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008 獣人の子ども達

新たな登場人物等

 カルロ:11才。獣人。カルパの兄。親に売られた過去がある。

 カルパ: 9才。獣人。カルロの妹。親に売られた過去がある。

 ジェイニー:10才。獣人。人攫いに攫われた過去がある。




008 獣人の子ども達




シンシアとアルミナが朝の食堂に降りると、すでに子ども達がいて食事を摂っていた。

子ども達は、久しぶりのまともな食事なのか満面の笑みで咀嚼していた。


見るからに獣人の子どもは、女の子が二人と男の子が一人の計三人だった。

並んで席についていた二人は兄妹のようであった。もう一人の女の子は向かいの席についていた。


「みんな食事が終わったら、少し話をするから、

 そのまま食堂にいてね。」


アリスが、シンシアとアルミナ用のスープを持って来ると、子ども達に伝えた。


「シンシアとアルミナもね。」


アリスは、言い忘れたのか厨房に戻りつつ振り返りながら、シンシアとアルミナにも伝えた。




シンシアとアルミナが食事を終えて紅茶で喉を潤していると、宿の大将が厨房から出てきた。


「わるい、わるい、待たせたな。

 じゃー、これからのことを話そう。

 お前たち、この嬢ちゃんがお前たちを買ってくれたお貴族様だ。

 まずはちゃんと挨拶できるか?」


宿の大将が子ども達に声をかけると、子ども達は少し顔を見合わせた後、順番に挨拶し始めた。


「おれは、カルロ、11才。

 これは妹の、カルパ、9才。

 俺たちを買ってくれてありがとう。」

「わたしは、ジェイニー、10才。

 助けてくれてありがとうございます。」

「私はシンシア。こっちはアルミナ。よろしくね。

 あっ。アルミナはみんなも知ってたわね。」


シンシアもすぐに挨拶を返し、大将も交えて子ども達の事情を確認したところ次のような感じだった。

カルロ、カルパの兄妹は、1月ほど前に親に売られて買い手が付くのを待っていたそうだ。

ジェイニーは、別の町で人攫いにあい、別の奴隷商人から昨日の奴隷商人へと売られたそうだ。


子ども達の事情が大体はっきりすると、大将は昨日の奴隷商人のことを教えてくれた。


「昨日の奴隷商人は、ちょっと焦ってたようだ。

 どうも、この国の内乱が始まったお陰で、獣人の子ども達が厄介だと考えたようだ。

 仲介したヤツも、『今ではババ抜きのように獣人の子どもが取引されている。』と言っていた。

 本当のことは言わなかったが、金に困った挙句、焦って人の誘拐に手を出したのだろう。」


シンシアは、少し考えたが子ども達から希望を聞くことにした。


「で、あなた達はどうしたいの?

 私はあなた達を買ったけど、何かして欲しいわけじゃないのよ。

 できるだけ希望にそうわ。

 あなた達は自由よ。」


シンシアは、優しく子ども達に問いかけた。


「もう俺たちの帰る場所はないんだ。

 妹と一緒なら何だってして生きていく!」


カルロは妹を見ながら答えた。妹のカルパと一緒にいたいようだ。


「わたしは家に帰りたい。でも、ここから遠いみたいだし、どうしていいかわからない。うっ、うっ。」


ジェイニーは申し訳なさそうにそう告げると、俯いてしまった。

しばらく考えるシンシア。徐にみんなに命令口調で話し始めた。


「何度も言うけど、あなた達は自由よ。

 だから、今、そこの扉から出ていっても誰も追いかけない。

 その上で、今から言うことを聞いて欲しいの。」


子ども達は顔をあげ、シンシアの次の言葉を待つ。


「あなた達は、この宿の従業員として働くのよ。

 奴隷じゃないわよ。ちゃんと働くの。

 カルロは、カルパが成人するまで働きなさい。

 そしたらきっと二人に幸福が訪れるわ。(たぶん)


 ジェイニーは、旅のお金が貯まるまでここで働きなさい。

 家に帰れるように友を見つけなさい。

 そしたらジェイニーもきっと家に帰れるわ。(たぶん)


 いいわね?」


同い年ぐらいの子どもから言われてもピンとこないのは分かるが、みんなあっけにとられていた。

シンシアは続ける。


「いいわね?」


こども達は、コクコクと頷いた。

さらにシンシアは続ける。宿の大将の了承をもらっていなかったことに焦るシンシア。


(しまったー。かっこよく決めたけど大将は了承してくれるよね。たぶん。)


「た、た、た、大将。

 ごめんなさい。と言うことに決まりましたが、だ、だ、だ、大丈夫かしら?」


宿の大将は、困った顔でなく、ニヤけた顔で返事をする。

「ほぅ、ほぅ、ほぅ」って言えばサンタクロースのような顔だ。


「お、お、おうよ。

 ちょうど従業員が出ていって困ってたところだ。

 嬢ちゃんから話がなくても、わしから頼むつもりだったんだ。

 まかしときな。


 給料はちと安いが、宿と飯の心配はいらねぇ。何せ宿屋だしな。

 みんなそれでいいか?」


宿の大将の言葉に、こども達は再びコクコクと頷いた。




獣人解放軍によりヒルデンブルグ王国の王朝が排斥され、レストアーナ共和国に生まれ変わったのち、

西の町ウルエボの小さな宿屋は、町で一番の宿屋として繁盛することを今のシンシアは知らない。




続きが読みたくなったよね。たぶん。

ブックマーク、評価☆☆☆☆☆など押したくなったよね。たぶん。



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