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012 越境キャラバン隊 出発

012 越境キャラバン隊 出発




今日は、越境キャラバン隊の出発する日だ。シンシア達にとってはハンターギルドでの初任務となる。

アルミナは、昨夜から緊張してあまり眠れていなかった。

彼女が眠れなかったのは、チェスにプレゼントされた短剣を眺めていたせいもあるのだが、それはシンシアには内緒である。

アルミナは、空が白み出すとすぐに寝床から起き出して準備を始めた。

シンシアも、アルミナにつられて目を覚まし、しかたがないので身支度を始めた。


「アルミナ、おはよう。早いわね。」

「シンシア、おはようございます。

 ちょっと緊張しちゃって、何かやってると落ち着くんです。」


シンシアとアルミナは、昨日一緒に買った装備を付けながら、ああでもない、こうでもないとお互いに確認しながら準備を行った。

さながら二人だけのファッションショー?になっていた。


シンシアの衣装と装備は、次のような感じだ。


 薄い紫色の少しタイトなワンピース。

 焦茶色のショートブーツ。

 薄い青のローブ。・・・ママリーからのプレゼント。

 銀色の杖。   ・・・ママリーからのプレゼント。

 魔法の杖の先端部分には『聖女の瞳』が揺れている。


アルミナは、シンシアが落としたら大変なので、杖に『聖女の瞳』を付けるのは反対した。

しかし、シンシアは「今、使わなくて、いつ使うのよ。」と言い張った。

アルミナは、渋々、杖に『聖女の瞳』を工夫して縛りつけた。


アルミナの衣装と装備は、次のような感じだ。


 黒色をベースとした騎士の衣装。

 金属でできた銀色の胸当てなどの大型防具。

 薄い茶色の皮に金属で装飾された小型のプロテクターとベルト。

 焦茶色のロングブーツ。 

 腰の左側には黒色の長剣。

 腰の右側には銀色の短剣。・・・チェスからのプレゼント。

 薄い緑色のマント。   ・・・チェスからのプレゼント。


シンシアとアルミナは、昨日のプレゼントの装備が気に入っていた。

彼女達それぞれの色合いも似合っていたが、二人揃った時の色合いもばっちりきまっていた。

ママリーとチェスは、プレゼントの色合いを事前に決めていたようだ。




シンシアとアルミナが食堂に降りると、今日の出発に合わせて早めに朝食が準備されていた。


「おはよう。シンシア、アルミナ。朝食の準備はできてるわよ。

 大将は、市場に買い出しに行ってるから挨拶できないけど、二人によろしく言っといてって。

 それと、子ども達の件で世話になったお礼にって、お弁当も預かってるから行く時に持ってってね。」

「わ。わかったわ。私たちからも、よろしく言ってたって伝えといて。」


シンシアは、宿の大将がいなければ、アルミナには2度と会えなかったと思い、

むしろ、世話になったのは自分達だと思っていた。


(市場に買い出し。ずるいですわ。これでは面と向かってお礼が言えませんわ。)


シンシアは、面と向かってお礼が言えないので悔しく思ったが、それが宿の大将の優しさなのも知っている。

彼女は、大将の善意を断るのも野暮と思いお弁当は受け取ることにした。


シンシアとアルミナは、朝食を終えたあと部屋に戻って荷物を片付けた。

彼女達が出発のため宿の玄関に降りると、アリスと子ども達が見送りのために待っていた。


「これ、大将からのお弁当。気を付けて行ってね。」

「ありがとう。ヒルデンブルグが落ち着いたら、リベルナから必ず戻ってくるから。

 その時は、この宿に立ち寄るわ。アリスもみんなも元気でね。」


シンシア達は、別れが長くなると寂しくなるので簡単な挨拶だけ言うと、越境キャラバン隊の集合場所へ向かった。




シンシアとアルミナが集合場所へ着くと、20代ぐらいの女性が近づいてきて名前を聞かれた。

シンシアが、『誓いの絆』のシンシアとアルミナと伝えた。

彼女はたぶん商業ギルドの人だろう。新たに到着した馬車や人を見つけると、手に持ったメモにチェックしてまわっていた。

そうこうしているうちに広場には続々と馬車と人達が集まってきた。そして広場には大きな声が響く。


「キャラバンに参加される商人は、こちらに集まってください。

 こちらで馬車の並び順の抽選をおこないます。」

「護衛のハンターは、こっちに集まってくれ。」


シンシアとアルミナは、聞き覚えのあるチェスの声で、ハンターの集合場所へと向かう。




チェスは、ハンターが集まったのを確認し話し始める。


「Bランクは『海の支配者』の2人だけなんで、俺たちが護衛隊長と副長をする。

 俺はチェス。こっちはママリーだ。

 よろしく頼む。


 今回のハンターの構成だが、俺たちも入れて総勢28名となった。

 Cランクは8名、Dランク16名、Eランク1名、Fランク1名だ。」

「おいおい、Cランク8名って大丈夫かよ?」


チェスの説明に心配になったハンターが声を挟むが、チェスの説明は続く。


「今回の護衛任務には、探索魔法の使い手も加わっているので、そう心配しなくてもいい。

 それに、Aランク級の攻撃魔法と防御魔法の使い手も加わっている。」


チェスの説明に今度はシンシアが口を挟みたくなるが、みんなの心に言葉が届くのを待ってチェスの説明は続く。


「しかしだ、これはみんなで受けた護衛任務だ。人に頼らずにみんな最善を尽くして欲しい。

 少しの油断で生きて帰れない事態になることは、みんなも解っているはずだ。

 隊長として頼む。俺は誰も死なせたくない。」

「おぅ。最善を尽くすのはあたりめぇだ。」


チェスの説明にベテランハンターが声を挟むが、これにはみんな納得しているようだ。

快い横槍に、チェスのお礼と説明はさらに続く。


「理解してくれて嬉しい。みんなよろしく頼んだぞ。

 それじゃー護衛隊の構成だが、・・・」


チェスは、護衛隊を、前方班8名、後方班8名、左側班6名、右側班6名の4班で分けて『海の支配者』のメンバーが班長も兼任することを説明した。


チェス、ママリー、リンドー、ナターシャの4名は、集まっているハンターを取り囲むように移動して、パーティー名を順に呼び出した。

隊長兼班長チェスは、前方班として参加パーティー名を呼ぶ。

「『誓いの絆』2名と『人知の極み』5名、こちらに」

シンシア達『誓いの絆』は、前方班:隊長兼班長チェスの班だ。前方班には『人知の極み』の5名も入る。

『人知の極み』のメンバー構成は、男性3名、女性2名の構成だった。どうもチェスとは顔見知りのようだ。


前方班になったメンバーで、一応の儀式として時計回りで自己紹介した。

『人知の極み』のメンバーは、シンシアとアルミナがEランク、Fランクと聞いて少し落胆した感じだった。

その様子を見ていたチェスが、シンシアが探索魔法の使い手だと説明すると、『人知の極み』のメンバーは驚いていた。


(Aランク級の攻撃魔法と防御魔法の使い手も私なんだよねー。たぶん。)


自信過剰なシンシアであった。


チェスは、一通りの自己紹介が終わるのを待って、前方班の方針としてクロックポジションを使うことを提案する。

『人知の極み』のメンバーは、面白がって使い出した。

「13時の方向 チェスのおっさん発見。」

「10時の方向 美少女2名発見。」

チェスは苦笑し、「出発したら、勝手に黙って練習しといてくれ。」「くれぐれも黙ってだ。」と念を押して遮った。




商業ギルド前に集まっていた馬車が、西へと向かう街道に移動して隊列を整えていく。

綺麗に並んでいく馬車を、道ゆく人が遠巻きに見ていた。

ハンター達も班ごとに持ち場についていく。


チェスが叫ぶ  「隊列確認!」

ナターシャが叫ぶ「隊列確認!」

ママリーの声は聞こえない。

リンドーが叫ぶ 「隊列確認!」

時計回りに指示が伝達され帰ってくる。リンドーまで特に異常の報告はない。


チェスが叫ぶ  「越境キャラバン隊出発 微速前進、前に倣え!」

ナターシャが叫ぶ「微速前進、前に倣え!」

ママリーの声は聞こえない。

リンドーが叫ぶ 「微速前進、前に倣え!」




牛歩のようにゆっくりと出発した越境キャラバン隊。

西の町ウルエボの街中を出た馬車は、「間隔取れ、前に倣え!」の合図で馬車の間隔を広げ、先頭馬車から順に護衛隊の歩行速度に変わっていく。


(これから始まる大冒険。ですわ。)


シンシアは、これから始まる大冒険に胸を踊らせていた。




続きが読みたくなったよね。たぶん。

ブックマーク、評価☆☆☆☆☆など押したくなったよね。たぶん。


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