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007 アルミナの救出

007 アルミナの救出




シンシアは、結局、一睡もしていない。

彼女は探索魔法で、ちょうど太陽が顔を出したのが解った。


(夜が開けましたね。たぶん。)


シンシアは、深夜に宿の大将が戻ってきたのを知っていた。

彼女は聞きたいことも沢山あったが、深夜であったことと、聞いても何も変わらないことも解っていたので声はかけなかった。


シンシアは、夜が開けたのでハンターギルドに行くことにした。

彼女は、今の自分には何も出来ないことは解っていたので、予定通り金策をすることにしたのだ。




ハンターギルドは、日の出の少し前から夜遅くまで開いている。

シンシアがハンターギルドに着くと、早朝にもかかわらず既に何人かが出入りしていた。

今日の素材採集などをハンターギルドに依頼している人たちのようだ。


彼女は、足早に受付まで行くとギルドカードと巾着袋を受付嬢に渡して、全額引き出すように依頼した。

受付嬢は、「少し待ってて」と伝えるとすぐに奥の事務室に引っ込んでいった。

シンシアが、受付前で15分ぐらい待っていると、奥から受付嬢が戻ってきた。


「おまたせ。はいこれ。


 今日は、お連れさんと一緒じゃないのね。

 気をつけて帰るのよ。」


受付嬢は、カウンターの奥側から出てきて、重たくなった巾着袋とギルドカードを直接手渡しで返してくれた。

シンシアは、なんと返答して良いのか解らなかったので、軽く頷くとそのままハンターギルドを出た。




シンシアは、宿へ戻ったが受付には誰もいなかった。

彼女は、確か出て行った時も受付に人がいなかったことを思い出しながら、食堂へ向かった。


(無用心だけど早朝だし大丈夫だよね。たぶん。)


「シンシア、おはよう。ギルドに行ってたんだろ?

 さっき部屋に行ったが返事がなかったのでそうだろうと思っていたんだ。


 まあ、そこにかけな。


 アルミナは、今のところ心配はいらない。

 昨日から何も食ってないんだろう。朝飯を食いながら話そう。」




シンシアが席につくと、宿の大将がささっと2枚のお皿に少し朝食を乗せてきて、

1枚のお皿をシンシアに渡し、向かいの席についた。


「まずは、昨日の夜の話だ。」

「ちょ、ちょっと待って。ママリーも呼んでくるわ。」


宿の大将が話を始めようとすると、アリスが得意の横槍で、『海の支配者』のママリーを呼んでくるという。

二人は無言のまま、仕方がないので朝食を食べながら待っていた。


「おはよう。大将、それにシンシア。

 よく眠れた? わけないよね。」


ママリーは食堂に降りてくるなり、少しハイテンションで挨拶した。

ママリーは、これから暗い雰囲気にならないように気を使っていてくれているのだろう。


「まずは、アルミナの状況だ。


 アルミナは、やはり攫われていたようだ。

 今は監禁されているようだが、ひどい仕打ちはされていないと思う。まずは安心してくれ。


 昨日、あれから昔の知人を探して酒場を何件か回った。

 3軒目でソイツを見つけたので、まあ、運も良かった。

 ソイツは、今でも少々黒い仕事もやっているのでその筋に顔が効くんだ。


 ソイツには『12才ぐらいの生娘 (きむすめ) の奴隷を探している。渡をつけて欲しい。』って頼んでおいた。

 今朝、嬢ちゃんがギルドに行っている間に、ソイツから連絡が入った。


 これだ。」


宿の大将は、汚い紙切れに、汚い字で書かれたメモを広げた。

そこには、こう書かれていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 目的のものは見つかった。昨日採れたてだそうだ。

 俺の仲介料も入れて金貨25枚だ。

 買うなら昨日の酒場に昨日の時間にきてくれ。


 ちょっとお願いもある。魚屋は、残り3匹もついで

 に買ってくれないか?と言うことだ。

 そいつらは3匹で金貨5枚だ。


 P.S.ついでの3匹の仲介料は負けとく。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


魚屋は、何かの隠語なのだろう。採れたてって書いてあるのはアルミナに違いない。

シンシアは、すぐに返事した。


「もちろん全員買わせていただくわ。


 アルミナと一緒にいた子ども達でしょ。

 3匹ってのも気になるし。


 ここで迷ってたらアルミナに顔向け出来ない。」


「わかっ、、、」


宿の大将が返事をしようとした時に、新たな客が食堂に入ってきた。

早朝だったので、シンシア、宿の大将、アリス、ママリーだけで話していたが、他の客が混じると話づらくなる。


「おはようさん。

 何か進展あったんだな。ママリーから多少聞いている。」


新たな客は、『海の支配者』パーティーリーダーのチェスだった。

宿の大将は、先程の話をチェスにも説明してメモを見せた。


「それで、どうするんだ。

 流石にシンシアが夜の酒場には行けんだろ?

 面白そうだから、そこの黒髭のサンタと俺で行ってやろうか?」


チェスも危ない橋は渡りたくはないだろう。

シンシアは、チェスがちょっとふざけた言い方で頼みやすくしてくれているのがわかる。

シンシアが、頼む相手は目の前の二人しかいない。

シンシアは、心をこめて二人に頼んだ。


「大将、よろしくお願いします。

 チェス、よろしくお願いします。」


可憐な少女のお願いに、ドギマギする二人であったが、二人とも頷くことで了承した。


その後、ママリーがすぐに足らずの金貨を届けてくれた。

みんなから少し眠るように言われたシンシアは、全ての金貨を大将に預けて部屋に戻った。




シンシアが、目を覚ますと夕方だった。

あと3時間ぐらいだろうか。シンシアにとって人生でもっとも長い3時間だった。

シンシアは、みんなに言われていたとおり、昨日、相談したぐらいの時間に食堂に降りた。


シンシアが食堂に着くと、黒髭のサンタ、もとい、宿の大将と、軽武装したチェスがいた。

その二人を取り囲む状態で、アリスと『海の支配者』のリンドー、ママリー、ナターシャもいた。

剣士のリンドーは、面白そうだから自分も行くとダダを捏ねていたが、

宿の大将から「相手が警戒するから三人は無理だ!」と睨まれるとシュンとしてしまった。


「じゃ、行ってくる。」


宿の玄関で、大将はそう告げるとチェスを伴い夜の闇に溶けていった。




二人が出て行ってから2時間くらいだろうか。シンシアにとって今日2度目の長い時間が経過した。

シンシアにとって、今日は長い一日となった。


「ねぇ、ここ?」

「ここよ。」


少女の声の後に、シンシアにとって聞き覚えのある声がした。

シンシアは、食堂を飛び出し玄関から入ってきたアルミナに駆け寄った。

じっと上から下まで何度も何度も、目の見えないシンシアは無言で探索魔法でアルミナを確認する。

シンシアの目からは、こぼれ落ちそうな涙。


「あ、あっ、

 アルミナだわ。アルミナよ。

 神様、ありがとうございます。」


シンシアは、崩れ落ちそうになったがアルミナにきつく受け止められる。

シンシアが落ち着くと、アルミナはシンシアの前に膝をつき、じっとシンシアを見つめる。

護衛騎士の正式な礼である。


「シンシア様、

 再びお会いできないと、諦めかけておりました。

 そして、自害を考えた時、シンシア様の声が聞こえてきました。

 

 ・・・階段は登らせませんわ。・・・

 ・・・生きていてほしい。・・・


 と。その声があったからこそ、自害を思いとどまりました。」


アルミナは、おもむろに剣を鞘から抜いて、シンシアとアルミナの間の床に突き立て頭を垂れる。


「シンシア様、

 護衛騎士 アルミナ。 今、ここに、無事に戻りました。

 二度とシンシア様から離れないと、この剣にかけて誓います。」


アルミナは、最後まで言い終えると、ふたたび顔をあげ、じっとシンシアを見つめる。


「アルミナ、

 護衛騎士 アルミナ。

 二度と私を心配させないでください。

 わかりましたね。」

「はい。仰せのままに。」


シンシアは上級貴族。アルミナの主なのだ。

主は、従者を守らなければならない。従者もまた主を敬い、護衛騎士は主を守らなければならない。

シンシアもアルミナもお互いがお互いを守る立場なのだ。

貴族である二人は、そのことを自覚しなおした。

貴族の誓いを見届けたのは、愉快な仲間?たちと、キョトンとした顔の子ども達三人だった。


アルミナから子どもたちに、もう安心であることを告げて、今日は休むこととなった。

アリスの案内で、子どもたちは辞めていった前の従業員の部屋で休むことになった。




シンシアとアルミナは、2階の借りている部屋に戻ってきた。

アルミナは部屋に着くと、突然、シンシアに質問があると言う。


「シンシア、昨夜の

 ・・・階段は登らせませんわ。・・・って

 シンシアの願いが私に届いたのですよね?

 一体なんのことなんでしょうか?」

「ア、アルミナ、

 そ、そ、それは『死への階段を昇らないで』の意味ですわ。」

「そうでしたか。。。意味がよく分かりませんでしたので気になっていたのです。

 それを考えていたら、自害のことも忘れていました。

 ありがとうございました。」


(バレてないよね。たぶん。)




二人は「今日は特別ね」と言いつつ、1つのベッドで並んで眠った。

二人は仰向けでベットに寝ていたが、やがて二人は背中合わせとなって眠っていた。

お互いの枕が涙で濡れていたことは二人だけの秘密。




続きが読みたくなったよね。たぶん。

ブックマーク、評価☆☆☆☆☆など押したくなったよね。たぶん。


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