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009 愉快な仲間達 前編

009 愉快な仲間達 前編




子ども達は、シンシアと宿の大将の勧めで、従業員としてここの宿で働くことになった。

子ども達は、早速アリスから「昼食のあとで宿屋のイロハをみっちり教える」と言われて顔を強張らせていた。

そんな子ども達を見かねた宿の大将から「部屋を使ってもいいので片付けてきな」と言われ、再び笑顔に戻り早速と部屋を片付けに行った。


(頑張ってねー。大丈夫だよ。たぶん。)


シンシアは、心の中で激励しながら子ども達を見送っていると、入れ替わるように、『海の支配者』のメンバーが朝食に降りてきた。


「おはよう。大将、それにシンシア。アルミナ。

 シンシア、今日はよく眠れたわよね?」


ママリーは昨日と同じようにハイテンションで挨拶する。

昨日のシンシアは、ママリーが気を使ってくれているのかと思っていたが、ママリーがそういう気性の人だと認識しなおした。

シンシアは笑顔で挨拶を返す。シンシアとアルミナは、お互いに寂しかったので二人で一つのベッドで一緒に寝たことは内緒だ。


「あなた達、キャラバン隊の準備がまだなんじゃないの?」

「そ、そ、そうでした。

 アルミナ、今から買い物にいくわよ。」


(だ、だ、大丈夫だよね。たぶん。)


シンシアはアルミナのことで準備を全くしていなかったことを思い出し、ママリーの問いかけに焦りながら返事した。


「よかったら、ちょっとだけ待ってて、

 買い忘れが無いように、私も一緒について行ってあげるわ。」

「た、助かります。」


(たすかったー。これで本当に大丈夫だよね。たぶん。)


ママリーは、やっぱりなと思いながら一緒に行くことを提案し、

シンシアは、内心ほっとしながらすぐに了承した。


「じゃー、30分後に宿の玄関で落ち合いましょう。」

「わかりました。よろしくお願いします。」


ママリーとシンシア達は予定を決め、食堂から出ようとした時、チェスが声をかけて引き止めた。


「あ、あの、アルミナ、

 昨日約束してた鍛錬だけど、よかったら今日の午後からどうだ?

 シンシアも手が空いてるなら一緒にどうだ?」


アルミナは満面の笑みでシンシアの顔を覗き込む。シンシアは頷きで了承する。


「はい。た、た、楽しみにしてますー。」

「じゃー、午後に、森の入り口の所で待ってる。」


アルミナは頬を赤く染めて返事した。チェスは彼女の恥じらいには触れずスマートに返事した。

チェスのようなダンディーな男は女の恥じらいに野暮なツッコミはしない。そういうことには慣れているのだ。

ただ、ママリーに睨まれて目を逸らしたので、チェスはママリーには頭が上がらないようだった。


(おじさまか? やっぱりおじさま好きなのか? たぶん。)


シンシアは、アルミナのおじさま好きに確信をもった。




シンシアとアルミナは、宿の玄関でママリーを待っていた。


「お待たせー。さ、行きましょうか?

 さっきの様子じゃ、どうせ何を用意したらいいのか解ってないんでしょう?」

「・・・」


ママリーは合流するなり足早に行こうとする。

シンシアは、言われたとおりなのでぐうの音もでない。いや「ぐぬぬ」と声にならない返事らしき音を出してついて行く。


「まずは、食料ね。

 護衛任務によっては食事が出る時もあるけど、明日からの任務には出ないわ。

 キャラバン隊は、谷を小川に沿って国境へ向かうはずだけど途中で1泊して、

 2日目には国境になるところの湖に着くはずよ。たぶんそこでも一泊するはずだわ。

 そこからはリベルナ王国だけど、最初の町に入るまでにもう一泊して、

 だから、5日分の食料が必要ね。」

「・・・」

「日程プラス1日分の食料を用意するのは常識よ。」


シンシアは、3泊4日なら4日分で大丈夫かなと質問しようとしたが、ママリーは理由を告げることで質問が発せられる前に一刀両断した。

シンシアは、旅の食料をどこで買うのかさえ解らなかった。

ママリーは、旅の食料品店を案内してくれた。普通の食材は市場で買うが旅の食料は専門店で買うらしい。


シンシア達は、ママリーに相談しながら、朝飯用、昼飯用、晩飯用を各5日分、二人分を買った。

シンシアが収納魔法で片付けるのを、アルミナは不思議そうに見ていた。


「つぎは、野営・・・」

「あ、あのー、食器がー。」

「えっ、あ、そうね。

 収納魔法も覚えたてだったわね。当然、食器も無いわけね。

 準備っていっても、あとで、野営用品買えば終わりよ。」


シンシア達は、ママリーに案内されるがまま専門店を巡った。

ママリーは、過去の経験も踏まえて使いやすい商品を教えてくれた。

シンシア達は、思ったより迷わず買い物が出来た。


「ありがとうございました。」


シンシアがお礼を言うと、ママリーは「もう一件行きたい店があるから付き合って」というので、二人は後について行った。


「ちょっと待ってて」


ママリーは一人店に入って行き、しばらくすると紙袋と紙に包まれた棒?を抱えて出てきた。


「はい、これ、シンシアに、

 私たち『海の支配者』から、新しい冒険者へのプレゼントよ。

 アルミナの分は、チェスが用意するって言っていたわ。楽しみにしててね。」


「あ、ありがとうございます。」


突然のプレゼントに驚くシンシア。早速包を開けて見る。


(何が出るかなー。何が出るかなー。へいへい。ほほい。

 紙で包まれた棒って杖しか考えられ無いよね。たぶん。)


「こ、これはローブ。こっちはやっぱり杖ね。あ、ありがとうございます。

 で、でも、私たちはこのキャラバン隊の任務が終わればリベルナの王都へ向かいます。

 もらうだけになってしまいますが。。。」


シンシアは、声に出して「やっぱり」って言ってしまったが、後の祭りだ。

ママリーは、苦笑いしながら答えた。


「良いのよ。これは儀式みたいなものなの。

 別に、何かを返してもらうためのプレゼントでもないわ。

 明日の任務で盗賊に襲われて『海の支配者』の私たちが死んでしまっても、

 あなた達が生き残っていれば、私たちの心はあなた達に引き継がれるわ。

 だからお願い、新しい冒険者を見かけたら、あなた達も優しくしてあげてちょうだい。」


「わ、わかりました。」


シンシアは神妙な表情で答え、アルミナはゆっくり頷いた。

昼食を宿で取ることにした三人は、午後の鍛錬を思いながら真っ直ぐに宿へ戻った。




シンシアは、宿へ戻る帰り道でアルミナへのプレゼントを想像しながら、ニヨニヨとしていた。


(チェスからアルミナへのプレゼントは何かしら。

 『俺を好きにしてくれ』ってのは流石に無いわよね。たぶん。)




続きが読みたくなったよね。たぶん。

ブックマーク、評価☆☆☆☆☆など押したくなったよね。たぶん。


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