な大型犬に似た魔物が姿を現す!
「あっ、あれは!」
「知っているのか!?ポチ!」
「あれは黒犬、英国の魔物がどうして日本に?あ、まずい!?ご主人様、駄目ー!」
説明した瞬間、まずいと思ったポチは主の腕を掴もうとするも一瞬遅く。
既に黒犬目掛けて走り出している主を慌てて追いかける。
しかし、犬神であるポチよりも流馬の方が足が速く、見る見る内に黒犬へ接近するとそのまま首を抱え込むようにして抱きつき、勢いのまま黒犬を仰向けに押し倒して脚を胴体に絡ませる。
「よーしよしよし!いい子ですね、可愛いですね!黒犬はここを撫でられると気持ち良くなって力が抜けてしまうんですねぇ。いやー、本当に可愛くていい子ですねぇ」
そして喉元を撫でておでこに頬ずりをし、身体全体ですりすりと黒犬に擦りつき始める。
最初は赤い目を白黒させていた黒犬だが、撫でられる内にリラックスしてきたのか、流馬に甘えるようにクゥンと鳴いてすりつき始める。
「ご主人様は、犬と見ると見境ないんですからぁ!ご主人様の浮気者ぉ!!」
「あぁっ、ポチ!これは違うんだ、ポチー!」
泣いて走りだすポチへと手を伸ばす、しかし、追いかけようにも懐いた黒犬に抱きつかれて身動きの取れない流馬は、ただその背中を見送るしか出来なかった。
行田流馬、18歳。犬が大好きで堪らず、魔物でも関係なく愛するが故に起きた悲劇である。
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