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地上世界の戦乙女  作者: 久遠寺ミトウ
3/3

女神と四職蒼夜

 翌朝、神楽は昨日と同じように学校へ向かう。


 彼女が教室に入るとクラスメートたちが挨拶をしてきた。


「美城さん、おはよう。今日はお弁当持ってきた?」


 席に着くなり、ロングヘアーの近藤未菜こんどうみながニヤニヤしながら近付いてくる。


 ちなみに眼鏡の少女は土方浅香ひじかたあさかという名前であることは、昨日のうちに確認済みだ。


「おはようございます。はい、大丈夫です。昨日はご迷惑をおかけしました」


 昨日の反省を生かし、神楽は登校途中にコンビニで昼食を準備してきた。


 二十四時間年中無休で営業している事に、神楽は人とはかくも働き者なのかと感心しながら、焼肉弁当と野菜ジュースを購入したのだ。


「昨夜、また通り魔が出たそうですね。二人は大丈夫でしたか?」


 神楽の質問に未菜は興奮したように答えた。


「そうそう! 昨日の現場アタシん家の近くなんだよね。早く家に帰ってて良かったぁ」


「一歩間違えたら襲われてたかもしれないよね。私も朝のニュースで、未菜の家の近くが映ってるの見てビックリしたよ」


 浅香が心配そうに言う。


 この二人は旧知の仲らしく、互いの家族のこともよく知っているらしい。


 地上世界に来て最初の知り合いが襲われずに済んだのは、不幸中の幸いと神楽は思う。


「そうでしたか。近藤さんが危険な目に逢わずに済み良かったです」


 すると未菜はまあね、と嘆息しながら言った。


「さすがに、この学校から二人も被害者が出たりしたら、洒落にならないっしょ」


「……二人、ですか?」


 思いがけない未菜の言葉に、神楽は彼女の言葉を反芻する。


 仮に未菜が被害にあっていたら、この学校からの被害者が二人になっていた。


 つまりそれは、過去に白鷺学院から被害者が一人出ているということだ。


「確か最初に殺されちゃった人だっけ? 三年の先輩で――」


 未菜がそこまで言いかけた時、教室の扉が開くと一人の男子生徒が少々気だるそうな顔で入ってきた。


 神楽はクラスメートの顔と名前は昨日全て覚えたはずだが、彼の顔に記憶はなかった。


四職ししき君、風邪が治ったんだね」


 神楽の隣の席に鞄を置く男子生徒に浅香が言った。


「うん、とりあえず学校に来れる程度にはね」


 四職と呼ばれた生徒は椅子に座りながら答える。どうやら昨日は病欠で休んでいたようだ。


 神楽の視線が気になったのだろうか、彼女を見返し不思議そうな顔をした。


「……あれ? 転校生?」


 思いがけない四職の言葉に、神楽が何か答える前に未菜が大声で笑い出した。


「四職、あんたまだ風邪ヤバイんじゃない? 転校生って、美城さんのこと言ってんの? もしかして記憶喪失?」


「えっ……美城さん? ごめん。前からいたっけ?」


 未菜は呆れたように、一方浅香は少し心配そうに頷く。


 二人の反応に四職は困惑したように首を傾げ、もう一度神楽を見た。


 自分の記憶と神楽の顔を必死に照らし合わせようとしているのが、その表情から窺えた。


「ねえ四職くん、まだ体調悪いなら無理しないで帰った方がいいよ」


「あっ、いや……大丈夫だよ。ええと、美城さん? 変なこと言ってごめんね」


 弱々しく微笑みながら謝罪する四職に、神楽は首を横に振る。


「お気になさらず。土方さんの言う通り、体調が悪いのなら無理はしない方がいいと思います」


 彼女がそう言うのと同時に担任教師が教室に入ってきた。


 一時限目の授業が始まると、神楽は隣に座る四職蒼夜ししきそうやについて考えていた。


 先程の様子から察するに、蒼夜には神楽の魔術が効いていないらしく、美城神楽の存在に対し疑問を抱いている。


 神楽が自身に施した魔術は、通常なら特段のイレギュラーが生じない限り一月以上は効果が持続するもので、念のためにと少し前に術式を再確認したが、やはり綻びなど微塵も感じず未だ健在である。


 となると、蒼夜に暗示が効かないのは神楽に問題があるのではなく、蒼夜に何かしら要因があるからだと考えるべきである。



 ────可能性は一つ考えられた。



 神楽は精神を集中させ、横でぼんやり黒板を見る蒼夜の体内の魔力探査を行う。



 …………



 果たして神楽の予想は的中した。


 蒼夜は強力な魔術抵抗マジックレジストを持っていたのだ。

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