005 魔道特訓
新たな登場人物等
海の支配者:ハンターパーティー。Bランク。
チェス:海の支配者、剣士、チームリーダー。四角い顔の40代男性。黒髪、黒瞳、髭があったら似合いそうなベテランハンター。
リンドー:海の支配者、剣士。ほっそりした20代の男性。焦げ茶髪、焦げ茶瞳、身軽で素早い攻撃を得意としている。
ママリー:海の支配者、攻撃系魔道士。30代の女性。薄い赤髪、薄い赤瞳、パーティーではママと呼ばれて慕われている。
ナターシャ:海の支配者、治癒系魔道士。10代の女性。水色の髪、水色の瞳、パーティーでは一人冷静な判断をする。
005 魔道特訓
小さな宿屋は、2階と3階に5部屋づつの客室となっており、1階に共同施設があった。
つまり、1階にロビー、受付、食堂、(大きくは無いが名前だけ)大浴場、住み込みの従業員部屋等となっていた。
シンシアとアルミナは、2階の自分たちの部屋から朝食のため1階の食堂に降りてきていた。
食堂には、二人の他には食事客はいなかったので、少し出遅れたようだった。
二人は席についたが、一向に食事は運ばれてこないので、周りをキョロキョロと見ていた。
(ど、ど、どうすれば朝食が食べれるの?
淑女たるものじっと待つ? だよねー?)
貴族のシンシアたちは、どうして良いのか解らずに少し戸惑っていた。
「あっ、うちはセルフサービス、
カウンターから食べる分だけ持っていってー。
いっぱい残ってるから、いっぱい食べてねー。」
厨房の奥からアリスの声がするが、それ以外の人の気配がない。
シンシアは、従業員の数など気にするはずもない。
アルミナは、昨日からアリス以外の従業員を見てないけど、この宿は一体何人で回しているのかと不思議に思っていた。
二人は、食材の並ぶカウンターに向かった。
カウンターには、パン、茹で卵、スクランブルエッグ、野菜サラダが別々のボウルに入って置かれていた。
(おっおっおー。好きに取れって言うことですの。
誰も見てる気配が無いので、いっぱいとってもバレないですわ。たぶん。)
シンシアは、食材をお皿に満載にして席についた。シンシアはご機嫌であった。
アルミナも、朝稽古でお腹が空いているのか、同じく食材を満載にして席についた。
二人が席について水気が無いと気がついたとき、アリスがスープの入ったカップを持って来てくれた。
アリスは、二人のお皿が満載なのに気づいたが完全にスルーした。アリスの心は広いのだ。
「実はこの宿、従業員が早々と避難しちゃって、
大将と二人で回してるんだよね。騙したみたいでごめんねー。」
スープをテーブルにおきながら、しっらっと目をそらしながら簡素に告げるアリス。
アルミナは、別のことが気になったのでアリスに質問する。
「アリス。別に気にしてるわけではないけど、あなたは獣人族なの?」
昨日のアリスは、フード付きの 外套 (がいとう)を着ていたので気づかなかったが、
今日は青いワンピースなので、アリスの頭の上には可愛く小さな耳があらわになっていた。
「こんな時だからね。隠すつもりはなかったのよ。
私は、獣人族。昔ここの大将に助けてもらったの。
それから、ここのカンバン娘ってところね。」
少し俯いたと思ったら、最後はドヤ顔でカンバン娘である事を告げるアリスだった。
「それで、今日はどうするの?」
シンシアとアルミナが、食事も終わってひとごこちついていると、
アリスがティーカップ3つを持ってきて、一緒の席に着いて今日の予定を訪ねてきた。
「今日は、ハンターギルドで少し情報収集して、隣国リベルナ王国への越境を考えるつもり。」
「へぇー
今、国境には大きな盗賊団が出没してるみたいでさ、
商業ギルドが音頭を取って、大規模な越境キャラバン隊を予定しているみたい。
二人はハンター登録してるんでしょ。だったら護衛として登録しといたらどうかな。
猫の手も借りたいみたいだし。」
シンシアの返答に、アリスはいい情報を教えてくれた。
シンシアとアルミナは、顔を見合わせ頷き合うと、早速ハンターギルドへ向かうことにした。
ハンターギルドに着いたシンシアとアルミナは、早速、掲示板を確認し、
越境キャラバン隊に参加する事を登録した。
本来なら、EランクやFランクのハンターは、護衛任務はできないはずなのだが、
小さな田舎町のハンターギルドでは、急ぎで大人数の護衛を揃えるのは難しいようで、
経験不足の2人でも滑り込めたようだ。
今回のキャラバン隊は、馬車約10台、商人約20名、護衛約30名で越境するようだ。
どうも盗賊団は20名ぐらいで組織しているようなので、これでもギリギリだそうだ。
二人は、3日後の朝に商業ギルド前から出発するのを確認し宿へと戻った。
宿の受付にはアリスが座っていたので、シンシアは今日も含めてもう3泊することを告げた。
「まいどありー。
キャラバン隊で越境するのね。
あっ、部屋は、そのままにしてあるからねー。」
アリスは簡素にお礼を告げたが、内心では午後の部屋の片付けをしなくてよくなったので、ラッキーと思っていた。
「そうそう、この宿にはもうひと組、越境キャラバンに参加するパーティーが泊まってるから、後で紹介するねー。」
「あ、ありがとう」
小さな宿なので、プライバシーが少し曖昧かとも思うが、アリスにお礼を言うシンシアであった。
シンシアとアルミナは、昼食は外に出ずに宿で摂っていた。
別のテーブルではアリスが紹介すると言っていたハンターパーティーも食事中だった。
早速、アリスはハンターパーティー『海の支配者』を紹介してくれた。
『海の支配者』のメンバーは、以下の通り。
チームリーダーのチェスは剣士。四角い顔の40代男性。黒髪、黒瞳で、髭があったら似合いそうなベテランハンター。
リンドーも剣士。ほっそりした20代の男性。焦げ茶髪、焦げ茶瞳で、身軽で素早い攻撃を得意としているそうだ。
ママリーは攻撃系魔道士。30代の女性。薄い赤髪、薄い赤瞳で、みんなからはママと呼ばれて慕われているそうだ。
ナターシャは治癒系魔道士。10代の女性。水色の髪、水色の瞳で、パーティーでは一人冷静な判断ができ、
彼女が撤退の指示をしないと、みんなすぐに無茶して死にかけるそうだ。
シンシアは、パーティー名が『海の支配者』なので、海に関係あるか聞いてみた。
チェスの答えは「若い頃にかっこいいから名付けた」というよくある理由だった。
シンシアとアルミナもハンターパーティー『誓いの絆』の紹介をしたが、
女性二人だけのパーティーで、二人とも子ども?にしか見えないし、
パーティーリーダーが10才のシンシア、しかもシンシアは盲目、
という事実に驚くこと満載で、『海の支配者』のメンバー一同は唖然としていた。
シンシアが治癒系魔道士で、探索魔法も得意、と聞いたママリーとナターシャが、
午後からシンシアに「攻撃魔法を教えてあげる」と言ってくれたので、シンシアはすぐにお願いした。
チェスとリンドーが午後から買い物と他の用事もあると聞いたアルミナは、少しガッカリして、
「今日の午後も一人で稽古します!」と宣言していた。
その後、チェスから「明日は一緒に稽古しよう」という誘いに、アルミナは少し顔を赤らめていた。
(おじさまか?、やっぱりおじさま好きなのか? たぶん。)
邪推な想像をするシンシアだった。
午後、シンシアは約束通りママリーとナターシャから攻撃魔法2つと防御魔法と収納魔法を習った。
「 火の玉 (ファイヤーボール)
氷の槍 (アイスアロー)
岩の壁 (ロックウォール)
収納箱 (アイテムボックス)」
シンシアは、天性の魔力センスで即行で一通り覚えた。ママリーとナターシャは感心していた。
(これって、探索魔法と同じように無詠唱でもできるよね。たぶん。)
「・・・・」
( 火の玉 (ファイヤーボール)
氷の槍 (アイスアロー)
岩の壁 (ロックウォール)
収納箱 (アイテムボックス) )
シンシアは、魔法の内容をイメージして、無詠唱で魔法を念じることを試してみた。
突然、先程と同じ魔法が繰り出されたことに、ママリーとナターシャは驚いていた。
(これって、内容イメージして組み合わせもできるよね。たぶん。)
「・・・・」
( 岩の玉 (ロックボール)
炎の壁 (ファイヤーウォール) )
シンシアは、ふたたび魔法の内容の組み合わせをイメージして、無詠唱で魔法を念じることを試してみた。
突然、岩のボールが複数現れて飛んでいったかと思えば、次に炎の壁が展開された。
ママリーとナターシャは何が起こっているのか解らず放心していた。
(私って、やればできる子ちゃん。たぶん。)
「ありがとうございました。
全てマスターできました。」
シンシアはニコニコしながらお礼を述べた。
ママリーとナターシャは無言で礼を返した。
その日、夕食の時間になってもアルミナは帰ってこなかった。
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